第6話 此方と彼方。魔法と魔法。
「ま、攻撃を受けるのを眺めていても仕方がない。とりあえず消し飛ばそう。……煌めける光輝なる魔弾、集い集いて万華の暴虐となれ――レイディアントサルヴォッ!」
そう言い放つラディウス。
それは以前、魔軍事変の際にも使われた凄まじい数の光弾を放つ魔法。
まさに弾幕と呼ぶに相応しい圧倒的なまでの光弾がブレスを貫き、ウンゲウェダ・ドラウグへと襲いかかる。
「グガアアアアァァァァアァァァアァァァァァッ!!」
ブレスが中断され、苦悶の咆哮を上げるウンゲウェダ・ドラウグ。
そのまま身動きひとつ取れなくなったウンゲウェダ・ドラウグは、光弾を浴び続け、そして消し飛んでいった。
しかし……
「……?」
その様子を見ていたラディウスは、妙な違和感を覚えた。
――この質量の攻撃を受けて、一瞬で消し飛ばない……? 威力的にはブラインディング・テンペストと同等以上のはずなんだが……
そんな風にラディウスが思考を巡らせた直後、
「今度こそ倒したのだわ?」
と、周囲を見回しながら口にするクレリテ。
「いや、まだだ!」
そうアルフォンスが警告を発しつつ、湖面へと視線を向ける。
「ルオォォォォオォォオオォオオオォォンンンッ!!」
再び咆哮が響き、ウンゲウェダ・ドラウグが水中から飛び出してくる。
――うん? 今まで気に留めていなかったが……
こいつ……水中で咆哮した? そんな事出来るはずが……
……まさか……
「――インサイシブインペール!」
「――フェルヘイメイカー!」
長い始動ワードが不要な――正確にはラディウスの改造によって不要になった――中級の攻撃魔法2つを即座に連続発動させるラディウス。
前者は魔法の槍……というかドリルを飛ばす魔法。
後者は強烈な衝撃波をぶつける魔法だ。
「グガッ!? ガアァッ!?」
直撃を受けたウンゲウェダ・ドラウグだったが、どちらもさほど効いている感じではなかった。
ただ、後者の方が怯み具合が大きく、ダメージもまた大きいように見えた。
――威力に関係なく単発あたりの攻撃範囲の狭い攻撃に強く、攻撃範囲の広い魔法に弱い……つまり、奴という存在を『一撃で大きく削り取る』攻撃に弱いというわけだな。
奴のブレスが魔導障壁を侵食するとかいう時点で妙な気がしたが……やはりそういう事か。
ラディウスはそんな事を考えつつ、
「――アブロゲートアンジュレーション!」
と言い放って、新たな魔法を発動。
ウンゲウェダ・ドラウグを包み込むように、灰色の球状の膜が出現。
「――消え去れ」
そうラディウスが続けて口にした瞬間、灰色の球状の膜が砕け散る。
と同時に、ウンゲウェダ・ドラウグの姿もまた消滅。
そしてそのまま、ウンゲウェダ・ドラウグは完全に沈黙。
どれだけ待っても再び現れる気配がなかった。
「……さ、さっきの魔法は何なのだわ? 奴が一瞬で消え去ったのだわ……」
「詠唱――正確には始動ワード……だっけ? それなしで発動してたから、中級以下の魔法……だよね?」
クレリテとセシリアが、そんな疑問をラディウスに投げかけると、
「あれって、波動を発するタイプの常駐魔法を無力化する魔法……よね?」
と、ラディウスより先にそう口にして首を傾げるルーナ。
その顔は、どうしてあんな魔法で……と言わんばかりである。
直後、会話を聞いていたメルメメルアが、ハッと何かに気づいたように驚きの表情を見せ、そして問う。
「……え? ちょ、ちょっと待つのです。そ、それじゃあ……あのウンゲウェダ・ドラウグは……まさか、常駐魔法……なのです?」
「そういう事だな。ただし……『向こうの世界』からの、だが」
メルメメルアに対して頷きつつ、ラディウスはそんな風に告げた。
なんとも妙なサブタイトルに……
とまあそんな所で、また次回!
次の更新は平時通りの間隔となりまして、2月19日(日)を予定しています!




