第4話 動き出す者たち。原野とクルマ。
「個人的には、その死の大地っていうのがどういう感じの代物なのか気になるというか……見てみたい所ではあるな。向こうの世界にはそういう場所はないし。いや、俺の知らない場所にはあるのかもしれないが……」
「うーん……死の大地かぁ……。聞いた事ないなぁ。少なくとも王国領内やその周辺の国にはないと思うよ。もしそんな場所があったら、諜報部に情報が届いているはずだし」
ラディウスの発言に、セシリアが顎に手を当てながらそんな返事をする。
「当初の想定では、ここでディーゲルという人の娘をどうにかして、その人の所に連れて行く感じだったのよね?」
「まあそうだな」
ルーナの問いかけに対して頷くラディウス。
それを確認したルーナが更に言葉を続ける。
「でも、予定を変えてディーンさんが異形化の状態を調べているのを待つのなら、その間にこっちの世界の王都の場所――その死の大地とやらを見に行って来られるんじゃないかしら? メル、そこまで行くのって時間かかるの?」
「うーん……。鉄道が通っていないので、クルマか徒歩で行く必要があるのです。ただ、直接死の大地まで繋がっている道はなくて、クルマで行く場合も、近くの『エリク=レベンディア監視哨』までが限界なのです。そこからは荒れ果てた原野を歩くしかないのです」
「その原野をクルマで突っ切ればいいんじゃ?」
メルメメルアの説明を聞いたセシリアが、首を傾げながら問う。
それに対してメルメメルアは首を横に振り、
「大型の魔物の死骸――骨やら腐った沼やら瘴気溜まりやらがいたる所に存在しているのです。それらがなくても、そもそも大小様々な岩が転がっているのです。クルマで突っ切るのは難しい気がするのです」
と、そんな風に告げる。
「なるほど……。普通のクルマでは進むのは難しそうだな」
ラディウスが腕を組みながらそう口にすると、ルーナもまた腕を組んで、
「となると、そのエリ……ナントカ監視哨までクルマで行って、あとはその結構危険そうな原野を徒歩で横断するしかないわね……。簡単には行けなさそうだわ」
と言って首を横に振ってみせた。
しかし、それに対してラディウスが顎に手を当てて言う。
「いや、あくまでも普通のクルマで進むのは難しいってだけだ。そういった場所を突破出来るクルマを用意する事が出来れば問題ない」
「うん? そんなクルマあったっけ?」
「手持ちにはないな。ゼグナム解放戦線が使っているような装甲車を確保して、少し改良すればどうにか出来るとは思うが」
首を傾げて問いかけてくるセシリアに、そんな風に答えるラディウス。
「あ、それで『用意する事が出来れば』なのですね? です」
ラディウスの発言の意味を理解したカチュアがそう口にし、それに対してラディウスが頷いてみせる。
「ああ、そういう事だ」
「なかなか面白そうな話をしてんな。そういう事なら、俺が使ってる奴を改良してくれて構わねぇぜ」
唐突にそんな声が聞こえ、ラディウスたちが声のした方を見ると、扉の所にザイオンの姿があった。
「いいのか? 大分弄る事になると思うが……」
「構わんさ。つか、あんなやべぇ場所を突破出来る程の改良が施されるってんなら、こっちとしちゃ、むしろ大助かりってもんだぜ。ばっちりやっちまってくれ」
ラディウスの問いかけにそう言って両手を広げて見せるザイオン。
「そうか? まあ、そこまで言うのならありがたく改良させて貰うとするか」
ラディウスはそう告げると、ザイオンと共に装甲車のもとへと移動。
早速装甲車を改良し始めるのだった――
というわけで(?)次回は死の大地へ足を踏み入れます!
……が、所々諸々の都合により、次回の更新も平時より1日多く間が空きまして……7月27日(木)を予定しています……(その次は、平時通りの更新間隔に戻せる……かもしれません……)




