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第11話 隠れ拠点。イザベラとベルドフレイム。

「よし、こんな所か」

 ラディウスはガジェットの改良を終えた所で、そんな風に呟く。

 

「もう終わったですか?」

「ああ。『メタモルフォーゼコントロール』を担っているソーサリーユニット内のアストラルサーキットの繋がりを一部調整して、ソーサリーユニットの外部に増設したサブエナジーユニットで、コントロール処理の一部を肩代わりするようにしただけだからな」

 メルメメルアの問いかけに対し、ラディウスがそんな風に答えると、

「……何を言っているのかわかりませんです」

「大丈夫、私も分からない」

 なんて事を言いながら、ラディウスたちの方へと視線を向けるカチュアとセシリア。

 

「それで、そっちはどんな感じだ?」

「こっちは、あとひとつで全て揃うのです」

 ラディウスの問いに対し、そうメルメメルアが返した所で、

「そのひとつも、もうあと残りの工程は半分って所よ」

 と、ルーナが複数の部品をオーロラルケーブルと呼ばれる青白い魔力の導線で繋ぎ合わせながら告げてくる。

 

「それなら、結合に向けて最終調整をしておくとするか」

 ラディウスはそう言いながら、改良したガジェットをストレージにしまうと、代わりにいくつかの別のガジェットを取り出し、それを調整し始める。

 

 そんなラディウスたちの様子を見ながら、

「ガジェットというのは、こうして作られるものなのですね」

 なんて事を、カチュアとセシリアに対して言うリリティナ。

 

「そうだね。……まあ、あの3人――特にラディとルーナは特殊すぎるけど……ね」

 セシリアが少しため息混じりにそう告げると、それに続くようにして、

「ちなみにリリティナさんは、宮廷魔工士の人がガジェットを作ったり修理したりしているのを見た事はなかった感じなのですか? です」

 という疑問の言葉を口にするカチュア。

 

「そうですね……。宮殿内で宮廷魔工士の方――私を拐ったヴィンスレイドもそうでしたが――が、ガジェットを修理している所は何度か見た事がありますが、さすがに作っている所までは見た事がありませんね……。もっとも、宮廷魔工士たちの詰め所兼作業場のある宮殿の南棟まで足を運ぶ事自体が、あまりなかっただけですが……」

「なるほどなのです」

 リリティナの説明に、カチュアが納得の表情で頷いてみせた所で、

「――ヴィンスレイドって、宮廷魔工士だったの?」

 と、セシリアが問いかける。

 

「はい。あの者は宮廷魔工士の中で、私たち皇族の暮らす棟で使われているガジェットのメンテナンスを担う方々のひとりでした。聞いた話によると、あの者の家系はその役割を担う者が多かったそうです。特に世襲というわけではないのですが、半ばそういう状況にあったようですね」

「うーん、世襲じゃないのに世襲みたいな感じになっていた……かぁ。まあ、良くある話と言えば良くある話だね」

 リリティナの話を聞いたセシリアがそう言って肩をすくめてみせる。

 

 ラディウスはそれを聞きながら、たしかに『そういうのはどこの世界にでもあるんだなぁ……』って前に思ったものだ。

 などと心の中で呟きつつ問いかける。

「リリティナは、イザベラという人物について何か知っていたりするのか?」


 問われたリリティナは、「イザベラ……」と呟いて少し考え込んだ後、

「たしか、アーディス州で起きた『一夜反乱』の首謀者の娘ですね」

 と、そんな風に告げる。

 

「アーディス州の一夜反乱?」

「たしか……事前に反乱を察知されていて、反乱軍が決起して総督府を落とした直後に、隠れて待機いた帝国軍が一気に包囲殲滅して、あっという間に――まさに一夜にして完全に鎮圧された……というものだったのです。無論、首謀者も戦死しているのです」

 首を傾げるラディウスに対し、メルメメルアがそう説明すると、リリティナがそれに頷いてみせ、

「はい、その通りです。そして、反逆罪の連帯責任として首謀者の一族も全て処刑される事になりました。ですがその時、反乱鎮圧を担ったベルドフレイム兄様がそれに対して異を唱え、最終的に処刑を免れる事が出来た者のひとりがイザベラです。まあもっとも、その事を知っている者は、あまり多くないですが……」

 と、そう付け加えるように言った。

 

「そ、そんな繋がりがイザベラと今の皇帝との間にあったのね……」

「うん。ちょっと驚きだね。――そして、イザベラはベルドフレイムがどこからか連れてきたって話だったけど、今のでなんとなく『流れ』が分かったね」

 ルーナとセシリアがそんな風に言う。

 

 ラディウスはそれを聞いて考え込む。

 

 ――イザベラはベルドフレイムに対する恩がある……のだろうか?

 いや、それにしては、そこまで強い忠誠心があるという感じでもなかった。

 そして、ビブリオ・マギアスの言う『正しい歴史へと戻す』という事に対しても、別にそこまで強い思いを持っている感じでもなかった。

 一体、この妙な違和感はなんだ……?

 

 と。

 そして、あれこれと思考を巡らす事しばし……

 

 ――イザベラはこちらの世界では皇帝直属の諜報部であり、向こうの世界でも、ビブリオ・マギアスの諜報を担う『幻軍』の将である『幻将』だ。

 諜報……。情報……。反乱……。反乱の察知……。処刑の回避……?

 ……まさか……イザベラが反乱の情報を流した……?

 

 という『可能性』が、ふと頭に浮かんできたのだった。

今回、本来はもうちょっと間に会話が挟まる想定だったのですが、単に長くなりすぎるだけだったので、削って1話に収まるようにしたものの……ちょっと削りすぎて、やや唐突感が出てしまったような気もしています……


とまあそんな所でまた次回! 次の更新も、記載どおりの更新日となりまして……10月19日(木)を予定しています!

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