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第6話 聖木の館。日記の主と地下の奇妙さ。

「――とまあ、そんな事をふと思ったんだが……どうだろうか?」

 ラディウスが日記を書いた人物についての推測を述べ、そして問う。


「うーん、なるほど……。たしかにその可能性はあるかもしれないね」

 そんな風にセシリアが返すと、顎に手を当てて思考を巡らせていたテオドールがそれに同意し、

「そうですね……。この部屋には実験についての記録が保管されていましたが、アンウィル・キーパーという存在を配してまで守る必要があるものかというと、少々疑問でした。それらを守るという名目――建前で、自らの日記が置かれている場所へ誰も近づかないようにしていたというのは、あり得ない話ではありません。そして……そのような私的な理由であれを配する事が出来るという事は、あれをコントロール出来る者たちの中でも、かなり地位の高い人間である……という推測も立ちますね」

 と、言った。


「エレンフィーネさんとテオドールさんは、そういった人物に心当たりはないのです?」

「うーむ……。ここで研究していた者との接点は皆無に等しかったゆえ、これといって思いつかないな……」

「私も地上の施設に配されていた者たちであれば、ある程度把握はしていますが、こちらに関してはさっぱりですね……」

 メルメメルアの問いかけに対し、エレンフィーネとテオドールが、それぞれそう返事をしつつ、首を横に振ってみせる。


「となると……この日記を持っていって、それらしい人を発見したら『日記を見せながら話を聞いてみる』のが良さそうだね」

「そうだな。もし『日記を見せながら話を聞いた相手』が、これを書いた本人であったのなら、すぐに何らかの反応が返ってくるだろうしな」

 セシリアに対してそんな風に返しつつ、ストレージに日記を格納するラディウス。

 そして、

「……一応、この実験の記録――標本と資料も全部持っていくか」

 と呟くように言いながら、戸棚の中から全ての標本と資料を取り出す。


「標本の方って……いる?」

「まあ……『元に戻す』手段を生み出す際に、細胞や粘液のサンプルとして必要になるかもしれないし……一応な」

 首を傾げながら問いの言葉を投げかけるセシリアに、そう答えるラディウス。

 

「あー……そう言われてみるとたしかにそうだね。微妙にグロくてあれだけど……」

「なに、ストレージに突っ込んでおけば、目に付く事はないから心配するな」

 ラディウスはセシリアに対してそんな風に返しつつ、標本と資料をストレージへと格納していく。


「……! ラディウスさん! マリス・ディテクターに敵性反応あり! なのです! アンウィル・キーパー数人がこちらへ接近中なのです!」

「うわ、本当だ……。でも、うーん……。移動の速度からすると……倒したのがバレたとかじゃなくて、単なる交代要員……って所かなぁ?」

 メルメメルアの警告に対し、セシリアは自身もまたマリス・ディテクターでアンウィル・キーパーの動きを確認。

 その移動速度は走っているわけではなく、歩いているような速さ――つまり、ゆっくりとした動きであった為、そう推測した形だ。


「あのような意志なき傀儡と成り果てた連中に、交代という概念があるのは少し妙な感じではあるな」

 と、腕を組みながら言うエレンフィーネ。


「そもそも、地上の施設が攻め込まれている状態なのにも関わらず、地下は我関せずと言わんばかりに動きが乏しいのも気になるよね……」

「ええ、たしかにそうですね。普通は地上部分が制圧されれば、この地下部分にも敵――我々の事ですが――が、侵入してくると考えて、防衛や警戒を強化するものですが、ここに関しては、そのような動きが一切見られません。これもまた妙な所です」

 抱いていた疑問を口にしたセシリアに対し、テオドールが頷きながらそんな風に言う。


 ……たしかにふたりの言う通り、地下は平常運転すぎる。

 ほとんどが精神制御を受けた、あるいは実験によって肉体が変容してしまい、意志も失ってしまった存在である為、受けた命令を忠実に守っているのだろうが……

 それならそれで、命令を下せる者――コントロールする事が出来る人物が、防衛なり警戒なりにアンウィルや異形を動かすはず。だが、その気配すらない。

 これは……一体どうなっているんだ……?

今回はどうにか平時のタイミングで更新する事が出来ました……

割とギリギリでしたが……


さて、次の更新は平時通りの間隔となりまして……4月10日(月)を予定しています!

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