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第1話 隠れ拠点。山の中の家。

 古代の国家についての話をしている間に、ザイオンが運転する装甲車は荒野を抜け、赤茶けた山肌の続く山道へと入っていた。


 そして、何もない所で停止したザイオンに、

「ん? ここから歩く感じ?」

 と、セシリアが問いかける。


「いいや、ここから入る。既に連絡済みだから、すぐに開くはずだ」

 そうザイオンが言った直後、道路右側の崖が左右に開き始めた。


「これはまた大掛かりな仕掛けなのです」

「それに、何の目印もない山道の途中にサラッと存在してるから、見つかりにくい感じがするわね」

 ザイオンはメルメメルアとルーナがそんな風に言うのを聞きながら、開いた入口へと装甲車を進ませ、中に作られているドッグのような場所に改めて停止させると、

「ようこそ。ここが俺たちの拠点だ」

 と、そんな風に敢えて告げた。


「山の中――いえ、『土の中』に作られた拠点ですかです」

 周囲を見回しながら、カチュアがそんな感想を口にする。


 もっとも、土の中と言ってもただ掘っただけではなく、壁や天井はコンクリートのようなもので補強され、床も金属板が敷かれている、それなりにしっかりとした造りをしたものだ。

 

「思った以上にしっかりとした造りだな。あの入口も裏側は金属で作られていて頑丈そうだし」

 ラディウスが装甲車の外に出て、そう言いながら今しがた入ってきた入口を見る。

 

 拠点の入口は、外から見るとただの崖にしか見えないようにカムフラージュされている上に、その内側は頑丈な金属製であり、そう簡単には破壊されない。


 ルーナがそちらへ近づき興味深げに観察しつつ、

「なるほど……幻影と本物の組み合わせというわけね。そして、監視用のガジェットに自動的に開閉する術式……。色々と参考になるわね」

 なんて事を呟きながら何やら思考を巡らせ始めた。

 

「おーい、そろそろ閉めるから少し離れてくれー」

 ゼグナム解放戦線の一員であろう壮年の男性がそんな風にルーナに呼びかけると、ルーナはハッとした表情になって、

「あっ、す、すいません!」

 と頭を下げながらその場を離れた。

 

 そして、それを確認した壮年の男性が複数のレバーを操作すると、壁が動いて出入口が閉ざされる。

 

「これだけ分厚い金属なら、外から攻撃されても簡単に貫かれる心配はないわね」

「だねぇ。あと、かなり重そうなのに、ああやって簡単に動くっていうのも凄いなぁ」

 ルーナに続いてセシリアも興味をもったのか、そんな事を口にする。

 

「ここは帝国軍の監視哨や基地からさほど離れた場所ではないからな。もし『何かあった』場合にも、対処出来るようにしてあるんだわ」

 ザイオンがそんな風に説明すると、

「なるほどねぇ……。たしかにこの扉だけじゃなくて、拠点全体が『防衛』しやすそうな構造になっているみたいだね」

 なんて事を言いながら周囲を見回すセシリア。


「ま、何もないのが一番だけどな」

 ザイオンはセシリアにそう返しつつ肩をすくめる。

 そしてラディウスの方へと顔を向け、

「っと……。それはそうと、あの映像って移動出来るのか?」

 と、問いかけた。

 

「ん? ああ、あれは車内に取り付けてあるガジェットで映しているだけだから、そのガジェットをあそこから取り外せば移動させられるぞ。他の場所で再度写せるように設置してやればいいだけだしな」

「なるほどな。それなら奥の工作室のひとつを確保済みだから、そこに移してくれないか?」

 ラディウスの返答に納得したザイオンは、顎に手を当てながらそんな風に返す。

 

「わかった。ちょっと待っててくれ」

 ラディウスはそう返事をすると、即座に車内へと戻り、ガジェットを取り外す。

 そして、ザイオンのもとへと戻ってくると、外したばかりのガジェットを見せながら、

「外してきたぞ。早速だが、その工作室とやらに案内してくれないか?」

 と、そんな言葉を投げかけた。

 

「おうとも。こっちだ、ついてきてくれ」

 そう言って先導するザイオンの後に続いて、しばらく拠点の中を歩いていくラディウスたち。

 

「随分と活気がありますです」

 カチュアが歩きながら周囲を見回し、そんな感想を口にする。

 それに対して、

「そうね。なんというか、結構色々な人がいるわね。明らかに戦闘要員じゃなさそうな人もいるし」

 と、同じく周囲を見回しながら言うルーナ。

 

「ま、帝国の支配に抵抗する組織とはいえ、全員が全員戦う事が出来る人間ってわけじゃないからな。むしろ、物資を調達してきたり管理したり、鹵獲したものを修理したり改造したり、ここにいる人間の食事を作ったり衣服を洗濯したり……と、そういった非戦闘員の方が圧倒的に多い。『家族』も普通にいるしな」

「なるほどねぇ。防衛しやすい造りになっているのは、そういった人たちを守るためってわけだね」

 ザイオンの説明に対し、走り回っている数人の少年少女を眺めながらそう返すセシリア。

 

「ああ。『拠点』は俺たちゼグナム解放戦線の皆の『家』でもあるからな。っと、着いたぜ」

 ザイオンはそんな風に言って立ち止まると、目の前のドアを開けた――

当初は、前節の第12話の予定だったのですが、舞台が変わっているのでそのままなのもどうかと思い、節を変える事にしました。

というわけで、唐突ですが今回の話から第8節となっています。


とまあそんなところでまた次回! 次の更新も平時通りの間隔となりまして、9月15日(金)を予定しています!


※追記

誤字脱字を修正しました。

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