第2話 無窮の混沌。穴を開きて。
「あ、クレリテさん」
メルがクレリテの姿に気づいてそう言うと、
「3人とも、久しぶりなのだわー。これが例の術式なのだわ?」
と、そんな風に返すクレリテ。
「ああ。今発動させたばかりだが、これで監視はされなくなったはずだ」
「ちょっと試してみるのだわ」
クレリテは、ラディウスに対してそう言うと、全力でどこかへ走っていき……そしてすぐに戻ってくる。
「はぁ、ふぅ、はぁ……。も、問題なかったのだわ……」
息を切らしながらそんな風に告げてくるクレリテを見ながら、
「なんだか良く分からないけど、大丈夫という事でよさそうね」
と、頬を掻きながら言うルーナ。
「そうだな。よし、それならすぐにゲートへ向かうぞ」
「了解……なのだわ……」
「……クレリテの体力が戻ってから向かうぞ」
まだ肩で息をしていたクレリテ見ながら、ラディウスはそう言い直した。
◆
「ゲートに着いたのだわ! どうするのだわ?」
「まずはゲートの力を借りる形で、穴を開ける」
クレリテに対してそう返事をすると、ラディウスはガジェットを起動。
すると、部屋の一部だけ景色がグニャっと歪み始めた。
「うわ……。なにこのグニャッとしたの……」
「見ていると、気持ち悪くなりそうなのです……」
セシリアとメルメルアの言葉にラディウスは、
「次元の振動を操作する事で、無窮の混沌へのアクセスを確立している感じだな。で、その時のディス――」
とそこまで言ってから、ポカンとしているセシリア……と、クレリテを交互に見て、
「……要するに穴を開けている最中って事だ。だから、こうして歪む」
と、そんな風に言い換えた。
「なるほどなのだわ。それで、穴開けにはどれくらいかかるのだわ?」
「すぐに終わるはずだ。……っと、ほら、開くぞ」
クレリテに対してラディウスが返事をした直後、グニャッとしていた部分が漆黒へと変化した。
「ラディ、こっちの準備はバッチリよ」
「こちらも大丈夫なのです」
「よし、それじゃあ探知を開始するぞ」
そんな事を言いながら、あれこれとガジェットを操作していくラディウスたちを見ながら、セシリアとクレリテは、
「……に、何をしているのか、さっぱりわからないのだわ……」
「大丈夫。私も分からない……」
なんて事を口にする。
そして、これといって出来る事もないので、そのままそこで待機するふたり。
――クレリテが暇すぎて眠くなってきた所で、
「見つけた! これは……リリティナの魂と魄……か?」
と、そんな事を首を傾げながら告げるラディウス。
それに対して、メルメメルアが頷きながら返事をする。
「はいです。カチュアとは違うのです」
「とりあえず、先に引っ張り上げる? カチュアを探す?」
「まあ、見つけたなら引っ張り上げてしまう方が後々楽だろう」
ラディウスはルーナの問いかけにそう答えながらガジェットを構えると、魔法を発動。穴――無窮の混沌へと光球を連続して放った。
「今のは何なのだわ?」
「リリティナの魂と魄の所まで行って、あの中に内包する術式の塊みたいなものだ」
問いかけるクレリテにラディウスがそんな風に説明すると、
「……つまり、釣り餌、あるいは虫取り網?」
と、首を傾げながらセシリアが言う。
「……それと一緒にするのはちょっとどうかと思うが、まあ……間違いではないな」
そうラディウスがため息混じりに返した所で、ガジェットが震える。
「お、発動したか。あとは引き戻すだけだ」
そう言って魔法を発動し、光線を無窮の混沌に照射するラディウス。
それを見ながら、
「どう考えても、釣りなのだわ」
「だよね。凍った湖に穴を開けて、糸を垂らすのに似てるよね」
なんて事をクレリテとセシリアが呟く。
――実際、見た目はたしかに釣りそのものだし、ふたりがそういう感想を持つのは、ある意味、仕方がない事なのかもしれないわねぇ……
ルーナはそんな風に思いながら、無窮の混沌に伸びる一条の光の先へと視線を向けるのだった。
急な都合で昨日の更新が出来ず、予定より1日遅くなってしまいました……
次こそ、予定通りに更新したいと思っています……
というわけで、次の更新は11月16日(木)の『予定』です!(多分大丈夫です……多分)
※追記
サブタイトルに誤字があったので修正しました。




