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第3話 無窮の混沌。リリティナとカチュア。

 無窮の混沌へと伸びる一条の光。

 ふたつの光球が、その光を辿ってゆっくりと飛んでくるのが、ラディウスたちの視界に入った。

 

「無事、戻ってきたわね」

「ああ。あとは上手く魂と魄の両方が入っている事を願うだけだ……」

 ルーナに対してラディウスがそう言うと、

「大丈夫なのだわ。妖姫もリリティナの魂の動きを感知したらしいのだわ」

 と、クレリテ。

 

「それなら、問題なさそうなのです」

「そうね。って、クレリテがいるのはこういう伝令の為って事なのね」

 ルーナがメルメメルアの言葉に頷きながら、クレリテの方を見てそんな風に言う。

 するとクレリテが、

「もちろん、それもあるのだわ。でも、それだけじゃないのだわ。こっちの世界のスパイが、ここまで潜り込んで来る可能性はゼロじゃないのだわ。だから、それを防ぐ為でもあるのだわ」

 なんて事を告げる。

 

「……隠蔽と撹乱をしているとはいえ、俺たちがあの部屋にいないという事に気づかれた場合、虱潰しに居場所を探される可能性があるのは否定出来ない……か」

 ラディウスが光球を監視しながら呟くようにそう口にすると、

「そういう事なのだわ。……実は、アルが来る気満々だったのだわ。でも、アルがこっちに来たら、撹乱が上手くいかなくなるのだわ。だから私が来たのだわ」

 と、肩をすくめながら言うクレリテ。

 

 そして、そうこうしている内にふたつの光球が無窮の混沌から抜け出し、ラディウスのガジェットを中心に、ふよふよと浮遊しながら回り始める。

 

「よし。――アストラルインテグレーション!」

 そうラディウスが言い放つと、ふたつの光球が回転しながら融合。

 巨大化した光球がラディウスの正面へと移動し、そこで人の形へと変化し始めた。

 

「おおー! 人の形になってきたのだわー!」

 クレリテがそんな声を発した直後、光が一際強い輝きを発し……拠点で映像越しに見ていたリリティナの姿へと完全に変化した。

 

 そして、それとほぼ同時に、

「みなさん……?」

 というリリティナの口からそんな声が発せられた。

 

「ふぅ……上手くいったよ――うおっと!」

 ラディウスが安堵してリリティナの方へと視線を向け……そして反転。

 それを見たリリティナが、

「……? どうかしましたか?」

 と首を傾げる。

 

「まあ……そうなってもおかしくはないよね。うん」

「え、えっと……。とりあえず、その……これを……」

 セシリアに続き、ルーナがそんな風に言いながらクロークをリリティナに手渡す。

 

 ――そう。リリティナは何も着ていない状態だったのだ。

 

「あ、あう……えと、あ……その……あ、ありがとうございます。え、えと……た、助けていただいて――」

「お礼は後でいいからとりあえず着るのだわ」

「あ、えと、そ……そうでした。はい……」

 リリティナは赤面しながら大いに混乱。

 クレリテに促される形で、どうにかルーナから受け取ったクロークを羽織った。

 

                    ◆

 

「し、失礼しました……。そ、それと……改めて、あの場から引き上げていただきありがとうございます。」

「ど、どういたしまして。こちらこそ、服がない状態になるという可能性を考慮していなくて済まない……」

 まだ顔の赤いリリティナに対し、そう頬を掻きながら返事をするラディウス。

 

「カチュアの服はしっかり用意しておくのです」

「あ、そのカチュアの反応だけど見つけたわよ」

 メルメメルアに続くようにして、ラディウスに代わってカチュアの反応を探っていたルーナがそんな風に告げる。

 

「よ、よし、それじゃあカチュアの魂魄も引っ張り上げるとしよう」

 ラディウスがそう言うと、

「カチュアは私が引っ張り上げたいのです!」

 と、力強く告げてくるメルメメルア。

 

 ラディウスはそれに対して、未だに負い目――罪悪感のようなものがあるのだろうか? と思いつつ、

「ん? ああ、別に構わないぞ」

 と言って、メルメメルアにガジェットを手渡す。

 

「感謝するのです!」

 メルメメルアはそうお礼の言葉を口にすると、受け取ったガジェットを起動。

 リリティナの時と同じく、光球を飛ばす。

 そして、程なくしてガジェットが震えた。

 

「引っ張り上げるのです!」

 と言って、ガジェットから一条の光を照射するメルメメルア。

 すると、その直後、

「――ゲート……。やはりこれを使うか」

 という声と共に、『ゲートから』ひとりの黒衣の男が姿を現した。

 

「「……っ!?」」

 セシリアとクレリテが同時に驚きの表情を見せつつも黒衣の男を抑え込もうと動く。 

 それは、『何者であるのかと問うよりも先にまず動きを封じる』のが、今この場では最良かつ安全だという考え、判断によるものだ。

 そしてその考え、判断は実際正しかった。

 しかし――

 

「――混沌の黒き手よ、時の娘を弾け!」

 セシリアとクレリテに抑え込まれつつも、そう言い放つ黒衣の男。

 

 直後、黒い手が無窮の混沌の深淵から現れ、光を伝ってくるふたつの光球――カチュアの魂と魄へ向かって、凄まじい速度で迫っていくのがラディウスたちの目に入ってくるのだった。

今回はどうにか予定通りに更新出来ました……


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなる、11月19日(日)を想定しています!


※追記

サブタイトルに誤字があったので修正しました。

正しくない位置で改行されていた箇所があったので修正しました。

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