第7話 遺跡探索録。鎧の巨人。
「――蒼き奔流よ、地を這う爆雷の波となりて立ち塞がる全てを破砕せよ! レンディング・ブリッツデルージュ!」
メルメメルアは、まさに先手必勝とばかりに接近する甲冑を鎧った騎士の如き姿の巨体を見据えながら詠唱し、床に手をついた。
直後、幾重もの青い光の線が床に波模様を描くかのようにして、正面へと伸びていく。
そして、その青い光の線が巨体の足元に到達した瞬間、線に沿うようにして青い爆炎と放電が入り乱れながら、砂浜へと次々に押し寄せる波の如き勢いで巨体へと迫る。
「ま、またわけのわからない魔法っすね……」
という呆れと驚きの入り混じったルティカの呟きとほぼ同時に、爆炎と放電が巨体を飲み込んだ。
と、次の瞬間、青い光の線が光ったかと思うと、一際大きな爆炎と放電が青い線のある所全てで一斉に発生。
巨体はその爆炎と放電の衝撃で後方へと傾いていき……激しい振動と、けたたましい金属音を鳴り響かせながら床へと倒れ込み、ガチャガチャと甲冑の如きボディを辺りへと撒き散らした。
「ふーむ……。さすがに中身はなさそうな感じだな……」
そんな事を言いながらカルティナが近くに転がってきた兜へと歩み寄る。
と、その直後、メルメメルアがカルティナに対して警告を発する。
「っ! カルティナさん! マリス・ディテクターの反応が消滅していないのです! おそらく再生するのです!」
「なにっ!?」
驚きつつも、急いでその場からバックステップするカルティナ。
しかし、着地と同時に何かを踏みつけ、「うわっ!」という短い悲鳴と共に、滑って仰向けに転倒した。
「ぐぅっ! な、なんだ!?」
どうにか受け身を取ったカルティナがそう口にした直後、カルティナの頭上を巨大な剣が通り過ぎていく。
「っ!?」
「滑って転んでなかったら逆に危なかったっすね……。カルティナさんが慌てた時に出すポンコツぶりが功を奏したっすね」
驚きの表情のまま巨大な剣を視線で追うカルティナに、そんな言葉を投げかけるルティカ。
「……そ、そうだな……。と言っても、記憶がある程度戻ってきた最近は、以前のような大ポカは、やらかさなくなったのだがな……」
「そんな風に言葉を返せるのなら安心っすね。あまりのスレスレっぷりに恐怖で動けなくなったのではないかと思ったっす」
「あー……。私にも良く分からないというか、まだ戻っていない記憶と何か関係があるのではないかと思うが、こういう風に死をスレスレで回避するのに、どうも慣れている感じでな……。驚きはするが……まあ、その程度だ。――それより……私は今、何を踏んづけたのだ……?」
ルティカに対してそう返しつつ、カルティナは状態を起こしつつ床を見る。
と、そこには少し前に見た棒状のクリスタル――メルメメルアが鍵だと言った物――と同じ形状だが、色の違う物が転がっていた。
――なんだ? 何故、あの鍵と同じ形状の代物がこんな所に……?
まさか、あの騎士もどきのデカブツが持っていた物が落ちてきた……のか?
不思議に思いつつもそれを拾った所で、
「カルティナさん! あの巨体が完全復活したのです! 注意するのです!」
というメルメメルアの警告に、カルティナは思考を中断し、素早く立ち上がる。
「メル! これが落ちていた! 渡しておく!」
拾ったクリスタルの鍵と思しきものを、そう言いながらメルメメルアの方へと放り投げつつ、騎士の如き巨体へと視線を向けるカルティナ。
その視線の先では、メルメメルアの言う通り、完全に元通りになったそいつが立ちはだかっていた。
それを見ながらカルティナは、ため息混じりに首を横に振って、
「やれやれ……。こいつはどうしたものかな……」
と、呟くのだった――
というわけで(?)、あっさり倒したかと思いきや、復活してきました。
とまあ、そんな所でまた次回!
次の更新ですが……先日記載した通り、所々諸々ありまして、平時より更新が1日遅くなります。
なので……10月2日(日)の更新を予定しています!
その次の更新は多分平時通り行けそうな気がしますが、まだちょっとわかりません……
さて、それはそうといつもの魔法名についての余談です。
レンディング・ブリッツデルージュの意味は、『破砕する電撃』と『猛爆の大洪水』のふたつの意味があったりします。
なので、青い爆炎と放電という二重(二段構え)の攻撃になっていたりします。




