第15話 聖木の館。深淵より来たりしモノ。
予定よりも大分遅くなりました……
「な、何この訳の分からない魔物……」
セシリアがそんな事を口にする。
そして、
「深淵ヨリ来タリシモノってのはいいけど、その後ろのブイイー、エルオー、エフオーディー、ディーワイジー、エヌイーユーって……何?」
と言ってラディウスの方を見た。
「分からん……。前方の名称は、どことなく『魔人』の名称に似ているが、後方の名称はいまだかつて見た事のないタイプだからなぁ……」
ラディウスがそんな風に返すと、メルメメルアがそれに続くようにして、
「ええっと……ヴェロフォドダィグネゥ?」
と、ちょっと発音しづらそうに名前と思われるものを口にした。
それを聞いたディーンとテオドールが、
「ヴェロフォド……なんとかというのは、初めて聞いた名前であるな」
「そうですね。そのような名前を持つ魔物は私も存じ上げません」
なんて言いながら首を捻る。
「そもそも、これが読み方として正しいのかというのもあるしなぁ……」
「ですです。自分で読んでおいてアレですが、たしかにその通りなのです。クエスチョンマークが混ざっている時点で怪しいのです」
「まあ……ここで考えていても仕方ないし、それよりその魔物の所へ向かった方が良いのではないか? 咆哮が聞こえたという事は、グリムフォードがその魔物に発見された可能性も十分ありえるぞ?」
考え込むラディウスとメルメメルアに対し、そんな風に告げるエレンフィーネ。
それに対して、
「ああそうだな。もし、グリムフォードがあの魔物――とりあえず『深淵より来たりしモノ』と言っておくか――深淵より来たりしモノと遭遇したのだとしたら、急いだ方が良いだろう」
と返し、咆哮の聞こえた方を見る。
「こっちの方角だな。……直線で進めるかは分からないが、行くとしよう」
ラディウスはそう告げながら思う。
……だが、マリス・ディテクターにグリムフォードが反応しないのが分からん……
どう考えても『こちらに敵意を持つ者』なわけだし、反応してもいいはずだが……
と。
◆
「あそこの角を曲がった所にいるっぽいね」
セシリアが、マリス・ディテクターで深淵より来たりしモノの位置を把握しつつそう告げる。
「そのようだな。……いきなり飛び出さず、まずは慎重に覗いてみるとするか」
「はい、それが良いでしょう。グリムフォード将軍の安否が気にかかりはしますが、だからといって未知の敵の前に不用意に飛び出すのは愚策というものです」
ラディウスの発言に対し、同意するように頷いてそう返すテオドール。
「タシカニソウデスネ」
セシリアが何故か片言で答える。
それを見ながらラディウスは、まあ……セシリアは真っ先に飛び出していく傾向にあるしなぁ……なんて事を思いつつ、曲がり角へと近づき、そのまま壁に張り付いた。
「こいつは……狼……いや、竜……か?」
「たしかに雰囲気的には狼なのです。でも……あの毒々しい鱗、背中にある棘、そして逆鱗のようなもの……どれも竜――特に地竜種の特徴なのです」
ラディウスの呟きを聞いたメルメメルアが、深淵より来たりしモノを観察しつつ、そう口にする。
「背中にメチャクチャたくさん生えてる鹿の角みたいなのって、翼の骨格……なのかな?」
「あれは角なのではないか? どう見ても、曲がるようには見えないぞ……?」
首を捻るセシリアに、そう応えるエレンフィーネ。
それに対してセシリアは、
「いやでも、背中に角っておかしくない? 頭にあるから角っていうんだし……」
と、そんな風に返した。
「まさしく異形……と言わざるを得ぬ姿形であるな」
「たしかにね。……というか、見た感じグリムフォード……だっけ? 追ってきた帝国の将軍の姿は見当たらないけど……もしかして逃げたのかな?」
ディーンに対してそう返しつつ、深淵より来たりしモノの周囲を見回すセシリア。
「もしそうであるのなら、我々もあそこを迂回して先に進みたい所ではありますね」
「まあたしかに、あれとやり合いたいとは思えぬな……」
そんな風に言うテオドールとエレンフィーネに対してディーンが、
「遠くを見るガジェットがあるゆえ、それでもう少し確認してみるとしよう」
と言って、望遠鏡のような形状のガジェットを取り出すと、それを使って深淵より来たりしモノの周囲を良く確認し始める。
そして程なくして、
「……うん? あのマントは……」
と、そんな事をディーンが呟くように言った。
予定よりも更新が大分遅くなってしまいまして申し訳ありません……
もう既に火曜日になってしまっていますね……
今回は思ったよりも会話が長くなった為、話自体はあまり進展しませんでした……
ともあれ、そんな所でまた次回!
次の更新は平時通りの間隔となりまして、5月11日(木)の予定です!
……次は通常通り更新出来ると思います……




