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第9話 無窮の混沌。繋がる者たち。

 反応出来ずにいるセシリアに代わるようにして、ラディウスがイザベラに問う。

「――セシリアの親父さんは、ビブリオ・マギアスに殺された? いや、そもそも暗部に関わる者たちが暗殺されたというのは一体どういう事だ?」

 

「私もその当時はビブリオ・マギアスには所属していなかったので、あくまでも古い記録から知り得た情報でしかありませんけれど……」

 イザベラは頬に手を当てながらそう前置きしてから、

「どうやら当時の王国は、諜報面において高い堅牢さを誇っていたようですわね。そして、それ故にビブリオ・マギアスが入り込むのは困難でもありましたわ」

 と、そんな風に告げた。

 

「なるほど。それで諜報を担う者――つまり、暗部の人間を排除する必要があったという事ですか。……ですが、それほどの堅牢さを誇るのであれば、それを担う者もまた、高い能力を有していたのでは? 向こうの世界のあなたのように」

 リリティナがイザベラに対してそんな言葉を投げかけると、

「私はそこまで優れているわけではありませんわよ? ガジェットの力――魔法を行使する事で、諜報面の能力を底上げしているにすぎませんもの。どこぞの元宰相とかの方が、よっぽど優れているというものですわ。こちらの世界でもあちらの世界でも、私の動きを何度も先回りされて、その度にそれをすり抜ける為に動きを変えなければなりませんでしたもの」

 などと返し、肩をすくめてみせるイザベラ。

 

 ――先回りされたのを察知して、動きを変える事でそれをすり抜けるって、普通に高レベルなんじゃなかろうか……

 

 ラディウスはそんな事を思ったが、敢えて口にはしなかった。

 

「それはそれとして、話を戻しますけれど……どんな堅牢さでも『綻び』というものは――弱点というものは、意外とあったりするものなのですわよ。まあ……それについては、あくまでも古い記録の記述から得た情報であり、信憑性に欠けるので敢えて言いませんけれど……ね」

 イザベラはそう言いながらセシリアの方へと視線を向ける。

 

 ――セシリアが何らかの綻び……弱点になったんだろうな。

 

 イザベラの視線の動きからラディウスはそう察したが、イザベラが『敢えて言わない』と告げたのは、『セシリアがもし知りたいというのなら、誰もいない場所で直接聞いてこい』という意味だろうとそう判断し、それ以上問う事はしなかった。

 そして他の皆も、大体同じような考えに至り、ラディウスが何も問わないのなら問うべきではないと考え、同じく問わなかった。

 

「というか……そんな昔の話は置いといて、そろそろリンクの事を教えて欲しいですわね? こちらばかり情報を提供している状態ですわよ?」

 そんな風に言ってきたイザベラに対してラディウスは、自分から話を戻すと言っておきながら、いきなりそんな事を口にするのはどうなんだ……? などと思いつつも、この件はこれ以上ここで話すつもりもないし、話すべきものでもないと言いたいのだろうと解釈し、

「ああそうだな。まあ、本当にリンクについて何も知らないのなら実際に試してみるのが一番だな。既にリンクされていたりしたら弾かれるわけだし」

 と口にするも、そこで気づく。

「って……。そういや、互いにあのガジェットを持っている状態の場合、どうやってリンクすればいいのか良く分からないな。今まで手に取った時点でリンクされていたし……」

 という事に。

 

「それなら簡単なのだわ。互いにガジェット同士を『繋ごう』という意思を持って、接触すればいいのだわ」

「なるほど、そうなのか」

 ラディウスはクレリテの説明に頷いてみせると、イザベラの方へと改めて顔を向け、

「――というわけだ。イザベラ、試してみるとしよう」

 と告げた。

 

「何がなんだか良く分からないですけれど、やるべき事は理解しましたわ」

 イザベラはそう返しながら手をラディウスの方へと伸ばす。

 

 そして、それに対してラディウスも手を伸ばし、そして握手をする。

 と、その直後、互いに何かが繋がるような、そんな感覚に襲われた。


「今のでリンクされた……のか? まあ、試してみよう」

 ラディウスはそう呟くように言いながら、向こうの世界へと移動。

 数秒待ってからまた戻ってくる。

 

「な、なんですの!? 今の!」

「これがリンクだ」

 驚くイザベラに対してそれだけ告げるラディウス。

 するとイザベラは顎に手を当て、

「他の『所有者』と一緒に、世界間を行き来出来るようになる……? これはなかなかにとんでもない機能ですわね……」

 なんて事を呟いた。

 

「というか、流れでリンクしてしまいましたけれど、これはつまり『手を結ぶ事を了承した』という事でよろしいんですの?」

「ま、そういう事だ。……これ以上カチュアが付け狙われるのは防ぎたいし、それ以外にもイザベラの知識や技術は、この先も俺たちに必要になるだろうからな」

 イザベラの問いかけにため息を混ぜならがそう答えるラディウス。

 

「必要……。そして、この機能……。つまり、あなたはビブリオ・マギアスの監視の目がほとんどない向こうの世界では、共に行動しろ……と、そう言いたいんですわね? そうする事で枷になりますし?」

「……そうだな。そう思っておいていいぞ」

「まあ、私としても動きやすくなりますし? 別に構いませんけれど、なかなか強引ですわね」

 ラディウスの返事に、イザベラは少し妖艶さのある微笑みを見せながらそう返す。

 そして、それに対してラディウスは肩をすくめてみせる。

 

 ――実の所、そこまで深くは考えていなかったんだが……まあ、なんだ? 勝手にそこまで深読みしてくれるならば、そういう事にしておくのが一番だな。うん。

 

 などと、心の中でこっそりと呟きながら……

今回もまた少し長めになりました……

セシリアの父親云々は、この場であれこれ語ってもな……と思いまして、軽く告げるだけにしています。

(リンクの話をしている状態でそっちの話を進めてしまうと、元の流れから大きく脱線してしまいますし……)


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、12月10日(日)を想定しています!

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