表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

463/637

第2話 黒き闇、世界の深淵。深き穴の奥を覗きて。

 ラディウスが思考を巡らせているとザイオンが、

「しかし……あのブロック状の代物もとんでもねぇが、この穴の深さもとんでもねぇな……」

 と、装甲車の車内に映し出されている映像を見ながらそんな風に言う声が聞こえてきた。

 

 ラディウスはそれに、たしかに底が見えない深さだと思いつつ、

「そうだなぁ……。とりあえず、偵察用のガジェットを飛ばしてみるか」

 と言いながら増設されたパネルを操作。

 装甲車の上部からカメラのようなレンズのついた球形のガジェットを射出する。

 これもまたラディウスが改造時に追加しておいた物だ。

 

「これは……帝国軍が使っている『魔法の目』……か?」

「ま、そんな感じだ」

 ザイオンの問いかけに対してラディウスはそう返事をしつつ思う。

 

 ――これは地球で良く見かけたドローンをベースにしているんだが、そうか……オートマトンみたいなのに搭載されていたりする『魔法の目』なんてのがあったな。

 

 と。

 

 そして、そんな事を思っている間に、偵察用のガジェットは穴の真上へと到達。

 真下――穴の中を撮影し、それを車内に映し出す。

 

「底が見えないのです……」

「しかも、穴のかなり深い所まで、あのどこかの光景を映し出すブロック状の物があるみたいだね」

 メルメメルアとセシリアがそんな風に言う通り、穴の深奥は漆黒の闇に包まれており、その漆黒の闇の中に、まるで夜空の星々の如く、様々な時代や場所を映すブロック状の物が無数に浮いていた。

 

「このまま降下してみるか」

 ラディウスはそう言うと、偵察用のガジェットを落下とほぼ同等の速度で降下させ始める。

 

 程なくして穴の中へと飛び込んだ偵察用のガジェットは、漆黒の闇とブロック状の物を撮影しつつ、そのままの速度を維持しながら、どんどんと降下していく。

 不思議な事に、降下の進路上に見えているブロック状の物は、ガジェットが近づくとその姿を消してしまい、それに接触する事はなかった。


「このブロック状の良く分からない物、どうやら接触する事は出来ないみたいだね」

「そうみたいね。何かで近づく物を感知している……のかしら?」

 セシリアとルーナがそんな事を口にし、ルーナの方は腕を組んで考え込んでいた。


 そんなこんなでガジェットは何とも接触する事なく、どんどんと穴の奥へと潜っていく。

 しかし、そこから十数分が経過してもなお、穴の底は見える気配すらなかった。

 

「……そろそろ反転するかこのまま前進するかして、この場所――死の大地から離脱しないと障壁が危険そうだな……」

 ゲージを見ながらラディウスがそう告げると、

「この偵察用のガジェットはどうするの?」

 と、セシリアが問う。

 

「このまま降下させ続けてみるか。映像の送信は200カルフォーネ以上離れていてもいけるはずだしな」

「200カルフォーネ!? ず、随分と遠くまで偵察出来るんだね、あれ……」

「ああ、たしかに驚きだな……。帝国軍の使う『魔法の目』の10倍以上の距離だぞ……」

 ラディウスの発言を聞いたセシリアとザイオンが、驚きと呆れの入り混じった表情と声でそんな感想を口にする。

 そしてそれに続くようにして、

「さすがはラディウスさんなのです」

 という、最早いつもの事になりつつある称賛の言葉を発するメルメメルア。


 それを聞いたカチュアが、僅かにやれやれと言わんばかりの表情でメルメメルアを見た後、ラディウスの方へと顔を向けなおし、

「それで、どうしますか? です。前進しますです? 引き返しますです?」

 と、そんな風に問いかけた。

 それに対し、ラディウスが返事をするよりも先に、ルーナが顎に手を当てながら意見を述べる。

「このまま前進して何かあったら危険だし、反転して戻った方が良い気がするわね」

 

「たしかにそうなのです」

「ああそうだな。何があるか分からないこの先へ進むよりも、その方が安全だな」

 メルメメルアとラディウスが同意の言葉を口にすると、

「んじゃ、反転して戻るとすっか」

 と言って、装甲車を反転させるザイオン。

 

「ううーん……。それにしても、この穴の底から私が向こう側の世界で囚われている空間と同じような嫌な霊気を感じるですが、今の所、目に見える雰囲気は全然違うのです……」

 カチュアがガジェットから送られてくる映像を凝視しながら、そう呟いて唸る。

 

 そのままガジェットは延々と穴を降下し続けるも、何も変わらぬ映像を送ってくるだけであった。

 

「お、境界が見えてきたぞ」

「やれやれ、障壁はどうにか保ったな」

 ザイオンに対してラディウスがそう返しつつ、目の前のゲージを見る。

 

「たしかに危険な領域を示しているわね……」

「でも、これで一安心なのです」

 ルーナとメルメメルアがそう言った所で、

「んん? 何か例のブロックが見えなくなってきたよ?」

 と、セシリアがガジェットから送られてくる映像を見ながら口にする。

 そしてそれにカチュアが続く。

「しかも、徐々に霧か靄のようなものが出てきていますです」


 と。

微調整に時間がかかり、更新が少し遅れました……


何かが見えてきましたが……? という所でまた次回! 

次の更新は、お盆の諸々の都合があり、あまり時間が取れない為、申し訳ありませんが、再び平時よりも1日多く間が空きまして、8月14日(月)を予定しています(なお、その次の更新も平時に戻れるか微妙な所です……)


※追記

距離の単位が誤っていたので修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ