第1話 無窮の混沌。向こうへ戻りて。
「――さて、妖姫への伝達だったな。向こう側の準備と合わせて、ちょっとやってくるから待っていてくれ。……いや、一瞬か」
ザイオンがそんな風に言ったその直後、再びザイオンが、
「――こちらの準備は全て整ったぞ。妖姫もすぐにもう一度やってくれるそうだ。それと、セシリアは向こうに行ったらクレリテと合流して欲しい。聖女礼拝堂にいる」
と、言ってきた。
「聖女礼拝堂だね。了解だよ」
セシリアがそう返事をすると、それに続くように、
「……わかってはいるけれど、やっぱり妙な感じだわ……」
ルーナが額に手を当ててそう呟き、そのまま頭を振ってみせた。
それに対して、リリティナが顎に手を当てながら、
「私としては『これ』がどういう風に起こっているのか、その原理というか根幹というか……そういったものが気になりますね……」
なんて事を返す。
「それは俺も気になるが……現時点では理解不能だとしか言えないんだよなぁ……」
「まあ、それはそのうち考えるとして、今は無窮の混沌からカチュアとリリティナを引っ張り出す事を考えようよ」
ラディウスの呟きに対し、セシリアがそんな風にいうと、
「……セシリアさんは、そのうちでも考えそうにないのです」
なんていうツッコミをサラッと入れるメルメメルア。
「うぐっ! なんだかメルのツッコミが厳しい!? って、そうじゃなくて! いいから始めよう!」
「ああ、まあ……そうだな」
ラディウスはセシリアに対してそう返すと、ルーナとメルメメルアを交互に見て、
「よし、それじゃあ向こう側へ行くとしよう。ルーナ、メル、向こうについたら即座に手はず通りに頼む」
と、告げた。
「ええ、分かったわ」
「お任せくださいなのです!」
ルーナとメルメメルアがそんな風に返事をした直後、視界が切り替わり、メルティーナ法国へと戻ってくるラディウスたち。
当然ながら、カチュアの姿は消えている。
「私は聖女礼拝堂に行ってくるね」
「ああ。戻ってくる頃には魔法の発動も終わっているはずだ」
ラディウスはセシリアにそう返し、部屋から出ていくセシリアを見送りながら作ったばかりのガジェットを起動。更にそのガジェットで術式を構築し始める。
そのまま部屋の中を見回してみると、既にルーナとメルメメルアが部屋の隅に移動し、ガジェットを設置し始めていた。
「アルファは設置および起動なのです! これからベータを設置するのです」
「こっちもイータの設置と起動を完了したわ。次はシータね」
メルメメルアとルーナがそう言いながら移動し、別のガジェットを配置。
そしてまた、移動……と繰り返していく。
「ああ。こっちも構築は順調だ」
ラディウスはそう告げて別のガジェットを取り出し、それを起動。
更にこちらでも術式を構築し始めると、先程のガジェットと赤い光の線が繋がれ始める。
「全ての設置と起動が完了したわよ」
「こちらも終わったのです!」
ルーナとメルメメルアがそんな風に告げた所で、ふたりが設置した全てのガジェットが黄色い光の線で繋がり始める。
「こっちも構築完了だ」
ラディウスがそう口にすると同時に、緑色の魔法陣が部屋の中央に出現。
そのまま魔法陣は急速に拡大を始め、ルーナとメルメメルアのふたりが設置したガジェットに触れる直前まで広がった所で停止した。
直後、設置した全てのガジェットが淡い光を放つ。
と同時に、部屋全体に赤黄緑の3色のウネウネとした靄が発生し始めた。
その靄はしばし部屋の中に滞留した後、少しずつ薄くなりながら、まるで壁をすり抜けるかのようにして、拡散し始める。
――否、靄は実際に壁をすり抜けていた。
「上手くいったのです!」
「そうね。これで放っておいても自然に広がっていくわね」
「ああ。さすがに全域は無理だが、ゲートのある場所までは余裕で含められるはずだ」
ラディウスたちがそんな風に言った所で、
「クレリテを連れてきたよー」
という声と共に、セシリアがラディウスたちのいる部屋の中へと入ってくる。
そして、
「なにやら、大掛かりな術式が発動しているのだわ」
と、そんな風に言いながら、クレリテもまた部屋の中へと入ってきたのだった――
日時設定がミスっていました……
そして、手動で更新しましたが気づくのが遅かった為、日をまたいでしまいました……
といった所でまた次回!
次の更新は、予定通り11月12日(日)を想定しています!
次はミスらない様、気をつけようと思います……




