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第7話 冥闇の彼方。幻兵という存在。

「なるほど……。荷物の運び手さんがいつもとは違っていた……ですか」

「ええ。いつもの人は急な用事が出来てしまったそうで……仕方なく、街で一時的に雇ったと仰っておられました」

 聖堂に出入りしている商人――の偽物と直接話をした担当者が、メルメメルアの問いにそう答える。

 

「どこで雇ったのかとかは聞いているですか?」

「冒険者ギルドだそうですよ。まあ、この街で荷物の運び手を緊急で雇うとしたら、冒険者ギルドが一番安全かつ確実ですからね」

「なるほどなのです。教えていただき感謝なのです」

 メルメメルアは、担当者に対してお礼を述べて頭を下げると、即座に冒険者ギルドへと向かう。

 

 しかし……

「そんな依頼はなかった……です?」

「はい。念の為に今日だけではなく昨日の記録も確認しましたが、そういった依頼は受けていませんね。もしかしたら宿酒場などで直接雇ったのかもしれません」

 メルメメルアに対し、そんな風に答えるギルドの受付嬢。

 

「なるほどなのです。ちょっと確認してみるのです。調べていただき感謝なのです」

 メルメメルアはそう返事をしてギルドの外へと出る。

 

 ――依頼はなし……。ある意味では予想通りだと言えなくもないのです。

 もちろん、ゼグナム解放戦線の面々がいる宿酒場で雇ったなどという事はありえないのです。

 ううーん……。現状では手詰まり感があるのです。

 せめて商人に扮した幻兵が、街の中と街の外、そのどちらで接触を図ったのかくらいは絞りたい所なのですが……

 

 そう考えながら街の入口へと向かうと、アーチ状のゲートの脇に立つ男性――王都から派遣された駐屯騎士の姿が目に入った。

 

 ――街の外で接触したのなら、入口の時点で既にいたはずなのです。

 逆に街の中ならば、入口の時点では商人に扮した幻兵だけのはずなのです。

 

 そう推測し、メルメメルアは駐屯騎士に商人について問いかけてみる。

 すると駐屯騎士は、

「その商人殿なら良く知っているが……昨日出ていく所は見たが、今日入ってくる所は見ていないぞ」

 なんて事を言った。

 

「え? そうなのです?」

「ああ。さすがにずっとここに立っていたわけではなく、少しの間この場を離れていたタイミングもあるが、その時は向こうの店の店主にお願いして、代わりに見ていて貰ったからな。……まあ、念の為店主にも聞いてみるから、しばらくここで怪しい者が街に入ってこないか見張りながら待っていてくれないか?」

「了解なのです」

 メルメメルアが頷くと、駐屯騎士は確認の為に近くの店へと入っていく。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 すぐに戻ってくるだろうと思っていたメルメメルアだったが、なかなか駐屯騎士が戻ってくる様子がなかった。

 

 ――随分と時間がかかっているですね……

 

 そんな事を考えながら、ふと視線を街の外へと向けると、ラディウスの店で観た潜入者――幻兵が3人ほど街の方――メルメメルアの居る方へと向かって来るのが見えた。

 

 ――幻兵……? どうしてこのタイミングで現れたです……?

 ……っ!?

 

 メルメメルアはもしやと思い、反対側へと視線を向ける。

 すると、その視線の先にも幻兵の姿が3人ほど見えた。

 そしてそちらもまた、メルメメルアの方へ向かって来ている所だった。

 

 ――あの駐屯騎士とやらも『幻兵』だった……という事ですか。

 深入りするつもりはなかったですが……想定外の所で、踏み込んではまずい所に踏み込んでしまったようなのです……

 

 メルメメルアは心の中でため息をつきながら、どうすれば良いか思考を巡らせ始めた――

いきなり、ラディウスの不安が的中する事に……


といった所でまた次回! そして、次の更新も申し訳ありませんが平時より1日多く間隔空きまして……12月5日(月)を予定しています。

なお、その次の更新は平時通りの間隔に戻れそうな感じではあるのですが、まだ確定とは言いづらい状況です……

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