第3話 素材を求めて進む。浮遊島を。
マッドスラッグの粘液を確保し終えたふたりは、続けてシャドウソーンを狩るために宙に浮いている島へと続く階段を登る。
「それにしても、階段まであるとは、随分としっかり道が整備されているんだな……。これはどこが管理しているんだ?」
「冒険者ギルドだな。この先にあるガーディマ遺跡は非常に複雑で広大だからな。発見されてから大分経つが、未だに未踏破区域が数多く存在している。ゆえに新たに見つかる遺物も多い。冒険者ギルドとしては、どんどん探索してもらいたいのだろう」
「なるほど……。まあ、冒険者ギルドは近隣住民の依頼だけじゃなくて、そういう遺跡の探索に関連するあれこれでも利益を得ているからな」
と、時を遡る前の記憶を思い出しながら言うラディウス。
あれこれ――発見されたガジェットやその他の遺物を買い取って、高く売ったりする事もそうだが、大体の遺跡は探索が進むと国から報奨金がギルドに出る。
というのも、どこの国も古代遺跡から発見される高度な技術や道具は、自国の発展のために有用であり、喉から手が出る程に欲しい物なので、報奨金を与える事で、そういった技術や道具の情報、あるいは現物をギルドから吸い上げる仕組みを取っているというわけだ。
「というか……遺跡探索関連の方が利益が出るそうだぞ。国から出る報奨金はかなりの額らしいからな」
「へぇ、そうなのか……。そりゃ力を入れて整備するはずだ」
と、納得しながら階段の先を見る。
「んー、シャドウソーンは少し道から外れた場所にいるな。しかも結構固まっている」
「さっきも言った通り、遺跡への道中――つまり、最短ルート上にいるような奴は即座に狩られるからな。逆に外れた場所というのは、あえて踏み込む者も少ない。それゆえに繁殖するのだろう」
「ま、シャドウソーンは、適度な湿度と日の当たらない――寄生できる木さえあれば、繁殖するのに困らないような奴らだからな」
ラディウスとカルティナはそんな事を言いながら、道を外れ、浮遊島の端――木々が多く立ち並ぶ場所へとやって来た。
「あそこの木だな」
ラディウスがそう言って指をさすと、カルティナはその指の示す先にある木をじっと見つめて、
「ふむ、たしかにこの青々とした木に似つかわしくないような、真っ黒いツタが見えるな。シャドウソーンが寄生しているのは間違いないようだ」
と、言った。
「んじゃま、早速……」
ラディウスはそんな事を呟きつつ、懐中時計を取り出す。
それは先刻、ルーナを抱きかかえた時に使った物だ。
「――クレセントリッパー・改!」
三日月状の銀色の衝撃波がラディウスの正面に次々に生み出され、それらがランダムな軌道を描きながらも真っ黒いツタへと殺到するように飛翔。
程なくして、細切れになった真っ黒いツタがボトボトと地面に落ちてくる。
「よし、ちょうどいい長さになったな。あとは回収するだけだな」
そんな事を言うラディウスに対し、カルティナは呆れた声で、
「先程の魔法といいこれといい、実に凄まじいな……。……まあ、今更か」
と言いつつ、地面に落ちたツタ――シャドウソーンを回収しようと近づく。
「……って!?」
突然、新たな1体が姿を現した。
――直前までマリスディテクターに反応がなかったのに、なぜ突然……!?
ラディウスの頭に、そんな疑問が湧いてきたが、今はそれを追求している場合ではない。
「待て! まだいる!」
ラディウスは慌てて声を大にして、カルティナへと警告の言葉を投げる。
「え?」
呼び止めるラディウスの方へ顔を向けた直後、カルティナの身体にツタが伸びてきて纏わり付いた――
まあ、なんというかアレですね。お約束的なノリという奴です。