第4話 冥闇の彼方。痕跡と残滓。
「――調べてみたら、書庫の方へ向かうのを目撃していた人がいたよ」
「ええ。私の方もそれらしい情報を得られたわ。書庫以外に何もない区画へ鍵も持たずに向かう人影を見て、何をしにいくつもりなのか不思議に思ったそうよ」
「こちらも同じなのです。ちなみに鍵が廊下に落ちていたという話も聞いたのです」
ラディウスの所へと戻ってきたセシリアたちがそんな風に言う。
「書庫、そして廊下に落ちていた鍵……か。その情報からすると、書庫の外で待ち伏せしていた……と考えるのが妥当な気がするな。とりあえず行ってみるとしよう」
そう告げるラディウスに、
「魔法の痕跡を調べるガジェット……だっけ? それはもう用意出来たの?」
と、問いかけるセシリア。
「ああ。魔法――術式解析用のガジェットをベースに、幾つかのガジェットを組み合わせて作った即席の代物だが、これで十分いけるはずだ」
「さすがなのです! 早速向かうのです!」
ラディウスの返答を聞いたメルメメルアが、セシリアに代わる形でそう返し、書庫のある方へと走り出す。
「メルにしては、随分と前のめりな雰囲気だな……」
そう呟きながら走り出すラディウスに対し、
「まあ……自分のせいだって思いがあるんじゃないかしらね……」
「うん、そうかもしれないね……。どっちかと言えば私のせいなんだけど……」
と、走りながら言うルーナとセシリア。
「そうじゃない。誰のせいなのかと言う話なら、カチュアをどこかに閉じ込めた奴のせいだ。メルのせいでもセシリアのせいでもない」
「ええ、その通りよ。悪いのは全面的にそいつだわ」
ラディウスの言葉に同意する形で、そう言葉を紡ぐルーナ。
「そう……だね。うん、そうかも……」
セシリアが、自分に対して言い聞かせるような感じで呟く。
――うーん……。これはメルとセシリアの自責の念を払う為にも、なんとかしてカチュアを取り戻さないと……だな。
ラディウスがそんな決意を心の中でした所で、大きな扉の前へと辿り着いた。
「ここなのです!」
「一応、書庫の鍵も持ってきたけど、中に入る?」
足を止めながら、そうラディウスに告げるメルメメルアとセシリア。
「いや……さっきも言った通り、中に入り込んだ可能性は低いと思っている。だから、まずはこの辺りを調べるとしよう」
首を横に振って否定しつつ、即席のガジェットを取り出すラディウス。
そして「ポチッとな、っと」と呟くように言いながら、ガジェットの魔法――残留している魔力や術式の残滓などを探知する魔法を発動させた。
……
…………
………………
「……ど、どんな感じ?」
沈黙に耐えかねたのか、セシリアが問いの言葉を口にする。
「うーん……。ゲートに似ているような……空間に作用する魔力の痕跡……そして、それを使った術式の残滓の反応があるな……。これだけじゃどんな術式か分からないが――」
ラディウスはそう言いながら、聖木の館で使ったカメラに似たガジェットを取り出し、
「これを使えば分かるはずだ。――セシリア、こいつを頼む」
と、そう言葉を続けながら、セシリアへとそれを手渡す。
「これって、聖木の館で使った奴……だよね? どこに向かって使えばいいの?」
「あの辺りに向かって使ってくれ」
セシリアの問いかけに対し、ドアの横辺りを指差しながら答えるラディウス。
「了解っ!」
そう言って、早速ガジェットを使うセシリア。
それを見ながら、ラディウスは魔力と術式探知を継続しつつ願う。
これで上手く術式を――断片情報でもいいから引っ張り出す事が出来ればいいんだが……と。
今までのゆっくりペースな展開に比べると、そこそこ進展の速い展開になっているのですが、あまりペースを上げすぎて雑な展開にならないようには注意したい所です……
といった所でまた次回! なのですが……申し訳ありません、次の更新も所々諸々の用事により、平時よりも1日多く間が空きまして……11月24日(木)を予定しています。
なお、その次からは平時の間隔に戻る想定です。……まだ絶対とは言えないですが……




