第8話 聖木の館。現れた者たち。
「来たようですね」
「向こう側の部屋へ向かっているようだ」
「上手く魔法の痕跡に引っかかってくれたか?」
テオドール、エレンフィーネ、ラディウスの3人が、扉の隙間から覗きながらそう小声で呟く。
「やって来た奴らの中で、ひとりだけ白いコートを羽織ってるのがいたけど、あれが『ディーン』っぽいね」
「通路に3人……いえ、4人残して、それ以外のアンウィル・キーパー共に部屋の中に入っていったようなのです。マリス・ディテクターの反応では中に入っていったのは3~5人くらいなのです」
そんなセシリアとメルメメルアの報告に対し、
「さっきからマリス・ディテクターの反応人数がブレているというか……安定していないのが気になるが……まあ、ひとりふたりなら大した差があるわけでもないし、そこは後で考えるとするか。――とりあえず、素早く通路にいる奴らを片付けてしまう方が良さそうだな」
と、ラディウスが自身の判断を口にする。
「そうですね。ここは敢えて音を立ててこちらへ引き寄せつつ、速やかに片付けてしまいましょう」
「うん、通路にいるのを速攻で倒せれば、残りの半分も倒すのも簡単だしね」
テオドールとセシリアのその言葉を聞くなり、ラディウスは即座に扉を勢いよく開いた。
バンッという大きな音が通路に響き渡り、通路にいたアンウィル・キーパー3体とアンウィル・エグゼキューター1体がラディウスたちの方へと顔を向ける。
そして、ラディウスたちの存在を確認すると、得物を構えて一直線に通路を駆け始めた。
「人数的にこちらが有利なのにも関わらず、突っ込んでくるか……」
「どうやらその手の判断は苦手みたいだね。精神制御のせいで、敵を見つけたら攻撃する……ってくらいの判断しか出来ないんじゃないかな?」
「ま、そんな所だろうな」
ラディウスはセシリアに対してそう返しつつ、銃のトリガーを連続で引き、魔法弾を連射。
殺到する魔法弾に対し、得物を盾のように構えて防御体勢を取るアンウィル・キーパー。
アンウィル・エグゼキューターの方はそれとは動きが違い、その場でバックステップしつつ、アンウィル・キーパー3体の後ろに隠れる。
――エグゼキューターの方が判断力がある……のか?
ラディウスがそんな事を思った直後、魔法弾がアンウィル・キーパーの得物へと着弾。
爆ぜた魔法弾の衝撃に寄って、アンウィル・キーパーたちが後ずさる――というか押し下げられた。
「ナイス、ノックバック!」
なんて事を言い放ちながら、聖剣を構えて勢いよく踏み込むセシリア。
そして、聖剣の一閃によって、アンウィル・キーパー1体が一瞬にして真っ二つに斬り裂かれた。
そのセシリアに続く形で、テオドールとエレンフィーネも踏み込み、アンウィル・キーパー2体が続けざまに倒れ伏す。
「残るはエグゼキューターだけなのです!」
メルメメルアがそう声を大にして告げつつ、クロスボウを構え……トリガーを引いた。
更にそれに合わせるようにして、ラディウスもまた己の銃のトリガーを引く。
クロスボウから発射されたボルトと、銃から発射された魔法弾。
そのふたつが、セシリアの脇をすり抜けるようにして飛翔。そのままアンウィル・エグゼキューターへと直撃した。
それによってよろめいたアンウィル・エグゼキューターが、無言のまま片膝をつく。
しかし、そこに更にボルトと魔法弾が飛来し……そして直撃。
ドサッという音と共に前のめりに倒れ伏し、そのまま動かなくなるアンウィル・エグゼキューター。
「楽勝だね!」
と、セシリアが言った直後、
「残りが来るのです!」
という警告を発するメルメメルア。
「大丈夫、分かってる。ディーンという人物だけうっかり始末しないように気をつけないとね」
メルメメルアに対してそう返すと、セシリアは聖剣を構え直す。
直後、部屋からアンウィル・キーパー、アンウィル・エグゼキューター、そしてディーンが飛び出して来て、
「お、お前たちは何者だ!? ま、まさか、部屋の奥に保管しておいた日記を盗んだのもお前たち……なのか?」
という声が発せられた。
そして、それを耳にしたラディウスが気づく。
――うん? 部屋の奥に保管しておいた日記……? 盗んだ?
もしかして……このディーンという人物が、あれを――あの日記を書いた本人……のか?
という事に――
一瞬で終わる戦闘シーンのはずなのですが、思ったよりも描写が長くなってしまいました……
とまあそんな所でまた次回! さて次の更新ですが、申し訳ありません……少々予定がある為、平時よりも1日程多く間が空きまして……4月17日(月)の更新を予定しています。




