第7話 聖木の館。迫る者たち。
「気にはなるですが、交代要員と思しきアンウィル・キーパーをどうにかするのが先なのです」
「ああ、それもそうだな。さっきと同じように素早く片付けてしまおう」
ラディウスがメルメメルアに対してそう返しながら他の3人を見回すと、
「うん、サクッとやっちゃおう」
と、セシリアが3人を代表するかのように告げ、エレンフィーネとテオドールがそれに同意を示すように頷いてせた。
……
…………
………………
「とりあえず片付いたが……『交代要員が戻ってこない』という点で気づかれかねないな」
アンウィル・キーパーを先程と全く同じ方法で素早く片付け終えた所で、ラディウスが呟くようにそう口にする。
「そうですね……。この場から離れるのが良いと思います」
テオドールがラディウスに同意する形でそう提案すると、エレンフィーネが、
「ですが、どっちへ向かうのが良いのでしょう……? 下手をすると、移動した先から来る可能性がありますが……」
と、そんな疑問の言葉を投げかけた。
「たしかにそこは難しい所ですね……。奥へ進むか、あるいは階段へ戻るか……」
そう返すテオドールに、エレンフィーネが「うーむ……」と腕を組みながら唸っていると、
「……敢えて十字路を挟んで反対側の部屋に隠れるという手もありますね」
と、そんな風にテオドールに対して告げるラディウス。
「敢えて向こうの部屋に隠れる……。なるほど、それであればこちらに迫ってくる者たちがいても、やり過ごすなり奇襲をしかけるなり可能ですね。真っ先にあちらへの部屋へ向かわれると逃げ場がないので少々厳しくなりますが、そこは鉢合わせしてしまった場合も同じですしね」
ラディウスの発言に対してテオドールが、顎に手を当てて思考を巡らせながら、そう返事をすると、ラディウスがそれに対して答える。
「一応それに関しては、こちら側に『魔法を使った痕跡』を意図的に残しておけば、まずはこっちの部屋へ意識が向くはずです」
「なるほど、魔法を使った痕跡か……。たしかにここの者たちは、魔法を使った痕跡を認識出来る何かを持っているようだし、痕跡があったらまずは確認しようと考えるであろうな」
「で、確認している隙に、やり過ごすなり奇襲をしかけるなりする感じだよね。どうにかなる気がするよ」
「はいです。それに……上手くいけば、あの異形を『操れる人間』が現れる可能性もあるのです。そうしたら、捕まえて情報を得る事が出来るかもしれないのです」
他の3人もそんな風に言って、ラディウスの提案に同意を示す。
「よし、なら早速ここに強めの痕跡を残してすぐに移動するとしよう」
ラディウスはそう告げてストレージからガジェットを取り出すと、妨害用の魔法を複数発動させた後、すぐに十字路を挟んで反対側の部屋へと移動。
他の4人もそれに続いて反対側の部屋へと移動した。
「こっちはこっちで、なかなかエグい物が並んでいるね……」
「まったくなのです……」
セシリアとメルメメルアがそんな事を呟くように言った所で、ラディウスの発動させていたマリス・ディテクターがこちらへ急いで迫ってくる集団を感知した。
「……やっぱり来たか」
「だねぇ……。あ、でも、思ったより数が少ないかも」
ラディウスの呟きに同意しつつ、そんな風に言うセシリア。
「10人いない気がするのです。これなら掃討は難しくないのです」
「それと……『ディーン』っていう『明らかに人の名前』も感知したね。捕まえて情報を聞き出してみようか」
メルメメルアとセシリアが、更にマリス・ディテクターで得られた情報を口にする。
――そいつが例の日記を書いた人物について何か知っていればいいんだが……
と、ラディウスはそんな事を思いながら、僅かに開けた扉の隙間から十字路の方を覗き見た。
今思うと、冒頭の部分は前の話のラストに入れても良かったような気がします……
まあ、そんなこんなでまた次回!
次の更新も平時通りの間隔となりまして、4月13日(木)を予定しています!




