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第24話 聖木の館。イザベラの話。

「……そちらと――組織的な協力関係ではなく、イザベラという人間とのみ協力関係を築く事に、どんなメリットがあるのかがさっぱり分からないんだが?」

 ラディウスはとりあえずそんな風に問いかける。

 実際、イザベラはその部分に触れた話をしていないので、ある意味当然だとも言える。

 

「……そうですわね。それを伝えずに協力関係を築く提案をいきなりしてしまうだなんて、わたくしとした事が勇み足が過ぎましたわ……」

 頬に手を当てながらため息混じりにそう口にするイザベラ。

 そして、その状態から腕を組み、

「それを含めて順を追って話す事にいたしますわ。……わたくしはたしかに『皇帝直属の諜報部』ではありますけれど、それはわたくしの目的――『世界の真実を暴く事』の為でもありますのよ」

 と、そんな風に言った。

 

「……世界の真実……?」

「ええ、そうですわ。先程から話をしている『災厄』を始めとして、この世界には『何故かどこにも記録が遺っていない存在や出来事』が幾つもありますのよ。例えば……レゾナンスタワーなどがそうですわね」

 首を傾げながら問いかけたラディウスに対し、そんな風に語るイザベラ。

 それを聞いたメルメメルアが、

「あれは超広域通信の為の塔ではないのです?」

 と、問い返す。

 

「そうですわね。たしかにそのように言われておりますけれど、それはあくまでも推測……。そういう記録があそこから出てきたわけではありませんわ。それに……『通信と無関係な物』が存在するフロアも多くありますわ。古の時代の人間たちの魂を封じた結晶や、周辺のレイラインを観測する装置……そういったものも、あそこには遺されておりますでしょう?」

「……言われてみると、たしかにその通りなのです」

 頷いて見せるメルメメルアに対し、イザベラが言葉を続ける。

「そして……あの塔に限らず、『何に使われていたのかが不明な遺跡』が、大陸各地に存在していますわ。まあ、その辺はご存知でしょうけれど」

「……なるほど。たしかにその通りだな」

 メルメメルアに代わる形で、ラディウスがガーディマ遺跡の存在を思い出しつつ呟くようにそう返す。

 

「それから……古の時代から何らかの方法で現代へと流れ着いた者たちが、古の時代の一部の情報だけを共通して忘れていたり、知らないと言ったりしているとかもありますわね。それこそ『災厄』については、直前までそれへの対策に携わっていた人間であるにも関わらず、何故か記憶にない……と、そんな風に言われましたわ」

「……それもたしかに当てはまる部分があるのです……。それこそ、私の暮らしていた『島』の位置とかは、さっぱりわからないのです。まるで最初から場所を知らないかのように……」

 イザベラの語りに対し、納得の表情で同意の言葉を口にするメルメメルア。

 

「ええ、そうでしょうね。……ともあれ、そういった『謎』を解き明かして『真実』を知る事……。それがわたくしの真の目的なのですわ。そして……それは貴方がたの活動や目的にも、大きな利を齎すのではありませんこと?」

「うーん……? いまいちメリットとしては漠然としているというか、利になるかどうかが不明瞭な感じではないか? それは」

 エレンフィーネはイザベラに対してそんな風に返すが、たしかにそれらの『真実』が判明すれば、色々な部分で優位に働くというのも、ラディウスはなんとなく理解していた。

 

 要するにイザベラの語った『メリット』は、『分かる人間』に向けた者なのだ。

 それ故にラディウスは大いに悩む事となった。

 

 ――向こうの世界とこちらの世界を行き来出来る者にとっては、その辺りの情報はたしかに有益だが……

 だからこそ、イザベラにカマをかけられているような、見透かされているような、そんな感じもしないではないんだよな……

 というより……下手をすると、イザベラにばかりメリットがありそうな気がするぞ。

 イザベラは個人的な協力関係と言っていたが、もしイザベラが得た情報を『ビブリオ・マギアス』――ひいては魔軍としての活動に用いたとしたら、実に厄介な事になりかねん。絶対に裏切らないなんていう保証はどこにもないのだからな。

 だが、こんな曖昧なメリットを語ってくる事、それ自体のメリットがイザベラにあるかというとないのもたしかなんだよな……

 もし『分かる人間』じゃなかったら、話があやふやかつ怪しすぎて即座に拒否されるだろうし。

 ……いや、まさかそれすらも想定している……のか?

 ならばいっその事、こちらから逆にカマをかけた質問を――いきなりこいつの『想い』の根幹に踏み込む質問をしてみるのもあり……なのか?

 

 そこまで思考を巡らせた所でラディウスはイザベラへと顔を向ける。

 そして、

「……ひとつ聞かせてくれ。――イザベラは自身の過去を変えたいと思った事はあるか?」

 と、そんな風に問いかけた。

物語的には最終盤という事もあり、そろそろ謎の中核へ踏み込んでいきます。つまり……?


とまあそんな所でまた次回! ……なのですが、諸都合により次の更新も平時より1日多く間が空きまして……6月10日(土)の予定となります。

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