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第25話 聖木の館。イザベラの言葉。

「……唐突になぜそのような質問をしてきたんですの?」

 イザベラが怪訝そうな表情で、ラディウスに対してそう問い返す。

 

「イザベラの話す『メリット』とやらは、『そこ』に繋がっているような気がするからだ。……というより、そうでなければ正直メリットと言い難い」

 肩をすくめながらそんな風に答えるラディウスに、

「……それはつまり、『真の歴史』を知る事は、歴史の根幹から枝分かれした誤った記録――可能性を排し、『真の歴史』への回帰、あるいは収斂へと繋がるのではないか……と? そう仰りたいんですの?」

 なんて事を更に問うイザベラ。

 

 ――これだけ聞くといきなり何を言っているんだという感じだが、こちらのカマかけに気づいたと考えれば、まあ……分からなくもない言い回しだな。相も変わらず分かりづらいが。

 

「ま、そんな感じだな。で、気になったわけだ」

 そう言って腕を組みながらイザベラへと視線を向けるラディウスに対し、イザベラは顎に手を当てて考えを巡らせた後、

「……真の歴史への回帰を標榜する者たちは、本来の歴史は今よりも良かったと口にしますわ。でも、本当にそうなのかは誰にもわかりませんわよね? わたくしは、わたくしの過去に不満などありませんのよ。なぜなら、どんな過去であろうとも、それも含めてわたくしという存在なのですわ。それを変えるだなんてありえませんわね」

 なんて事を口にした。

 

 それを聞いたテオドールが、ラディウスの発言からイザベラが『理解した』であろうと判断し、

「……なら、何故そのような連中に手を貸しておられるのですか?」

 などという問いの言葉を投げかける。

 

「それは簡単な話ですわね。あの者たち――ビブリオ・マギアスはわたくしの目的に都合が良い活動をしておりますわ。あの者たちの活動が成就すれば、必然的にわたくしの目的も達成されるというものですのよ」

 イザベラが隠す必要はないと考えたのか、『ビブリオ・マギアス』の名を口にする。

 

「ビブリオ……マギアス?」

「聞いた事のない名の組織であるな……。まあ、闇で蠢く組織の名前など知らぬものの方が多いとは思っておるが」

 向こうの世界の存在を知らないエレンフィーネとディーンがそんな風に言う。

 それに対してテオドールが、

「まあ、その存在を知っている者は『この世界では』数少ないと思いますよ」

 と、『この世界では』の部分を強調しつつ答える。

 

 イザベラはというと、その会話に対しては何も口にせず、

「とはいえ……完全に成就されてしまっては、わたくしも困るというもの。幻軍という力を行使してギリギリの所でそうならぬようにしようと動いておりますわ。ですけれど――」

 と告げ、ラディウスたちを見回す。

 その意図に気づいたセシリアが、

「――私がレミィを倒してしまったから、手駒がなくなった?」

 と、言って肩をすくめてみせた。

 

「ああ、やはり貴方が倒したのですわね? 剣の聖女……セシリア?」

「先に仕掛けてきたのはあっちだし? 私は迎撃しただけだよ?」

「そうですわね。剣の聖女が居るであろう可能性は考えておりましたけれど、よもやレミィよりも強いとは思いませんでしたわ……。そこに関しては完全に誤算ですわね」

 イザベラはセシリアの言葉に対して頷いてそう返事をすると、頬に手を当てて盛大にため息をついてみせた。

 

「もっとも……レミィはたしかに戦闘能力や工作能力の面では優秀な副官ではありましたけれど……少しばかり、自ら思考するという点が足りていないのが残念でしたわ。戯言を完全に鵜呑みにしておられましたし?」

 イザベラはそんな風に言った後、再びラディウスたちを見回し、

「そういう意味でも、戯言に踊らされない者たちという戦力は欲しい所ですのよ。なので、わたくしと協力関係を――」

 と、そこまで言った所で一度言葉を切った。

 そしてフゥと息を吐いてから首を横に振り、

「いえ、そうではありませんわね。既に全てを認識している貴方がたの方が有利というもの……。ここはこう言葉を投げるべきですわね。――わたくしが貴方がたの味方に……仲間になりますわ。受け入れてくださいません? と」

 なんて言葉を、ほほえみながら続けてきたのだった。

更にとんでもない事を言い出すイザベラですが……?


といった所でまた次回! ……なのですが、諸都合によりなかなか時間が取れず……申し訳ありませんが次の更新も平時より1日多く間が空きまして、6月14日(水)を予定しています。

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