第20話 冥闇の彼方。キュッと全員集合。
メルメメルアがどう答えるべきか悩んでいると、
「――聖女的な極秘の情報だけど……実は私、死ぬと少し前に時間が戻るんだよね」
なんて事をサラッとセシリアが告げる。
それを聞いたカルティナは、「なんと!? そんな力が……!?」と驚いた後、
「いや、だが……『剣の聖女』ともなれば、そういった異能のひとつやふたつあってもおかしくはない……か」
と、顎に手を当てながらそんな事を呟いて、やや自分に言い聞かせるような形で納得した。
「そうそう。だけど、極秘だからそこの所よろしく。メルが口を滑らせたのはまあ……お仕置きしておこうか、うん。軽くキュッとね。キュッと」
セシリアは笑顔でそう言いながら、スッとメルメメルアの後ろに回り込み……
「キ、キュッとはいった――」
恐る恐る問おうとしたメルメメルアの尻尾を、まるで雑巾を絞るかの如くキュッと捻った。
「――いっぎゃぁぁぁあああぁぁぁああぁぁあぁぁぁっ!?」
セシリアが手を離すと、メルメメルアは床に倒れ込んでピクピクしながら、
「ぜ、全然……軽くない……のです……」
なんて事を呟く。
「なんだか凄い声が聞こえたんだけど……って、カルティナも来てたのね? あと、なんでメルは床でピクピクしてるのよ? さっきの声、メルよね?」
ラディウスと一緒にやってきたルーナがそう問いかけると、
「い、色々あったのです……」
と、ピクピクしたまま返すメルメメルア。
「ま、まあそうだな。色々あったな。えっと……そ、そう、魔軍幻将の副官とかいう奴が襲撃してきたりな」
何故かセシリアとメルメメルアをチラチラと見ながらそんな事を言うカルティナに、
「魔軍幻将の副官……? そんなものが現れたのか?」
と問い返すラディウス。
「ああ。まあ、大半はセシリアひとりで相手して、私は最後の最後で手助けした程度だがな」
「でも、あの手助けがなかったら、正直危なかったから助かったよ」
カルティナとセシリアがそんな風に言うと、
「まさか、そのレベルの奴が現れるとは想定外だったな……。もうひとりくらい守りに回すべきだったか……」
「まあ、そういう意味じゃカルティナが来てくれて助かったわね」
と、そう返すラディウスとルーナ。
「ああそうだな。なんだか良くわからんが来てくれて助かった。それと、セシリアもそのレベルの奴を相手に単独で抑え込むなんてさすがだな」
カルティナとセシリアを交互に見てそんな風に言うラディウス。
「フッフッフー、戦闘なら私が最強だからね! これからもバンバン任せていいよ!」
何故か得意げな表情でそう答えるセシリア。
しかし、その顔はなにやら少し朱に染まっていた。
「……結構な負傷をしていた気がするが……」
カルティナがそんな風に呟くと、セシリアがカルティナに視線を向ける。
その視線の意図を悟ったカルティナが、
「あ、いや、まあ……レストアであっさり治る程度ではあったが」
と、そんな風に付け加えた。
「ラディのレストアは強力だしね」
などと、こちらも意図を悟ったらしいルーナが更に付け加える。
そしてそのまま、
「で、カルティナはどうしてここに?」
と、カルティナの方を見て話題を振った。
それは、セシリアの負傷の話を敢えてこれ以上続けさせない為だ。
「いやなに、私は街中で修道服姿のメルを見かけてな。なぜ変装しているのかと思って追跡してきただけさ」
「なるほど……。まあたしかに修道服姿で歩いていたらそう感じるか」
ラディウスがカルティナの説明に頷きつつそう呟くように言う。
「その経緯もあって、私が副官を聖堂内に招き入れてしまった可能性があるのではないか……と、最初は思ったですが……」
床でピクピクとしていた状態から復活したメルメメルアが、立ち上がりながらそんな風に口にすると、
「――それはないと私が否定したのだ。尾行は私以外いなかったのでな」
と、そんな風に説明を引き継ぐ形で告げるカルティナ。
「ふーむ。つまり……その副官とやらはその前から忍び込んでいたか、あるいは別のルートで忍び込んで来たか……か。どちらにせよ、あまり時間をかけると厄介な事になりそうだな。速やかに動くとするか」
「ん? そんな風に言うって事は、ガジェットの方は完成したの? いやまあ、ここに来たって時点でそうなんだろうとは思うけど」
「ああ、完成した。あとはこいつを使うだけだが……何が起きるか未知数なのが問題だな。『引きずり込んだ存在』が現れる可能性もある。警戒――いや、戦闘準備だけはしておいてくれ」
セシリアに対してそう言いながら、そこにいる全員を見回すラディウス。
それに対して皆は無言で頷いてみせた――
なんだか妙なサブタイトルに……
ま、まあそんな所でまた次回!
次の更新も平時通りの間隔となりまして、1月18日(水)を予定しています!




