第4話 聖木の館。部屋の奥にあったもの。
「……なんだか、ちょっと血の臭いがするね……」
そう言いながら、周囲を見回すセシリアに、
「私が以前立ちった部屋に比べると、少し臭いは薄い気がするな……」
と、そんな風に返すエレンフィーネ。
「つまり、この部屋では近々で実験が行われていなかった……という事です?」
「あるいは……実験自体は行われていても、血なまぐさい状況にはならなかった……か、そのどちらかだろうな」
メルメメルアに口にした疑問に対し、ラディウスがそう返事をする。
「なんにせよ、詳しく調べてみるといたしましょう」
「そうですね。どうやら奥にも部屋があるようですし……」
メルメメルアはテオドールさんに対し、そこまで言った所で一度言葉を切ると、ラディウスの方を向いてから、改めて続きの言葉を紡いだ。
「ラディウスさん、ここは手分けして手短に調査してしまうのが良い気がするのです」
ラディウスはそのメルメメルアの提案に同意し、
「ああ、まずはそれぞれで気になった物を順番に調べていくとしよう」
と告げて動き始める。
「――うーん……。わけのわからない道具くらいしかないような……」
「うぅむ、たしかにそうだな。……ふむ、ビンに入っている奇妙な溶液は……触れぬ方が良さそうだ」
セシリアとエレンフィーネがそんな事を呟く横を抜け、奥の部屋へと足を踏み入れるラディウス。
「こちらはまるで拷問部屋といった雰囲気ですね……」
「たしかに、そんな感じのするものが並んでいるのです……」
というテオドールとメルメメルアの声を聞きながら、ラディウスが部屋の中を注意深く見回すと、部屋の隅に戸棚が設置されているのが見えた。
「――戸棚があるな……」
と呟きつつ、戸棚へと歩み寄るラディウス。
そして、そのまま戸棚を開けてみると、そこには妙な標本や書類が並んでおり、その書類のひとつを手に取ってみる。
――実験についての記録のようだが……
そう思いつつ、ラディウスは他の書類も確認していく。
――どれもこれも、ロクでもない……外道の所業としか思えないような事ばかりが記述されているな……
「これほどの人数が実験に使われていただなんて、恐ろしい話なのです……」
いつの間にかラディウスの近くへとやってきて、ラディウスと同じように書類を確認していたメルメメルアがそんな風に言う。
「まったくもって、外道としかいいようがないな。アルベリヒは」
そう返した所で、手元の書類に『ブロブのようなスライム化』という一文があるのが目に入るラディウス。
――ん? これはもしや……
そんな風に思い、詳しく書類を確認してみるが、詳細がいまいち分からない。
「――おや?」
棚の下段の引き戸を開け、中を確認していたテオドールが、そう呟きながらガサゴソと何かし始める。
「どうかしましたか?」
「いえ、底板にうっすらと溝がありまして……」
ラディウスにそう答えつつ、底板を注意深く確認していくテオドール。
すると、底板の一部がスライドする事が判明。
早速底板を動かしてみると、そこには辞書のような形状の本が収められていた。
「これは……日記?」
ラディウスがテオドールが手に取ったその本の表紙を見ながらそう呟く。
そこには『ダイアリー』という文字が刻まれており、明らかに誰かの日記であるという事がわかった。
「そのようですね……。中を確認してみましょう」
ラディウスにそう返しつつ、テオドールは日記に記されている内容を確認し始めた……
書類の中身について詳細を記述しようかどうか迷ったのですが、ダークすぎる記述が羅列されるだけで特に意味がない気がしたので、カットしたりしています。
そのお陰(?)で、文字数的にもあまり長くならなかったので丁度よいかな、と……
とまあそんな所でまた次回! ……なのですが、月初の諸々の都合により次の更新は平時よりも1日多く間が空きまして……4月3日(月)を予定しています!




