第17話 隠れ拠点。準備とイザベラと遺跡と。
「ああ。もう一度ザイオンに向こう側――アルフォンスたちと妖姫へ伝えて貰わないといけないが、とりあえずこれで無窮の混沌からカチュアとリリティナを引っ張り上げるための準備は完璧に整ったと言い切っていいだろう」
ラディウスがカチュアに対してそう答えると、ルーナが首を縦に振って同意の言葉を口にする。
「ええそうね。あとは実際に引っ張り上げるだけだわ」
「そういうわけだから、もう少しだけ待ってて」
ルーナがリリティナとカチュアを交互に見ながらそう言葉を続けると、
「ありがとうございます。みなさん、さすがですね……」
と、そんな風に返事をするリリティナ。
「いえいえ、お礼を言うのはまだ早いのです」
「そうだな。しっかり引っ張り上げられてからだな」
メルメメルアに続くようにして、そう言いながらラディウスは思う。
――準備は万端。余程のイレギュラーがない限りは問題は起きないはずだが……可能ならば実行に移す前に、イザベラをどうにかしておきたいというのはあるんだよな……
なにしろ、あれが一番イレギュラーな要因にして要員であると言えるからな……
と。
「……引っ張り上げる事それ自体は、絶対大丈夫だろうと思っているんだけど、オルディマの『無窮の混沌に落とす術』を知っていたイザベラがどう動くのかが、個人的には気になっているんだよね……」
ラディウスと同じく、イザベラの動きが気になるセシリアがそんな風に告げると、
「ああ、それは分かる。イザベラは今の状況下だと、凄まじいジョーカー、あるいはトリックスターって感じだしな」
という声と共にザイオンが姿を見せる。
「そうなんだよねぇ……。って、もう来たんだ。早いね」
「ああ、ちょうど尋問が一段落した所だったしな」
セシリアに対してそうザイオンが返事をすると、
「……もしかして、あのガジェットの出処も判明したのか?」
と、ラディウスが問いかける。
「どうやら、アルベリヒから直々に渡されたものらしい。俺たち『ゼグナム解放戦線』とも繋がりのある『協力者』から得た物だと言われてな」
肩をすくめながらそう告げるザイオン。
そんなザイオンに、
「それって……その『協力者』というのが、アルベリヒとゼグナム解放戦線の両方に力や情報を与えているという事です?」
という、もっともな問いかけをするメルメメルア。
「そういう事だな。まあ、アルベリヒは俺たちに対しても協力的である事を、織り込み済みで『協力者』と接触しているらしいんだけどな」
そんな風にザイオンが言うと、ルーナが顎に手を当てながら、
「アルベリヒは、全て理解した上で利用している? 普通、そこまで理解しているのなら、捕まえるなら始末するなりしそうだけど……豪胆というか、一体どんな考えをしているのかが気になるわね」
なんて事を口にする。
「ま、たしかにそうだな。考えられるのは……その『誰か』もディーゲルさんと同じで、アルベリヒに何らかの弱みを握られているとか人質を取られているとかで、アルベリヒに協力しなければならない状況に置かれている……とかか?」
「なるほど……。それなら納得の出来る話ね」
ラディウスの推測に対し、ルーナが納得顔で肯定すると、
「とりあえず、そこら辺はこれから詳しく調べる所だ。その『協力者』とやらに関しては、大体目星がついているしな」
と、そんな風に告げるザイオン。
「あ、そうなんだ。早いね」
「話の内容から察するに、『協力者』ってのは、向こう側の世界との行き来が出来るっぽいからな。そうそう向こう側の世界と行き来が出来る人間なんていないだろ?」
「なるほど。そう言われてみるとそうだね」
セシリアがザイオンの返答に納得してそう返すと、それに続くようにしてリリティナが言葉を紡ぐ。
「それに……例の魔法をキャンセルするガジェットも、メルメメルアさんが例のガジェットはガーディマで作られた物かもしれないと言っていた事を踏まえると、向こうの世界にあるガーディマの遺跡でその何者かが手に入れて、こちらへ持ち込んだと考えるのが自然ですしね」
ラディウスはそれに対して頷つつ、
「ま、そうだな。しかし、ガーディマの遺跡……か。やはり、一度しっかりと調べておいた方がよさそうだ。無論、カチュアとリリティナを無窮の混沌から引っ張り出してからだけど、な」
と、そう告げるのだった。
なんだが、いまいち良く分からないサブタイトルになってしまいました……
とまあ、そんな所でまた次回!
次の更新は予定通りとなりまして、11月9日(木)を想定しています!




