第11話 冥闇の彼方。戻ってきたメルメメルア。
「――というわけで、何とか撒いて来たのです……。ルティカさんたちには感謝なのです」
「え? あの駐屯騎士、ビブリオ・マギアス……というか、幻兵だったの? それはさすがに私も想定外だわ……。あの人、かなり昔からいるし……」
街であった出来事を話し終えたメルメメルアに、ルーナが驚きの表情でそんな風に言う。
「ま、ヴィンスレイドが奴らと繋がりがあった事を考えると、あの男が伯爵として封ぜられた頃から、ビブリオ・マギアスがこの国に入り込む為の工作をし始めていたんだろうな。思った以上に厄介な連中だ」
ラディウスはそう口にしながら、なんだか『草』と呼ばれる忍者の存在を思い出すな……と、そんな風に思う。
「そうね……。そんな前から動いていたとかとんでもないわね……。でもまあ……なんにせよ、メルが無事で良かったわ」
「そうだな。それに……結果的に、連中への撹乱に繋がりそうではあるしな」
「あー、なるほど……。『街中で何かを探っている者がいる』と思わせておけば、こっちに目が向く事は、ほとんどなさそうね」
「そういう事だ。多分、テオドールさんたちが良い感じに工作してくれるだろうしな。……ただ、既に聖堂内へ入り込んでいる奴がいる可能性に関しては、依然として払拭出来ていないんだけどな……」
「そっちは、セシリアに何とかして貰うしかないわね。1人か2人なら入り込んでいたとしても大丈夫でしょ」
「それはまあそうだな。今言った通り、メルの行動によって撹乱されてくれれば、こっちに追加の人員を送ってくるって事はないだろうだし」
「そういう意味では、バレて良かった気もするですが……でも、いきなり『ハズレ』を引くのは、もう勘弁なのです……。結局、どこで幻兵と接触したのか、誰が接触したのかが分からずじまいなのです……」
ラディウスとルーナの話を聞いていたメルメメルアが、そんな風にため息交じりに言って肩を落とす。
「え、ええっと、その……こればっかりはもう、凄い運が悪かったとしか言いようがないかなぁ……。普通、そんなピンポイントで引き当てたりしないし……」
「そうだな。今回の件はさすがにどうしようもないな……。とはいえ、これでガジェットの完成までの時間はバッチリ稼げそうだし、ある意味『当たり』だったと思う……ぞ? うん」
ルーナに続くようにして、慰めるように言うラディウス。
もっとも、本当に『当たり』なのか? と思ってしまい、少し歯切れの悪い言い回しになってしまったが。
「……ま、まあ……そ、そうかもしれない……のです?」
言われたメルメメルアの方も、いまいち頷ききれなかったらしく、そんな風に返事をした。
そして、この話をこのまま続けるのもどうなのかと思ったのか、
「……って、そう言えばなのですが……『向こう側』が完全に放置しているような状態になってしまっている事もあって、全員がバラバラの状態なので、こちら側で何かあった時に向こう側で相談したり対処したりする手段が取れない状況なのが、結構危険だと思ったです」
と、そんな風に話題を変えた。
「あー、そうだな……。ただまあ、元々あっちをどうにかするのに必要なガジェットは、カチュアとリンクを繋ぎ直す為のガジェットを応用する事でサクッといけそうな感じだから、一気に片付けられそうではあるんだけどな」
「そ、そうなのです?」
ラディウスの返答を聞き、驚くメルメメルア。
そんなメルメメルアに対し、ルーナが問う。
「ええ、そうなのよ。というわけで、メルもちょっと手伝ってくれないかしら? メルもある程度はガジェットを作る技術あるわよね?」
「あ、はいです。ラディウスさんから貰ったガジェットを個人的に調べたりして、以前よりは理解度が上がっているのです。まあ……おふたりには遠く及ばない気がするので、手伝えるかどうかはわからないのですが……」
「大丈夫、それなりにあれば十分だから。というか……何をどうやったら爆発させるのか理解が出来ないセシリアやクレリテよりは、確実に役に立つと思うし……」
メルメメルアの返答に対し、そんな風にちょっとため息をつきながら返すルーナ。
その言葉にメルメメルアは、「あ、あはは……」と頬を掻きながら苦笑をする。
――え、えっと……。それはまあその……こう言ってはなんですが……たしかにその通りな気が私もするのです……
なんて事を思いながら――
良いサブタイトルが思いつかず、ド直球な名称に……
とまあそんな所でまた次回!
次の更新は、平時通りの間隔となりまして……12月19日(月)を予定しています!




