第4話 素材を求めて絡まれる。ツタがうねうねと……
「くっ! このっ!」
カルティナは短剣でツタを切ろうとする。
が、その程度で簡単に切れるようなものではなく、ようやく絡みついたツタを1本切り落とした頃には、既にいくつものツタが絡みついていた。
そして、カルティナの足が地面を離れる。
宙吊り状態となったカルティナに更にツタが伸びてきた。それも右胸に。
「ひぃっ!?」
右胸に絡みついたツタに身体がビクッと反応し、声を上げるカルティナ。
更に左胸にもツタが絡みつく。
「あうっ、くふぅっ!?」
「や、やめろっ! 一体何を――っ!?」
抗おうと声を出すも、顔――口を覆うように巻き付いてきたツタのせいでそれも出来なくなった。
「むぐもぐむむぅっ!?」
カルティナは声にならない声を上げながら、必死に抵抗を試みるが全く身動きが取れない。
――逆にツタにあちこちを撫でられたせいなのか!? 全身がなにやら熱く昂揚――いや、火照ってくる……っ!
そんな事を考えていると、腹部にツタが張り付いてきたのを感じ、目――視線をそちらへと向けるカルティナ。
すると、スカートの中に隙間から入りこもうとしているのが見えた。
「っ!? っ!?」
――こ、このまま中に入られたら……さ、さすがに、まずい……っ!
く……っ! だ、だが……どうすれば……っ!? ……ひうっ!?
声を出せないカルティナが心の中で身悶えしつつ慌てていると、ラディウスの声がカルティナの耳に届く。
「フリーズジャベリン・改!」
直後、パキンという音と共に何かがツタに命中した。
と、次の瞬間、パキパキと音を立てながら、もの凄い勢いでツタが凍りついていく。
そうしてあっという間にツタは氷のオブジェへと変わった。
――はぁ……はぁ……。ふう……。どうにかツタの動きが止まったか……
やれやれ助か――冷たっ!? って! 待て待て! 私も凍らせる気かっ!?
安堵から一転、狼狽する事になるカルティナ。
そうこうしている間にも、パキパキという音は止まる事なく鳴り続け、遂にはカルティナをも凍らせようとし始め――た所で、ガシャァァン! というガラスが砕けたような音が響く。
「……すまん、助けるのが遅れた。カルティナを巻き込まずにシャドウソーンだけを倒す手段がなかなかなくてな……どうにかこうにか、この魔法でシャドウソーンを凍らせつつ、カルティナが凍り始める直前で砕いて、魔法効果を強制中断させる……という方法を思いついた」
いつの間にかラディウスがカルティナの目の前に来ており、装着したガントレットでツタを叩き割りながら、実に申し訳なさそうな表情で、謝罪と説明の言葉を口にした。
なお、カルティナの痴態にうっかり見とれていて、動きが遅れた部分もあるのだが、そこは当然のごとく口にしたりはしない。
「い、いや、気にしないでくれ。不用意にシャドウソーンが潜んでいるかもしれない場所に近づいた私が悪い。むしろ、その……へ、変な気分になる前に助けて貰って、感謝だ」
拘束状態から開放されたカルティナが、腕に残ったままの氷の破片を払い落としながら、ラディウスにそう言葉を返す。
軽くとはいえ、凍結の魔法で全身を冷却されたお陰だろうか、どうやら火照りの方も落ち着いたようだ。
「にしても……だ。シャドウソーンというのは、こんな風な変態めいた存在だったのか……。いつもは焼き払ってしまうから気づかなかったぞ……」
カルティナが砕け散ったシャドウソーンに視線を落としながら、呟くように言う。
ラディウスはそれに対して何も答えず、思考を巡らせる。
――はて……? たしかにこいつらはツタで捕縛した人間や生き物から生命力を吸い取る。
だが、あんなエロ触手じみた動きはしなかったはずだ……。突然変異体か何かだったのだろうか……?
まあ、カルティナの方に何らかの原因があるという可能性もなくはないが……現時点では何とも言えないな。
「……とりあえず、周囲にもうこれ以上シャドウソーンはいなそうだ。回収してしまおう」
ラディウスがそう告げると、カルティナが頷く。
クレセントリッパーで倒したシャドウソーン――の残骸をふたりで拾い集め、ついでに凍りつかせたシャドウソーンの残骸も拾っておくラディウス。
そして……
――ちょっと他のシャドウソーンと違いがないかを、調べてみたいからな。
……エ、エロい道具を作るためとかじゃないぞ!?
って……俺は何を考えているんだ……。さっきのカルティナの姿――表情を凝視しすぎて、思考が混乱しているんだろうか……
などという事を心の中で呟きながら、帰路に着くのだった。
カルティナにツタが絡まるシーンですが、実の所、最初はもっと精密で長めな描写していたのですが、凄く年齢制限が掛かるような内容になってしまっていたので、投稿直前でごっそりと直しました……
ノリというのは怖いですね(何)