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第5話 黒き闇、世界の深淵。深奥に在りしモノ。

「うん? 今、声が聞こえてこなかった?」

 首を傾げながらそう問いかけてくるセシリアに、

「ですです。映像から小さかったですが、たしかに聞こえてきたのです」

「ああ。何故か『東』から聞こえてきたように感じたな」

 と、そう返事をするメルメメルアと俺。

 

「ええそうね。根拠はないのだけれど、私も『東』から聞こえてきたように感じたわ」

 ルーナがそんな同意の言葉を口にする。

 

 ラディウスは、皆が聞こえたのなら空耳というわけではなさそうだなと思いつつ、

「なにがどうなっているのかさっぱりわからんが、とりあえず東方向へ向かって、偵察ガジェットを動かしてみるとするか」

 と告げ、穴の底を這うようにして偵察ガジェットを東へ向かって移動させ始める。

 

 そして、しばらく移動した所で、

「うーん……?」

 と、首を傾げて見せるラディウス。

 

「……? ラディ、どうかした? 何か気になる事でもあるの?」

 小首を傾げながら問うセシリアに対してラディウスは、

「いや、この靄の中に入ってからずっと、『下』に向かって引っ張られる力が偵察ガジェットに掛かっていたのに、『底』についた途端、その力が消滅したのが妙に気になっているんだ」

 と、そんな返答をする。

 

「それ、浮上しようとするとどうなるの?」

「その瞬間、また『下』に向かって引っ張られる力が生じる。――こんな感じだ」

 ラディウスはセシリアにそう返しつつ、実際に偵察ガジェットを浮上させてみせる。

 すると、送られてくる映像が僅かに上下した。

 

「あっ、先程から何度か映像が僅かに上下していたですが、ラディウスさんが浮上させようとしていたですか」

「そういう事だ」

 メルメメルアに対してラディウスがそう短く答えると、

「たしかに妙な感じがするわね。そもそも、ここは本当に『底』なのかしら……」

 と、ルーナが映像を凝視しながらそんな事を呟くように言う。

 そしてそのままラディウスの方を向き、

「案外、底のように見えるだけの『力場』だったりするかもしれないわね」

 なんて言って肩をすくめてみせた。

 そのルーナの言葉に、たしかにその可能性は否定出来ないな……とラディウスがそう思った直後、『――こち……らへ……』という声が再び響く。

 

「……さっきよりも声が近くなっているような気がしますですね」

「だなぁ。しかも今度は『北』の方から聞こえてきた感じだな」

 カチュアとザイオンがそう告げる。

 ラディウスはそのふたりの言葉を聞き、少しだけ考える仕草を見せた後、

「――進路を変更して北へ向かってみるのが良さそうだな」

 と言って、偵察ガジェットの進路を北へと変更した。

 

 そして、そのまま数分程進んでいった所で、

「ん? なんだ? 急に光ってる物が見えてきたぞ」

 と、ザイオン。

 たしかにその光を放つ『何か』は急にその姿を現したかのようであった。

 それに対してラディウスは、

「靄のせいで隠れていた……のか? まあ、ちょっとズームしてみよう」

 と言いながら、偵察ガジェットを操作する。

 

 そして、ズームによってそれが何であるのかが判明。

「あれ? これって……この穴の上の方に一杯あったホログラムっぽいブロック?」

 セシリアがそんな風に呟いた通り、送られてくる映像に映るそれは、穴の上層に多数浮かんでいた並行世界や未来の光景らしき物を映し出していたブロック状の代物だった。

 

「なんでこんな所にひとつだけあるのです? しかも、灰色と黒の砂嵐のようなものしか映し出されていないのです」

 メルメメルアのそんなもっともな疑問を聞いたラディウスが、まるでアナログテレビの放送終了後の砂嵐みたいだな……なんて事を思った所で、唐突に『来ました……か』という声が響く。

 そして、それと同時にブロック状の『ソレ』に、メルメメルアやカチュアと同じ亜人種の女性の姿が薄っすらと映し出され始めた――

ラディウスがアナログテレビ(アナログ放送)の放送終了後と言っている通り、今のテレビ(地デジ)では、白黒の砂嵐にはならないんですよねぇ……

単に『受信出来ません』とか『信号なし』みたいなそっけない表示がされて終わりですし。


とまあそんな所でまた次回! 次の更新も平時通りの間隔となりまして、8月24日(木)を予定しています!

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