第18話 聖木の館。攻勢。
「……中にいる奴は相当な力を持っていそうな感じだし、状況的に警戒すべき存在だが、さすがに救出した俺たちに対していきなり襲いかかってきたりはしない……と思う。何者なのかを知る為にも、とりあえず救出してみるか」
皆に対して、そんな風に告げるラディウス。
「まあ……たしかにこのまま引き下がったら、なんの情報も得られないままだしね。うん、やってみようか。中から攻撃しているのなら、あいつの行動もある程度は封じられそうだし」
「私が戦闘をするわけではないゆえ、無責任な事を言う形になってしまうが……たしかに、少しでも情報を得たい所ではあるな……。それに、あの異形の魔物も今なら倒しやすいと言えるやもしれぬ」
セシリアとディーンがそんな風に言い、
「そうだな……。ここまで来たのならもう覚悟を決めて踏み込んでしまった方が良いのではないか……と、私も思う」
と、エレンフィーネが続き、それに対してメルメメルアとテオドールが無言で頷いてみせた。
「よし……。攻撃を仕掛けるぞ」
ラディウスはそう口にするなり、銃型のガジェットを構え、そのトリガーを引いた。
銃口と全く合っていない巨大な魔法弾がガジェットから放たれ、深淵より来たりしモノへ向かって一直線に飛んでいく。
それが合図となり、セシリアが聖剣を構えて突撃。
テオドールとエレンフィーネがそれに続くようにして駆ける。
「グガッ!?」
深淵より来たりしモノが、ラディウスの放った魔法弾の存在に気づいて驚きに近い声を上げる。
だが、その気づいた所で既に回避も防御も難しい状態であり、そのまままともに直撃を食らう形となった。
「ゴガアアァァアァァァァァァアアアアァァッ!!」
という苦悶と憤怒の入り混じった咆哮が発せられ、接近するセシリアたちに対し、白銀のブレスを吐く深淵より来たりしモノ。
――攻撃自体はしっかり効いているし、『痛み』も感じているようだが、怯みも仰け反りもせず、すぐに一番脅威となるであろう相手に対して反撃に転じる……か。なんだか戦闘慣れした人間のような動き方をするな。
なんて事を思うラディウス。
もっとも……セシリアたちも戦闘慣れした人間であり、敵がそういう動きをしてくる可能性に関してはしっかりと予測済みというものである。
故に、すぐさま大きく横に飛んでブレスを回避。
若干、反応の遅れたエレンフィーネにブレスが掠るものの、服の一部が溶けた程度であった。
とはいえ――
「掠っただけで溶けるとは……。直撃したらシャレにならないな」
エレンフィーネがそう呟いた通り、威力自体は凄まじいものであった。
「もう一度来そうです!」
テオドールが声を大にして忠告した通り、深淵より来たりしモノは、再びブレスを吐こうとしていた。
だが、そこにメルメメルアの放った魔法のボルトが飛来。
深淵より来たりしモノの口に勢いよく突き刺さった。
「グゲギギィイイィィィイイィィイイイイィイィィッ!!」
魔法のボルトによる強烈な衝撃により、深淵より来たりしモノが、咆哮を発しながら大きく仰け反る。
と同時に、ブレスの放射が口元を出た所で停止。セシリアたちのもとにまで届く事はなかった。
「ナイス!」
セシリアがそんな風に言いながら、深淵より来たりしモノへと駆ける。
その深淵より来たりしモノは、体勢を立て直しながらセシリアたちを一瞥しつつも、憎悪の視線をラディウスやメルメメルアのいる方へと向け、そして背中の角のようなものを光らせた。
「なにか仕掛けてくるぞ!」
ディーンのその忠告とほぼ同時に、ラディウスが自分を中心として、ディーンとメルメメルアを含む形で、前後左右のみならず上下をも覆う防御障壁を展開。
未知の敵であるが故に、どこからどう仕掛けてくるか分からない為、どんな攻撃が来ても防げるよう全方位に対して備えた形だ。
――さて、どこから仕掛けてくる……?
この防御障壁であれば、そうそう破られないはずだが……
さすがに瞬殺というわけにはいかない事もあり、ちょっと戦闘描写が長くなりそうな感じだったので、一旦ここで区切りました。
そして次の更新ですが、所用で間が空く……所だったのですが、区切った事でやや余裕が出来た事もあり、平時通りの更新間隔で行けそうな感じです。
というわけで、次の更新は5月20日(土)を予定しています!




