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第8話 冥闇の彼方。追う者、逃げる者。

 ――迫ってきている6人を倒すだけなら簡単なのです。

 ですが、この状況をどこかで監視している者……そして、例の駐屯騎士と店主とやらも倒すか撒くかしないと駄目なのは間違いないのです。

 派手めな魔法を放って、街の人々の注意を惹き、その人々の中に紛れ込む形で離脱すれば……?

 ……いえ、その人々の中に幻兵が紛れ込んでいたら追跡されるのです。

 一度どこかでやり過ごすには……?

 

 メルメメルアは更に思考を巡らせ、ふとルーナの家――古き籠手亭には、酒場側と宿屋側、それぞれに出入口があるのではないかと思う。

 

 ――確認してはいないですが、先日見た構造を考えたらそうなっているはずなのです。

 ……向こう側の世界で話を聞ければ楽なのですが、向こう側は今、全員が別々の場所にいる状態なのが痛いのです……

 

 そう思いつつも、他に手が思い浮かばなかったメルメメルアは、それ以上考えている暇もない為、古き籠手亭へと向かう事を決める。

 

 ――行くのです!

「――朱を超えし力秘めたる蒼炎よ、破砕の煌めきとなれ! サフィール・デトネーション!」

 そう言い放ち、宙空に向けて蒼き爆炎を発生させるメルメメルア。


 直撃させていないとはいえ、魔法によって発生した凄まじい衝撃――爆風は、幻兵を地面に叩きつけるには十分すぎるものであった。

 

 抵抗する事も受け身を取る事も出来ないまま、地面に叩きつけられた幻兵はひとりを除いて強い衝撃を受けた事で気絶していた。

 

「う……ぐ……」

 運良く気絶を免れた幻兵が呻きながら立ち上がろうとする。

 

「アストラルアンカー・改ッ!」

 かつてラディウスがカラミティエイビスを地面に叩き落としたその魔法が、今度は幻兵を地面に縫い付けるような形で拘束した。

 

 と同時に、先程のサフィール・デトネーションによって生じた爆音によって、何が起きたのかと街の人々が姿を見せ始める。

 その中には、店から出てきた駐屯騎士と店主の姿もあった。

 

「――サフィール・デトネーション! サフィール・デトネーション!」

 メルメメルアは連続して蒼い爆炎魔法を宙空に放ち、その爆風で駐屯騎士と店主、そして街の外から迫ってきていた幻兵を地面に叩きつける。

 

 ――今なのです!

 

 心の中でそう叫びつつ、街の人々の合間を縫う形で古き籠手亭へと駆けるメルメメルア。

 しかし、明らかに追跡されているような視線をその背に感じていた。

 

 ――あれで撒けたらラッキーだと思っていたですが、やはりそう簡単にはいかないのです……

 

 メルメメルアはそんな風に思いながらも走り続け、古き籠手亭へと辿り着く。

 そのまま勢いよく飛び込むと、

「いらっしゃいませー! って、メルさん? どうしたっすか?」

 というルティカの声がメルメメルアを出迎えた。

 

「幻兵に追跡されているのです……!」

「マジっすか!? それは厄介な状況っすね……」

「厄介なのです……。それで、連中を撒こうと思っていて、ここは宿と酒場で別の出入口があるのではないかと思って来たですが……どうなのです?」

「ああなるほどっす。裏口から出て撒くつもりで来たんすね。――たしかに宿側にも一応裏口扱いの出入口があって、裏手の路地へ出られるっすよ。でも……そっちから聖堂へ向かうには結構遠回りが必要になるっすね……」

「そ、そうなのです? それはちょっと困ったのです……」

 そちらから聖堂へ向かおうと思っていたメルメメルアだったが、遠回りをしている間に、幻兵に回り込まれてしまうのではないかと考え、言葉通り困った表情を見せる。

 

「というかっすね、それよりも良い撒き方があるっすよ?」

 なんて事を口にしつつ、メルメメルアに対してニカッと笑うルティカ。

 

「……? 良い撒き方……です?」

一体どんな方法なのやら……?


といった所でまた次回!

次の更新は平時通りの間隔でいけそうな為、12月8日(木)を予定しています!


余談ですが、魔法名「サフィール・デトネーション」は、瑠璃色の爆轟という意味です。

まあ、厳密には瑠璃色と蒼色は結構違かったりするのですが、蒼炎を表現するにはこっちの方が妥当な気がしたので、こんな感じになっています。

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