第4話 滅界獣と遺跡。転送座標の謎。
「テレポーター……? そう言えば、動作していないテレポーターを見つけたとか言っていたな」
「はいです。魔力自体は流れているものの、その流れが起動式の所まで到達していない――対になる地点の座標軸が検出出来ない状態になっているテレポーターを、あの遺跡で目にしたのです」
ラディウスに対し、そんな風に答えるメルメメルア。
「あの時、『転移先がこの辺りに存在しない状態』でそうなっているのではないか……と、そのように考えたですが……もしかしたら、ここがその『転移先』である可能性も考えられるのです」
「なるほど……。メルメメルアの言うガーディマ遺跡が私の知ってる遺跡の事なら、ここからは『ものすごい離れている』よね」
メルメメルアの発言に、理解と納得がいったらしいセシリアがそんな風に返す。
――世界……つまり、次元を隔てているせいで転移出来ない状態になっている……か。たしかにそれはあり得る話だな。
「その時の座標軸って覚えているか?」
ラディウスがそんな風にメルメメルアに問いかけると、
「はいです。X919972、Y887312、Z138、S12なのです」
と、そんな風に返してきた。
「うん? XYZは理解出来るが、Sというのはなんだ?」
エレンフィーネがそんな疑問を口にしつつ首を傾げる。
それに対してメルメメルアは、少し困った表情をしながら答える。
「それについては私もわからないのです。転移用の情報のひとつである事は間違いないは思うですが……」
――縦横高さ……はいいとして、S?
……南……ではないよなぁ。スペース? スフィア? 空間……か?
いやまあ、それはそれで良く分からないが……
ラディウスはそんな事を考えつつも、テレポーターの術式を解析していく。
すると、組み込まれている何かの数字が見えてきた。
――この数字の羅列、なんだか座標軸に似ているな……
この回路を辿っていったら情報が出て来る……か?
ラディウスはそう思いつつ回路を辿る。すると……
「おっ、この地点の座標軸が記録されている箇所を発見したぞ」
と、そうラディウスが口にした通り、座標軸が判明する。
「え!? ホント!?」
「ああ。符号化――暗号状態になっているが……まあ、このくらいなら復号化――解読は簡単だ」
「そ、それで、ここの座標は?」
「ちょっと待て。えーっと……X919972、Y887312、Z138、S12……。まさかの完全一致だ」
セシリアの問いかけに対し、ラディウスは情報を読み解き、そう告げる。
「あ、あのガーディマ遺跡のテレポーターの転送先はここだったですか……」
「どうやらそのようだ。……っと、待った。良く見ると他にもあるな……」
メルメメルアの言葉にそう返し、ラディウスは新たに見つけた情報を調べる。
「……ガーディマ遺跡以外にも、X373811、Y1024807、Z99、S12……という場所にも繋がっているようだ」
「どこだか良く分からないけど、XとYの数値からすると、北北東って感じだね」
ラディウスの発言に対し、セシリアがそんな推測を口にする。
「北北東というと帝都があるが……」
「それはさすがに近すぎるというものだ。X1あたりの距離が不明ではあるが……それでも、60万もの差がある事を考えると、かなり北の方だと考えた方が良いであろう」
エレンフィーネに対し、ディーンが顎に手を当てながらそう返す。
「……ゼグナムも北北東に位置しますが、ガーディマ関連の遺跡はなかったはずです。なので、それよりも更に先かあるいは手前か……ですが、ディーン殿の言う通り、近くはないはずです」
「そうなると、ゼグナムよりも更に北北東……です?」
「そうですね。そう考えるのが妥当ではないでしょうか」
テオドールとメルメメルアのそんな会話を聞きながらラディウスは思う。
――それだけ北北東となると、向こうの世界ではエレンジール王国領内の奥地、あるいはメルティーナ法国の西……。あの巨大な湖の西岸か……
……そう言えば、エレンジール王国領内に魔軍の拠点が存在するのではないか? という話もあったな。
……まさかこの座標軸、ひょっとしたらひょっとする……のか?
と。
遂に、かなり前の伏線をようやく回収し始められる所まで来ました……
といった所でまた次回! 次の更新は平時通りの間隔となる、7月2日(日)でいけると思います!(もし、何か起きて遅くなったとしても日を跨ぐ前までには更新出来ると思います)




