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第2話 魔工士は修理した。そして調整もした。

 ラディウスは部屋から道具の入った鞄を持ってくると、再びオーブンの下部にある保護プレートを外す。

 

「ほぉ……さっきはしっかり見てなかったが、オーブンの中ってのはこうなってんのか……なにがなんだかさっぱりだな。ああでも、同じガジェットでも俺が持っている盾型ガジェットは、こんな線やら謎の基盤やらが中にいっぱいあるようには見えねぇな……」

 ラディウスの横から中を覗き込みながら、そんな事を言うディック。


「それはマイクロ化という処理が行われていて、こういった物が豆粒未満の大きさにまで縮小されているからですね」

 ラディウスはそう答えながら、素早く手を動かして修理を行っていく。

 

「ふむ、そういう事か……。うーむ、魔法――ガジェットっていうのは、なかなかにややこしい代物な」

「まあ、慣れですよ。俺からしたら、ガジェットよりも料理の方がややこしいですし」

「なるほど……。うーん、たしかにそういうものかもしれねぇな」

 

 そんな会話をしながらもラディウスは修理を続け――と言いたい所だが、実は修理は既に終わっており、今は配線の調整を行っている所だったりする。

 

 それから2分程でその調整も終わり、

「――よし、これでいいはず」

 と口にしながら、横に置いてあった保護プレートを着け直すラディウス。

 

「は、はえぇな……まだ3分も経ってないぞ……」

 あまりの速さに驚くディック。

 しかし、そんなディックに対してラディウスは、

「いえ、修理自体は1分もかからずに終わったのですが、どうもこのオーブン、配線が微妙だったので、ついでに調整しておきました」

 と、さらっとそんな風に告げる。

 

「マ、マジか……。いや、ここはさすがだと言うべきか……」

 更に驚くも、すぐに昨日の事を思い出し、納得するディック。

 そして一呼吸置いてから、疑問の言葉を続ける。

「ちなみにだが、調整というのは一体何をどうした感じだ?」


「配線を魔力伝導率が良くなる形にしました。――今まで、焼き上がるまでに想定よりも時間がかかっていませんでしたか?」

「ああ、たしかにそうだな。王都の広場で売られていた中古品だから、劣化しているのかと思っていたが……」

「王都の広場……なるほど、あそこですか。あそこは良品から粗悪品まで色々な物がありますからね。おそらくこのオーブンは一度壊れて捨てられていた物かなにかで、それを修理して売っていたのでしょう。技術不足なのか手を抜いたのかはわかりませんが、修理の仕方がいまいちだったので」

 ラディウスはフィルカーナ糖を買ったあの場所の事を思い出しながら、そう告げる。


「ふむ……そういう事だったのか。つー事は、これからは想定通りの時間で焼き上がるってわけだな」

「はい。なので、今までの通りの時間でやると、逆に焼きすぎる事になるかと……」

「おう、わかったぜ。つか、わざわざそこまでしてくれてありがとよ。お礼はバッチリすっから、酒場の2階で待っててくれ!」

「え、えーっと、さっきも言いましたけど、量の方はほどほどで……」

「あいよ! そんなに盛らないようにすっから安心してくれ!」


 上機嫌でそう言ってくるディックに対し、ラディウスはどういうわけか不安を拭えなかった――

次の話から、ちょっとばかし急展開気味になる予定です。

なので、今回は嵐の前の静けさ……といった感じです。

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