第14話 冥闇の彼方。歴史を正す者たち。
「とりゃぁっ!」
わざわざ掛け声を発しながら聖剣を振るうセシリア。
「おっと。そいつをまともに食らうのは、さすがにシャレにならねぇな」
こちらもわざわざそんな事を言いながら、後方へ大きく飛び退き、聖剣を回避するレミィ。
――短剣は投げて来なかった……っと。
敢えて回避に専念したように思わせるって所かな?
「じゃあ、食らって貰わないと……ねっ!」
セシリアは言い終えると同時に、再度間合いを詰める。
振るう、避ける、振るう、避ける、振るう、避ける。
一方的にセシリアが攻撃しているような状況だが、レミィに押されているような様子はなく、むしろ余裕そうな表情をしていたりする。
――そろそろ反撃してきても良いと思うんだけどなぁ?
そんな風にセシリアが思った直後、レミィがくるりと身体を捻り、回し蹴りを放つ。
だが、動作が大振りなせいか動きがやや遅い。
セシリアは余裕でそれを回避……しようとして――
――違う! そうじゃない! 回避を誘ってきてる!
そう判断し、即座に聖剣を横にして障壁魔法を発動。
それで回し蹴りを受け止める格好になる。
と、その直後、強烈な風圧と共に高熱が顔に当たる。
蹴りと共に、その蹴りの軌道をなぞるようにして、紅蓮の炎が発生したのだ。
「おっと、防御してくるとはな。てっきり回避して食らってくれるかと思ったんだがな」
「いやだなぁ、あんな見え見えな誘いに引っ掛かるわけないってば」
「なるほど……。さすがは、ウチらの妨害をしてきただけはあるって感じだな」
「一番最初に仕掛けて来たのはそっち――と繋がりのあったヴィンスレイドの方だけどね?」
「あー、やっぱりアイツが発端か……。あんな『違う歴史から来た』とかいう得体のしれない奴なんかと繋がりを持とうとすっから……」
セシリアの発言に対し、サラッとそんな事を口走ってくるレミィ。
「……『違う歴史から来た』……?」
そうセシリアは問いかけるも、レミィはそれには反応せずに言葉を続ける。
「ま、『歴史を正す』ウチらとしては、放ってはおけない存在だってのは間違いねぇからしょうがなかったんだけどよ」
――歴史を正す? 違う歴史ってのは、まあ……『向こう側の世界』である事は、さすがの私でも分かるけど、歴史を正すってのはどういう意味なんだろう?
……気にはなるけど、聞いた所で話してはくれないだろうねぇ……
レミィの言葉を聞きながら、セシリアはそんな思考を巡らせる。
そして、
「……歴史を正すってどういう事? ビブリオ・マギアスは何をしようとしているの?」
と、とりあえず問いかけた。
「それを知らずに邪魔をしてきたのか?」
やれやれと言わんばかりの口調でそんな風に言った後、ふむ……と小さく呟いてから、
「時を渡る力……。それを用いて歴史を変えた者――いや、変えた者たちがいる。この世界はそうした歴史の改変の積み重ねによって『こうなっている』のさ」
などと、想定外にきっちり説明してくるレミィ。
――あ、説明する気あるんだ。
それならまあ、一応ちゃんと聞くとしようか。うん。
セシリアがそんな事を考えている間にもレミィの話は続く。
「――そして、アタシたちはそれを『元に戻す』ために動いているんだ。そう……。アタシは……アタシたちは、『こうなるはずじゃなかった』んだよ……。だから『歴史を正して』……『元に戻して』……『本来の姿』を取り戻す!」
レミィはそう語った後、一度息を吐いてからセシリアの方を見て、
「……なあ、聖女セシリア。アンタにも『変えたい過去』があるんじゃねぇか? それはきっと『本来なら起こらなかった出来事』だと思うぜ? それを『起こらなかった正しい歴史の流れ』に戻したいと思わねぇか?」
と、問いかけた――
何やら語ってきていますね……?
ここら辺の話は、何気に向こう側の世界の『ゼグナム』の滅亡や『皇帝』の謎といった部分にも繋がってきたりします。
また同時に、先日ちらっと記載した『王国の中枢』や『諜報部』といった所にも繋がります。
王国の中枢も帝国の中枢もどちらも『謎に包まれすぎている』という辺りが実は……
といった所でまた次回!
次の更新は平時通りの更新間隔となりまして、12月29日(木)を予定しています!
ただ、その次は年末年始の都合で、平時より間隔が空く事になりそうです……




