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第2話 素材を求めて狙う。狩る……いや、釣る?

「お、いたいた」

 そう言ったラディウスの視線の先には、泥のようなものに覆われた、ラディウスと同じくらいの大きさがあるナメクジ――マッドスラッグの姿があった。


 なお、泥のようなものはマッドスラッグの粘液であり、かなりの弾力性を有しており、外部からの衝撃を吸収する効果がある。

 要するに、マッドスラッグは粘液を自身の表面に纏わせる事で鎧としているというわけだ。


 そんなマッドスラッグへと顔を向けながら、カルティナが腕を組んで言う。 

「たしかにいるが……完全に沼地の中だな。近くにフィクル蓮もない……か。どうやってあそこまで行くつもりなのだ?」

 

「ん? あそこまで行く必要はないぞ」

「うん? ならばどうやって?」

 カルティナはラディウスの問いに首を傾げ、再び問う。

 

「こうすればいい」

 そう言って鞄からガントレットを取り出すラディウス。

 それは、カラミティエイビスと遭遇した時に使った物だ。

 

「ガントレット? ……いや、ガントレット型のガジェットか」

 ガントレットを装着したラディウスは、カルティナのその言葉を聞きながら、マッドスラッグの方へと手を突き出す。そして、

「正解だ。アストラルアンカー・改!」

 と、言い放ち、アストラルアンカーの魔法を発動した。

 

「……っ!?」

 ガントレットから放たれた、十を超える青く光る錨のついた鎖――アンカーを目の当たりにしたカルティナは、驚きのあまり絶句。

 

 ――な、なんという魔法だ……

 過去に何度か冒険者としてパーティを組んだ時に、仲間が使った魔法を見た事があるが、こんな物は見た事も聞いた事もないぞ……!?


 カルティナが心の中でそんな事を思っている間にも、放たれたアンカーは飛翔を続け、程なくして全てのアンカーがマッドスラッグに突き刺さった。

 

「よし、命中!」

 そうラディウスが言った直後、マッドスラッグは全身を大きく震わせ暴れ始めるが、その程度で抜けるアンカーではない。

 程なくしてマッドスラッグは力尽き、完全に動きを止めた。


「よっ、と!」

 そんな掛け声と共に、ラディウスが突き出していた手を手前に引く。

 と、アンカーがガントレットへ巻き上げられるようにして収縮していき、それに合わせてマッドスラッグも、ラディウスのもとへと引っ張られてくる。

 

 その光景にカルティナは、

「ま、まるで釣りだな……」

 と、唖然とした表情で呟くように言う。

 

「言われてみると、たしかにそんな感じだな」

 なんて言葉を返しながら、ラディウスはマッドスラッグの死骸に顔を向け、

「――さて、粘液を採取しないとな……手伝ってくれないか?」

 と、言葉を続けた。

 

「あ、ああ、もちろん手伝おう。たしか……この全身を覆っている泥のような奴が全て粘液なのだったよな?」

「その通りだ。剣でもナイフでもなんでもいいが、刃の付いた物を使って、削ぎ落とす感じでボトルに詰めてくれ」

 そう告げてカルティナにボトルを渡すラディウス。

 

「了解した」

 カルティナはボトルを受け取ると、腰のダガーホルダーから短剣を抜き、マッドスラッグの全身を覆う泥――泥状の粘液を採取し始める。

 

「お? なかなか手慣れているな」

 カルティナの危なげない作業を見ながら、そう口にするラディウス。


 マッドスラッグの粘液は、刃の入れ方によっては、その弾力性に阻害されて上手く削げなかったりするのだが、カルティナはやすやすと削いでいた。

 それはつまり、過去に何度も同じ作業をやった経験があるという事だ。

 

「まあ、こういった素材は常に売りにくる冒険者がいるというわけではないからな。私が冒険者ギルドでテンポラリ・パーティを組んで手に入れる事もあるんだ」

「テンポラリ・パーティ……単独行動を主とする複数の冒険者が、特定の目的のためにその場限りのパーティを組む事……だったか?」

「ああ、その通りだ。私にはあの店があるからな。しっかりとしたパーティを組んでも、冒険者として活動し続けるのは難しい。だから、そういう方法を取るのだ」

「なるほど……たしかにそうだな」


 ――俺も同じようにテンポラリ・パーティを組めるようにしておいた方が、色々と都合が良いかもしれないな……

 近い内に冒険者ギルドに行って、冒険者登録しておくか。


 ラディウスはカルティナの話を聞き、そんな事を考えるのだった――

第1章第1節の最後に各種単位のリストを追加しました!

(特に見なくても、ある程度わかるようにはしていますが……)

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