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第9話 聖木の館。ディーンとグリムフォード。

「うん? あの日記を書いたのは貴方なの?」

 セシリアがラディウスの思った事を口にする。

 

「や、やはりあの日記を……!?」

「……その反応、間違いなさそうだね。とりあえず、詳しい話をする為にも――」

 ディーンの反応を見たセシリアはそう呟くと同時に、前方へと一気に踏み込む。

 

 そして、アンウィル・エグゼキューター1体を聖剣で一閃。

 その動きに合わせるかの如く、テオドールとエレンフィーネが同じように踏み込んで、アンウィル・キーパーを撃破する。

 

「なっ!?」

 一瞬にして3体倒された事に驚くディーン。

 そんなディーンに対し、

「これで終わり……っと」

「楽勝なのです」

 と言って、残るアンウィル・キーパー2体を倒しながら、接近するラディウスとメルメメルア。

 

「この日記を書いたのが貴方だと言うのなら、聞きたい事があるのです」

 メルメメルアにそう告げられたディーンが、驚愕しつつも僅かに『何か』を期待しているのような、そんな表情で問い返す。

「き、聞きたい事?」


「――変異してしまった者を戻す方法について、です。この日記の記述からすると、貴方はその者たちを救う方法……戻す方法を研究していたのですよね?」

 メルメメルアの代わりに、ラディウスが穏やかな声でそう問いかける。

 敬語かつ穏やかな声なのは、出来れば味方に引き込みたい為、ここで高圧的に出て、相手に萎縮されたり反発されたりしてしまうわけにはいかないと考えたからだ。

 

「あ、ああ、その通りだ。……その事を知っている上で、そう問いかけてきたという事は、君たちは彼らを助けに来た……という事で良いのか?」

「はい、概ねその通りです。というより……上の施設は既にゼグナム解放戦線による制圧作戦が最終段階に入っておりますが、貴殿はそれを認識しておられないのですか?」

 テオドールがディーンの問いかけに返答しつつ、問いの言葉を投げかける。

 

「何!? そうなのか!? ここにはそのような情報の伝達は一切なかったぞ……。いや、敢えて伝えられていない……? もしそうであるのなら――」

 そんな事を言いながら、ブツブツと呟き出すディーンに対して「何か思い当たる事でもあるのです?」と問うメルメメルア。

 

「……実はグリムフォード――っとと、すまない。その人物の説明が必要であったな。――グリムフォードというのは、帝国の将のひとりであり、ここにいる研究者たちのリーダー的存在でもある存在の事なんだが、数時間ほど前に私の所に現れて、これまでの研究成果をアルベリヒ卿に報告しにいくから出せる分だけで構わないから情報を出して欲しいと言われたのだ」

「数時間前と言うと……ちょうど攻撃を開始した頃だね」

 ディーンの話を聞いたセシリアが、顎に手を当てて考え込みながらそう口にする。

 

「そうだな。そして、アルベリヒに研究成果を報告……か。この施設を放棄するという判断を下したと考えて良さそうだな」

「はい、私もそう思うです。でも、その将軍――グリムフォードとは、誰も遭遇していない気がするのです。将クラスの者を見つけたのであれば、どのチームも即座に全体に対してその情報を流すはずなのです。取り逃すわけにはいかない存在なのですから」

 ラディウスの発言に頷き、そんな風に言うメルメメルア。

 

 ラディウスがテオドールの方へと顔を向けると、テオドールは頷きながら「その通りでございます」と答える。

 

「とすると……」

 ラディウスはそう呟きながら、今度はディーンの方へと顔を向け、

「地上への出入口は一番上の層にある長い通路だけなんですか?」

 と、問いかけた。

 

「正規の出入口はそうなる。だが、一番上――1層の最深部は昔の神殿だか宮殿だかと繋がっていてな。そこを抜けて外に出る……というのは一応可能だ。もっとも、魔物が住み着いている事もあって、普段は封鎖されているがね」

「なるほど……。であれば、その別ルートから外へ出た可能性は、結構高い気がしますね……」

 ディーンの返答に対してラディウスはそう返した後、皆の方を向いて、

「――とりあえず1層へ戻って最深部へ繋がっている道を調べてみるのが良さそうな気がするが、どうだろうか?」

 と、そう問いの言葉を投げかける。

 

「そうですね……。この場所で行われている実験に関しては、ディーン殿が我々に協力していただけるのであれば、後ほど詳しく聞く事が出来るので問題はありませんね」

 テオドールがそんな風に答えつつ、ディーンの方を見る。

 それに対してディーンは、軽く目を閉じた後、

「……私は私の研究の成果が、このようなおぞましい実験に――外法の使われているとは思いもしなかった。故にその日記にも書いてあったと思うが、手伝うフリをしながら彼ら彼女らを元に戻す研究を進めていたのだ。だから、貴殿らとの出会いはむしろ待ち望んでいた事であり、協力もまた願ってもない話だ」

 と、胸に手を当てながらそんな風に答えるのだった。

というわけで(?)いきなり日記の人物との接触となりました。

……大元の想定ではもう少し後の登場だったのですが、この辺りの展開を長々と引っ張ってもなぁ……と思いまして、スパッと先へ進む形に調整しています。


とまあそんな所でまた次回! ……で、次の更新なのですが……次も少々予定が詰まっている都合で、申し訳ありませんが平時よりも1日多く間が空きまして……4月21日(金)を予定しています(その次は平時通りの更新間隔に戻れると思います!)

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