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第5話 隠れ拠点。スパイとスパイ。

「……向こうの世界で伝えなかったのは、向こうの世界『でも』伝えられない状況なんじゃないか?」

 ラディウスがあれこれ考えた結果、ふと思いついた事を口にする。

 

「……それはつまり、私たちの世界側にもスパイの類のがいる……と、そういう事かしら?」

「その通りだ。そしてそう考えれば、セシリアがこういう伝え方をしてきたのも納得がいくというものだしな」

 セシリアの問いに頷いて見せながら、そう答えるラディウス。

 

「更に言えば、メルやカチュアをスパイだと分かっている女性と共に敢えて行かせたのは、その方が『安全』だから……なんじゃないか?」

「……言われてみると、これってメルとカチュアを囮に使った事になるし、セシリアがそれにOKするのも妙な感じよね」

 ラディウスの発言に肯定し、腕を組んで考え込むルーナ。


「そうだろ? 無論、スパイとてメルたちを害してまで通信を行うような真似はしないだろう。そんな事をすればそれこそ即バレるからな。だから、囮にしても問題はない。問題はないが……セシリアの性格的には不自然というか、まずならやらないような方法だ」

「それはまあ……たしかにそうね。という事はつまり……今現在『特異な状況』にあるものの、スパイがメルたちに危害を加える可能性は皆無に近い事から、囮にした方が『安全』だと考えて、敢えて行かせた……と?」

「ああ、そう考えた方が自然だと思う。おそらく、向こう側の世界のスパイに何らかの情報が渡るのを避けたいのだろう。例えばだが……向こうの世界のスパイは幻軍の人間で、魔軍――もっと言えば、オルディマにカチュアの情報が渡ってしまう可能性が大いにある……とかな」

 ラディウスはルーナの問いかけに対して首を縦に振って肯定しつつ、推測を口にする。


「なるほどね……。それ、『例え』どころか正解な気がするわ。オルディマに情報が伝わってしまったら、もう一度『何か』を仕掛けられて、カチュアが無窮の混沌に永遠に沈められてしまうかもしれないわけだし」

「……他の可能性も完全には否定出来ないし、オルディマにそこまでの事が出来るのかという点も不明だが、メルかカチュアが絡むとなると、そう考えるのが妥当かもしれないな」

 ラディウスは、あくまでも可能性のひとつとして挙げただけであったが、ルーナの言葉を聞き、他の可能性に比べて『正解である要素』が多いのはたしかだと改めて思う。

 そして、

「なにしろ、カチュアはギリギリの所でなんとか底なし沼に沈むのを耐えているような、そんな状態だ。ほんの少し状況が変わっただけでシャレにならない事態に陥りかねない。もし、少しでも不安要素があるのであれば、着実に潰しておいた方がいいというのは間違いないし」

 と、そんな風に言った。

 

 ――だとしたら、こっちのスパイは『不安要素』ではない……のか?

 

 ラディウスがそう考え、その事について思考を巡らせようとした所で、

「それはそうね。何しろオルディマは、どういう術式なのかさっぱり分からないけれど、無窮の混沌への門を開く事が出来るようだし。まあ……オルディマが無窮の混沌というもの自体の知識があるのかは謎だけど」

 と言ってくるルーナ。

 ラディウスは思考を中断すると、そう言ってきたルーナに頷き、

「ああそうだな。術式は使えても、無窮の混沌そのものについては知らない可能性は大いにあり得る。……というか、イザベラが動いた事を考えると、その可能性が高い気がするな」

 と、返事をした。

 

「たしかにそうね。……イザベラの方は無窮の混沌とは何なのか知っていたりするのかしら?」

「案外知っていそうなんだよなぁ……」

 ルーナに対してそう返しながら、やれやれと首を横に振るラディウス。

 そして、そこでふと思う。

 

 ――うん? イザベラ? 

 まてよ……? 今の俺たちの推測がもしも正解であるとしたら、イザベラはオルディマに得た情報を伝えるのだろうか?

 今のイザベラは、どうも俺たちと手を組もうと本気で考えているようだし、もし『情報』を得たのなら、オルディマに情報を伝えるよりも、俺たちと手を組む為の交渉材料にしてくるのではなかろうか?

 

 と。

サブタイトルが若干微妙な感じですが、他に思いつかなかったもので……


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も平時通りの間隔となりまして、9月27日(水)を予定しています!

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