第21話 冥闇の彼方。打ち込まれた楔。
「よし、それじゃあ発動させるぞ!」
ラディウスがそう告げたその後ろでは、セシリアたちが既に臨戦態勢に入っており、「いつでも大丈夫だよ」と、セシリアが代表するように答える。
その言葉を聞いたラディウスが速やかにガジェットを起動。
と、その直後、まるで塔の様な構造をした多重魔法陣が『残滓』を取り囲むように――いや、『残滓』を飲み込むようにして出現する。
「お、おお……。なんだか知らないがこれは凄いな……」
なんていう感嘆の声をカルティナが発した次の瞬間、全ての魔法陣が鳴動。
魔法陣から光の鎖が一斉に『残滓』へと伸びていき、『残滓』へと突き刺さる。
「鎖……?」
メルメメルアが首を傾げた直後、鎖が突き刺さった所に小さな穴が生じる。
そして、それと同時に突き刺さっている鎖が、今度はその穴をこじ開けるように動き始める。
その様子を眺めていたセシリアが、
「なにがなんだかさっぱりだけど、凄い魔法だというのだけは理解したよ。うん」
と、そんな風に言うと、カルティナがそれに同意するように頷いてみせる。
「もしかして、あの穴の向こうにカチュアが囚われているです?」
鎖の――魔法の『用途』を視たメルメメルアが、その情報から推測を述べる。
ラディウスはそれに対し、「その通りだ」と同意の言葉を返すと、そのままルーナの方へと顔を向け、「ルーナ!」と呼びかけた。
「任せてっ!」
事前に話を聞いていたルーナはそう返すと、銃型ガジェットを構えて穴に狙いを定める。
そして、トリガーが2連続で引かれ、銃口から勢いよくふたつの魔法弾が発射された。
魔法弾が穴へと吸い込まれ……そして消えていくのを見ながら、
「これで大丈夫なのよね?」
と、そう問いかけるルーナ。
「ああ。今ので中に一種の『シグナルサイン』と『アンカー』の両方を打ち込んだような状態だ。これで色々と向こう側を解析する事が出来るし、乗り込む時の『目印』にも出来る」
ラディウスが頷いてそう返事をした直後、セシリアが聖剣を構え、
「何かが飛び出してくるよっ!」
という警告を発した。
直後、黒い『手』のような形状の『何か』が穴から飛び出し、床に落ちる。
「黒い……手? いや、スライムの類か? 攻撃が効かない……とかだと困るが……」
飛び出して来た『手』が床に落ちたのを見ながらそんな事を呟き、銃――魔法弾でそれを撃ち抜いてみるラディウス。
すると、『手』はあっさりと霧散し、消滅した。
「攻撃が効く上に脆い……? これは一体……」
なんて事を思った直後、『手』が穴から次々に飛び出してくる。
「ちょっ! いきなり増えすぎ!」
「これはまた多いな……だが、動きは遅い。銃斧でなくても、剣で十分対処可能だ!」
セシリアに続く形でそんな事を言い放ちつつ、剣を振るうカルティナ。
だが、カルティナの剣で斬った『手』は再びくっついて全く違う形状――『山』という漢字のような形へと変化した。
「復元……!?」
驚きの声を発するルーナに続くようにして、ルーナと同じく驚きの表情で、
「こいつ……まさか、魔法じゃないと倒せないのか!?」
と、そんな推測を口にするカルティナ。
「まずは穴を閉じる!」
穴に視線を向けたまま、そう告げるラディウス。
直後、ラディウスが展開していた術式が一気に崩壊し、穴が消滅。
穴が消滅したことで、新たに『手』が飛び出してくる事はなくなった。
「魔法というか、魔法か魔法に匹敵する物――魔法弾とかじゃないと駄目みたいだな」
ラディウスがそう言いながら銃で間近にいた『手』を消し飛ばすと、
「幸い、魔法や魔法弾なら全員使えるけど……」
「さすがにここじゃ上位の魔法は使えないわね……。建物を破壊してしまうわ」
「そうだな。下位の魔法か魔法弾でチマチマふっ飛ばしていくしかなさそうだ」
「それなら片っ端から倒して倒して倒しまくるのです!」
なんて事を円陣を組むような形で固まりながら言い放ち、周囲を囲みつつある『手』を見据えるセシリアたち。
「よし、一気に殲滅するぞ! 各自、正面方向にだけ集中しろ!」
『了解!』
ラディウスの指示に全員が同時にそう答え、それぞれが異なる攻撃魔法を発動させ始めた――
『冥闇の彼方』も大分長くなっていますが、もう少しで終わります……!
とまあそんな所でまた次回。
次の更新は平時通りの間隔となりまして、1月21日(土)を予定しています!




