第2話 冥闇の彼方。ラディウスの考え。
「ラ、ラ、ラディィッ! 大変だよぉぉっ!」
「大変なのですーっ!」
セシリアが大声を上げながらラディウスのいる部屋へと飛び込んでくる。
メルメメルアもセシリア程ではないものの、慌てた様子でセシリアに続くようにして、部屋へと飛び込んできた。
そんなセシリアとメルメメルアに対して、ラディウスと話をしていたルーナが、
「あそこで転移しても意味がないと思って、急いで戻ってきたわけね。大丈夫、向こう側の世界で私の横にいたはずのカチュアの姿がなかった時点で、とてもマズい状況になっているという事は理解出来ているわ」
と、そんな風に返してくる。
その言葉からすると冷静なように見えるが、実の所、セシリアたちがやってくる直前まで慌てふためいており、ラディウスによって落ち着かされた後だったりする。
「姿が消えた……? リ、リンクが切れたという事です!?」
「ああ。何が起きたのかは謎だが、リンクが切断されたようだ」
メルメメルアが驚きの表情をしながら問うと、ラディウスがそんな風に冷静に返事をする。
「ず、随分落ち着いているけど、も、もしかして既にどうにかする算段がついている……とか?」
セシリアが希望的観測の込もった問いの言葉を投げかけると、
「いや、まだその手前の段階だが……慌てても仕方ないからな。カチュアが殺される事はまずないだろうし」
と、そんな風に答えるラディウス。
「ど、どうしてそう思うです?」
「カチュアは今まで死亡時に必ず時間逆行が発生していた。という事は……逆を言うと、死んではいないという事でもある。そして、それゆえに何者かがカチュアを捕まえて『殺さずにどこかに……リンクが切断されてしまうようなそんな場所に、閉じ込めたと考えるのが妥当』というわけだ」
「な、なるほどなのです。で、でも、一体誰がカチュアを……?」
ラディウスの説明を聞いたメルメメルアが納得しつつも、新たな疑問を口にする。
「それは現時点では分からないが……『ビブリオ・マギアス』――正確には『魔軍』のオルディマ一派である可能性が一番高いな。良く分からんが、あいつらはカチュアに執着している所があったし」
「そ、そう言われてみると……あいつらって、最初に接触した時にも、カチュアちゃんを排除しようとしていたかも……。そういう意味では、たしかに一番怪しい……」
ラディウスの推測を聞いたセシリアが、以前の出来事を思い出しながら言う。
「だが……どうやってカチュアを捕まえたのかが謎だな。聖堂の外に自ら出るとは思えないから、聖堂内に居たカチュアを捕まえた事になるんだが……」
そう言って顎に手を当てて考え込むラディウスに対し、ルーナが頷いて同意しつつ、自らの推測を口にする。
「そうね……。何者かが聖堂内へ手引した……? あるいは、聖堂内にそもそも奴らと通じている者がいた……?」
それを聞いたメルメメルアがラディウスの店の状況を思い出し、それを告げる。
「あ、そ、そう言えばなのですが、ラディウスさんのお店に『幻兵』とかいう、魔軍に属する者たちが忍び込んでいたようなのです。もしかしたら、なにか関係があるかもしれないのです」
「幻兵? 店に忍び込んでいた?」
「はいです。実は――」
首を傾げるラディウスに対してメルメメルアは頷くと、そう切り出しながらテオドールから聞いた説明を交えつつ、これまでの出来事を語り始めた――
というわけで、ややゆっくり目ではありますが、救出に向けて動き出しますよ!
さて、そんなこんなで次の更新ですが……次回も平時通りの更新間隔となりまして、11月16日(水)を予定しています!
 




