第2話 彼方と此方。ウンゲウェダ・ドラウグ再び。
「――中央聖塔まで戻ってきたけれど……アルフォンス猊下たちはどこにいるのかしらね?」
中央聖塔の入口でそんな風に言ったルーナに、
「うーん……。とりあえず誰かに聞いてみようか」
と返しつつ、近くにいたシスターに話を聞きに行くセシリア。
「……人が少ない気がするのです」
「そう言われてみると、たしかにそうだな……」
メルメメルアとラディウスがそう口にしつつ周囲を見回していると、
「なんか、ウンゲウェダ・ドラウグが湖に現れたとかで討伐に行ってるみたいだよ」
と、シスターから話を聞いたセシリアが告げた。
「ウンゲウェダ・ドラウグ? それって、メルたちがディグロム洞街に行く途中で倒したんじゃなかったか?」
「はいです。復活して来なかったので、倒しきったと思っていたですが……」
ラディウスの問いかけに対し、頷きながらそう返事をするメルメメルア。
「ううーん……。別の個体か、あるいはなんらかの理由でメルたちが倒した時点では復活出来なかったけど、時間経過で復活出来るようになって復活した……といった所かしらね?」
「ああそうだな。そう考えるのが妥当だと俺も思う」
ルーナの推測に対し、ラディウスは腕を組んでそう返すと、港の方へと続く通路へと視線を向け、
「まあ、人が少ない理由とアルフォンスたちの居場所はわかったし、とりあえず港の方へ行ってみるとするか」
と、言葉を続ける。
「うん。まだ倒していないようだったら、手伝おう!」
「はいです。もう一度倒すのです!」
セシリアとメルメメルアがそんな風に言いながら、港の方へと走り出す。
「……やる気満々って感じね……」
「まあ、一度倒している相手だしな。軽く倒せると考えているんだろう」
「たしかにそうかもしれないわね」
ルーナは呆れた表情でそんな風に言ったかと思うとすぐに、顔をニヤッっとさせ、
「……でも、軽く倒せるわよね?」
と返す。
「無論、軽く倒せるだろうな」
肩をすくめながらラディウスはそう返し、ルーナと共に先行するふたりの後を追うのだった。
◆
「あれ? 戻ってきてる?」
「もう倒したのかしらね?」
港に着いた所で、セシリアとルーナがアルフォンスたちの姿を見つけ、疑問の声を発する。
と、その存在を見つけたらしいクレリテが、
「あ、ラディたち! おーい、なのだわー!」
などと、手を振りながら呼びかける。
自身らへと顔を向けるアルフォンスたちのもとへ歩み寄った所で、そのまま単刀直入に、
「――お疲れ様です。ウンゲウェダ・ドラウグが現れたと聞きましたが、もう討伐し終えた感じですか?」
と、聖女モードで問いかけるセシリア。
周囲にいるラディウスたちとアルフォンスたちとの関係性にあまり詳しくない人々がいると考えてそうしたのだろうが、実の所、全てその辺りを承知している人間しかいなかったりする。
「それが……メルメメルアたちが倒した時と違って――というか、元々はそうだったんだが――倒してもすぐに復活しちまう状態でな……」
そんな風に返事をしてきたアルフォンスに続く形で、
「あの時と同じ様な感じで倒しても駄目だったのだわ。そもそも、どうしてこんな所に現れたのかも謎なのだわ」
と、お手上げだと言わんばかりの表情で両手を左右に広げて首を横に振るクレリテ。
「うーん……。なんでこの湖に現れたのかってのはさっぱりだけど……とりあえず、倒せるかどうかの方は試してみてもいいかもしれないわね。私たちで」
「ですです。私たちの攻撃で倒せたらそれで万々歳なのです。もし倒せなかったとしても、何か別の方法を考えれば良いだけなのです」
ルーナの提案に対して同意の返事をするメルメメルアに続き、ラディウスも、
「ああ。俺はその魔物を直接見た事がないから何とも言い難いし、一度この目で確認してみたい所だな。もしかしたら、何かカラクリがあるのかもしれないし……な」
と、頷きながら告げる。
「それでしたら、旗艦の魔導障壁の修理が終わり次第、再度向かうといたしましょうか」
リゼリッタがそう言いながら船へと顔を向けると、ラディウスが、
「魔導障壁の修理? それだったら俺が手伝おう。あの紋章入りの船でいいのか?」
なんて事を言って、リゼリッタの視線の先にある船を指差す。
「え? あ、はい、あの船です」
「わかった。ちょっと直してくる」
リゼリッタにそう返すなり、船の方へと歩いていくラディウス。
それを目で追いながら、
「……これ、すぐに終わる流れなのだわ」
「それどころか、前より強化されるぜ……きっと」
と、クレリテとアルフォンスが呟いた通り、それからものの数分で修理が終わり、更に以前よりも魔導障壁の強度が上がっていたのだった――
なにやら再び現れましたが……?
といった所でまた次回!
次の更新も平時通りとなりまして、2月6日(月)を予定しています!




