第22話 冥闇の彼方。黒い手という存在。
「――ソーサリーバレット・改！」
「――エアリアルインパクト・改！」
「――スパークソーン・改！」
「――シャドウファング・改！」
「――フロストサーペント・改！」
各々が下位の魔法――といっても、ラディウスによって改造されている為、どれも威力は桁違いだったりする――や魔法弾を連射し、『手』の数を凄まじい勢いで減らしていく。
「こいつら、物理的な攻撃は効かないくせに、魔法にはとことん弱いね！」
出力を絞ったビームを放ちながらセシリアが言うと、
「――ダークブラスト・改。うむ、たしかに下位の魔法や魔法弾でも一撃で消し飛ぶな。まあ、下位と言いつつ威力は凄まじいのだが……」
と、魔法を放ちながら返事をするカルティナ。
「まあ……たしかにね。でも、それを差し引いても少し脆すぎじゃない？ だって、威力をかなり落としたビームでも倒せるよ？」
そうセシリアが言うと、メルメメルアがクロスボウ型のガジェットで魔法のボルトを発射しながら、「たしかにその通りなのです」と同意する。
そして、魔法のボルトが命中し、霧散していく『手』を見ながら、
「それに……こうして倒すと、一瞬ノイズが走ったような感じになってから霧散していくのが、どうにも不自然なのです……」
「ノイズ？」
「ノイズと言っても色々あるんだが……今回の場合は、魔法や魔法弾による攻撃が当たった直後に、四角いブロックみたいなのが一瞬大量に出るだろ？ アレの事だ」
首を傾げるルーナに対してそう説明するラディウス。
「なるほど、これをノイズっていうのね」
ルーナは自身の攻撃が命中し、『手』生じたノイズを見ながら納得の表情でそう返す。
そして、更にもう１体の『手』へと攻撃しつつ、
「うーん……。この奇妙な感じからすると……もしかしてあいつらって、魔法を食らうとその存在を保てなくなっているんじゃないかしら……」
と、そんな推測を口にした。
「――ヒートチェーン・改！ ……ああ、まるで魔法で魔法を相殺した時のような……そんな感じだな。おそらくだが、こいつら自体が魔法――いや『呪詛』の産物なのだろう」
ラディウスもまた自身の攻撃魔法で消し飛ぶ『手』を眺めつつ、ルーナの発言に頷きながらそう推測する。
それに対して、メルメメルアは手をじっと見つめ、
「……言われてみると、『呪物を呪物たらしめる魔法』に似ている気がするのです……。しかもあれは、何かを『拘束する』用途があるようなのです」
なんて事を言った。
「よっと！ カチュアを閉じ込めている空間自体が魔法の産物であるのなら、そこから這い出してくるのも魔法……という事なのかしらね？」
魔法弾で『手』を吹き飛ばしながらそんな疑問を口にしたルーナに対し頷くラディウス。
「ああ、そんな所じゃないかと俺も思う」
――つまり……こいつらはカチュアを『亜空間に拘束している魔法』の一端である……という可能性が高いわけか……
ラディウスはそう考えると、
「構成を解析しておいた方が良さそうだな」
と口にして、攻撃を中断して解析用のガジェットを取り出す。
それは、『手』があまりにも脆く希薄な存在ゆえに、今すぐに解析しないと自然消滅してしまう可能性もあると判断した為だった。
「――俺は解析に集中する。すまんが、残っている奴らの始末はみんなに任せた」
「了解した！ まあ、もう半分以上消し飛ばしているし、余裕であろう」
「というか、勝手に消滅していく奴もいるしね」
ラディウスに対してカルティナとセシリアがそんな風に言いながら、残っている『手』を蹴散らしていく。
――勝手に消滅していく……か。
やはりあの『手』は、亜空間の外に出ると、そう長くその存在を保つ事が出来ないみたいだな。予想通り、魔法そのものな存在……というわけか。
自然消滅してしまう可能性があると判断し、解析を優先したのは正解だったな。
ラディウスはそんな事を考えながら、『手』の構成――術式の解析を進めるのだった――
想定では、次の話で『冥闇の彼方』は終わります。
次の次の話からは、『向こうの世界』の話が本格的に進む予定です。
もっとも、冒頭はカチュアの話が残るかもしれませんが……
とまあそんな感じでまた次回！
次の更新は平時通りの間隔となりまして、1月24日(火)を予定しています！
