第23話 冥闇の彼方。解析と魔軍の動向。
「……とりあえず一掃し終えた……かな?」
セシリアが注意深く周囲を確認しつつ、そう口にする。
それに対してカルティナが頷きながら、
「うむ。もう『手』は全て消え去ったようだ。……こうして見ると、まるで何も無かったかのような感じだな」
と返して、周囲を見回す。
「――ラディウスさん、解析はどんな感じなのです?」
メルメメルアが得物をストレージにしまいながらそう問いかけると、ラディウスは解析用のガジェットを確認しつつ返事をする。
「ああ、どうにか終わったぞ。やはりあれは『存在自体が魔法』だったようだ」
「それは良かったのです。でも……結局、あの手に妨害されて、カチュアとのリ――んぎゃあっ!」
メルメメルアが発言の途中で叫び声を上げる。
「んん?」
笑みを浮かべながらメルメメルアを見るセシリア。
よく見ると、そのセシリアの手はメルメメルアの尻尾を握っていた。
「……カ、カカ、カチュアを引っ張り出すのに失敗してしまった気がするのです……」
などと言い直すメルメメルアに対してラディウスはどう反応すればいいのか迷った後、何事もなかったかのように対応をするのが良さそうだと考え、
「……まあ、たしかに本来想定していた通りにはいかなかったな」
と、そんな風に返事をした。
「その言い回しから察するに、本来想定していたのとは別の方法でどうにか出来る……といった所かしら?」
「ああその通りだ。もっとも『引っ張り出す為には』準備に時間がかかるけどな」
ルーナの問いかけに頷き、一部を強調しながらそう答えるラディウス。
「それは、もうあの穴を開けた場所を守る必要はない……という事か?」
「そうだな。あの穴を通して送り込むものは送り込んだし、これ以上は守る必要はないな。放置して構わない。ただ、この街に魔軍どもが巣食っている事を考えると、こっちで準備をするのは危険だから、一度法国へ戻った方が良さそうだ」
カルティナの疑問に対してラディウスがそんな風に返事をすると、
「たしかにそうだな。魔軍の方に関しては、テオドール殿の協力して私の方で対応しておく。といっても、あまり大掛かりな事は出来ないだろうけどな」
と、納得の表情で頷いてそう口にするカルティナ。
「テオドールさんと共に動けば大丈夫だとは思うが……慎重にな」
「私のように、想定外の場所に潜んでいる敵と接触してしまわないよう、気をつけて欲しいのです」
ラディウスの言葉に続く形で、若干自虐めいた忠告をするメルメメルア。
「あ、ああ、うん、そう、だな」
どう返事をするべきか迷ったカルティナはそれだけ返すと、
「ともあれ……テオドールさんと話をしなければならないし、私はこれからルーナの家――古き籠手亭に向かうとしよう」
などと若干逃げ気味にそう返し、その場を後にした。
ラディウスがその姿を見えなくなる見送った所で、
「カルティナは帰ったけど……どうするの? 『本題』に入るの?」
なんて事を口にするセシリア。
「さすがに分かっていたか」
「そりゃね」
そんなやり取りをするラディウスとセシリアを見ながら、
「……どういう事なのです?」
と首を傾げるメルメメルア。
「つまり、カチュアとのリンクを復活させる手段は、ほぼ既に完成済みという事よ」
「な、なるほど……なのです」
ルーナの説明を聞き納得の表情をみせるメルメメルア。
しかしすぐに、
「って……ええっ!? ほ、ほぼ完成済みなのです!?」
という驚きの声を上げてラディウスの方を見る。
それに対してラディウスは、
「まあそうだな。ほぼ完成済みと言っていいだろう」
と、頷いてみせるのだった。
……想定以上に長くなってしまったので、一度ここで区切りました……
その為、次の話が今節(冥闇の彼方)のラストになります……
次の更新ですが、平時通りの間隔となりまして……1月27日(金)を予定しています。
……最初は明後日と思ったのですが、次節の展開が妙に迂遠な所があった為、展開を調整している為、明後日更新してしまうと、次の更新までの間が空いてしまうもので……
なお、次節の序盤は若干遠回りな部分が残ってしまいそうですが、そこから先は一直線に進むように調整しているので、これまでよりも物語全体のスピード感が少し上がるかなと思います。
※追記
誤字を修正しました。




