第13話 聖木の館。遺跡の情報。
「うん? あれは……私と一緒に行動していた部隊だね。先頭にアメリアがいるし」
セシリアはそう口にしながら前に歩み出て、
「アメリア、救出した人たちの脱出はもう完了したの?」
と、自分たちの方へとやってくるアメリアへと問いかけた。
「うん、地上部分はもうほぼほぼ制圧が完了したからね。特に障害もなかったから思ったよりもあっさり終わったよ。今は一旦安全なキャンプ地点まで装甲車で運んでいる所だね。で、そっちは別の部隊が受け持つ事になってるから、後を任せて、私たちはこうして地下へとやってきた……って感じだね」
アメリアがそんな風にセシリアに対して説明する。
「なるほどね。でも、まだちょっと人数が足らないような……」
「それなら安心していいよ。次々に来てる――っていうか、私たちと一緒に来た別の部隊は、もう既に他のフロアに展開してるし」
セシリアの疑念にそう答えるアメリア。
それを聞いたラディウスが、
「ああ、ここに来ているのはアメリアの部隊だけじゃないのか」
と口にする。
「私の部隊じゃなくて、本当はセシリアの部隊なんだけどね……」
「……まあ、『隊長』は単独で十分強いですからね」
「ラディウス殿たちと共に、先行して偵察を行う方が良いというものだ」
ため息交じりのアメリアに続く形で、部隊員がそんな事を言う。
そして他の部隊員も、それに同意するように頷いてみせた。
「……そういうわけですので、このフロアに制圧は私たちが対応いたします」
アメリアの横に立つ部隊員がセシリアたちの方を見てそう告げると、セシリアがそれに対して首を縦に振った。
「うん、わかった。それじゃあよろしくね」
「そっちはグリムフォードって将を追うんだよね? 『別ルート』で得た情報によると、遺跡部分には結構凶悪で巨大な魔物がいるらしいから気をつけてね」
「大丈夫、大丈夫。どんなデカブツでも、ぶった斬るから」
アメリアの忠告に対してセシリアがそう返すと、アメリアは首を横に振り、
「違う違う。気をつけるってのはセシリアたちの方じゃないよ。セシリアたちならどんな魔物と遭遇したって大丈夫だろうけど、グリムフォードの方はそうじゃないでしょ? 追いついたけど手遅れでしたっていう可能性もあるって意味だよ」
なんて事を口にして肩をすくめてみせた。
「あ、そっちの意味ね……。でもまあ、たしかにそうだね」
「はいです。凶悪な魔物がいるのなら急いで向かわないと危険なのです。主にグリムフォードという人物が」
そんな風に言うセシリアとメルメメルアに対し、ラディウスは頷き、
「そうだな。ちょっと走って向かうとするか。――ディーンさん、すいませんがそういう事なので少し走りますが……」
と言って、ディーンの方を見る。
「ああ、心配はいらぬ。私はこれまで情報収集の為に、帝国領内を西に東にと移動を繰り返してきたからな。体力には自信がある方だ。まあ、走るのはあまり得意ではないが、そこもガジェット――魔法の力を使うゆえ、問題ない」
そんな風に答えつつ、ブーツ型のガジェットを取り出すディーン。
「これは履いている間、加速魔法がかかり続けるという代物だ。魔力消費が激しいゆえ、あまり長時間は使えぬが、ここから遺跡の中まで走るくらいは余裕というものだ」
「これはまた珍しい物を持っているですね……。ひとつの魔法のみを有し、それに特化しているガジェットというのはなかなかにレアなのです。時間があればどこで手に入れたのか聞きたいくらいなのです」
ディーンの説明に対してそんな事を口にするメルメメルア。
「なに、走りながらでも話す事は可能というものだ。ほれ、急いで向かうとしようではないか」
そう促すディーンにラディウスは頷いてみせると、アメリアたちに別れを告げ、遺跡部分へと向かって走り出した――
……思った以上にアメリア(たち)との会話が長くなってしまったので、想定よりも手前ですが、一旦区切りました。
といった所でまた次回! ……本来なら所用で平時よりも1日多く間が空く所だったのですが、少し先まで既に進んでいる為、平時通りの間隔で更新出来そうです。
というわけで、次の更新は……5月4日(木)の予定です!




