第15話 冥闇の彼方。変えざるもの。
「変えたい……過去……」
問われたセシリアが呟く。
――お父さんが死んだのは……ううん、もっと言えば、お母さんが死んだのも、その『本来の歴史』から外れてしまったせい?
歴史を正せば、それもなかった事になる? 変えられる?
そんな事を考え、少し心が揺らぐセシリア。
しかし同時に、もし歴史を変えたらラディウスと出会う事は出来たのだろうか? ルーナやメルたちと知り合う事は出来たのだろうか? という考えも頭に浮かんでくる。
歴史を正せば別の道を歩む事になる。そうしたらこれまで経験したような出来事は起きないだろう。それはつまり、出会う事も知り合う事もないという事になる。
と、そこまで考えた所でセシリアは口を開く。
「――たしかに……あるよ。変えたい過去。変えられるなら変えたいって思えるような、ね。でも……さ。それと同時に『変えてしまっては困る過去』もあるんだよね。だからまあ……ここは、ノーって返事をさせて貰う……よっ!」
言うが早いか、一気にレミィへと接近し聖剣を振るうセシリア。
それを回避しながら、
「うおっと! ――やれやれ……。この話をしてノーって言える奴がいるなんて……なっ!」
と、ため息交じりに言葉を返すレミィ。
そして同時に回し蹴りによる反撃を繰り出した。
それを予想していたセシリアは横へ飛んで回避。更に反撃を仕掛ける。
「ノーって言えるから、敵対しているんだと思う、よっ!」
「なるほど、ある意味そいつは真理かもしれねぇ、なっ!」
そんな事を言い合いながら、激しい攻防を繰り広げていくふたり。
しかし、徐々にセシリアの方が後退していく。
それは、どうしても大振りになる聖剣を使うセシリアに対して、小刻みに蹴りと短剣を切り替えながら攻撃出来るレミィの方が手数が多い事もあり、セシリアの方が、防御と回避を行う回数がどうしても増えてしまうせいだった。
「おやおやぁ? 徐々に押されてねぇかぁ?」
「数が多くて面倒なだけだよ。攻撃が軽すぎて防ぐのは余裕だしね!」
レミィの挑発に対して挑発を返すセシリア。
どっちの挑発も相手に効いていない……と思いきや、レミィには効いていたらしく、少し後退したと思った直後、セシリアに対して一気に猛攻を仕掛ける。
「くっ!」
「はっはぁっ! これでも軽いって言えるかぁ?」
レミィの猛攻に防戦一方になるセシリア。
しかし、そんな中でもどうにか反撃を繰り出す。
だがその反撃は振りが遅い。レミィに攻撃が到達するよりも先に、レミィであればセシリアにカウンターを入れられる程のスピードだった。
ゆえにレミィは反撃を回避せずにカウンターを狙う。
――刹那、聖剣がチカッと青白い光を発する。
「……!?」
「ぐぅっ!?」
攻撃を食らって吹っ飛んだのはレミィの方だった。
とはいえ、一瞬の判断で危険を察して回避行動を取った為、致命傷になっていない。
――肩を貫いただけ……かな? あの状況からその程度で済ませるなんてね……
とはいえ、肩のダメージは十分過ぎる程に大きいはず。
あっちの腕はまともに使えないと考えていいと思う……
レミィの状況を確認しつつ、そう推測するセシリア。
それに対する形で、
「なん……だ?」
と、肩に空いた穴から血を流しつつ呻くレミィ。
――ここで一気に仕掛ける!
そう心の中で叫んだセシリアがビームを連続発射。
レミィへとビームが殺到する。
「ちぃっ! これ……かっ!」
ビームを回避しつつ、自身を貫いたものの正体を理解するレミィ。
数の多さとその速度に数発回避し損ねるも、いずれも軽傷だった。
少しでも回避しやすくする為に、レミィは大きく後退して距離を取りながら呟く。
「ただの魔法とは……違う……。これは一体……なんなんだ……? いや、この感じ……本来の歴史の……? であれば、あの剣はそちらの……?」
――何か勘違いしているっぽいけど……。まあ、このまま勘違いさせておいた方が良いよね、きっと。
セシリアはレミィの呟きに対してそんな風に考え、ラディウスが聖剣を改造したという事は黙っておく事にした。
……年内に決着をつけたかったのですが、無理でした…… orz
どうにも収まらず……
そんなわけで年明けへ持ち越しです。
次の更新は年末年始の都合で色々と厳しい為、やや不確定になりまして……1月1日(月)か1月2日(日)のどちらかの予定です!
……出来れば1日に更新したい所ではあるのですが、難しいかもしれません……




