第3話 遺跡探索録。アサルトマーダー迎撃。
「こいつら、物理的な攻撃に強いんすよねぇ……魔法で攻撃するしかないっすけど、あまり強い魔法ないんすよねぇ……シェイドブレードッ!」
ルティカがメルにそう説明しつつ漆黒の刃を生み出し、真正面のアサルトマーダーを一気に薙ぎ払う。更に薙ぎ払う。薙ぎ払う。薙ぎ払う……
しかし、その程度で片付くような数ではない。
「うわっとっとっす!」
飛びかかってきたアサルトマーダーを回避し、再び漆黒の刃を振るうルティカ。
「ちょ、ちょっと多すぎるっす! そ、そうっす! 扉を閉ざせば……」
「それは無理だ! なぜか閉じられなくなっている!」
ルティカの言葉にそう返しつつ、衝撃魔法でアサルトマーダーを吹き飛ばすカルティナ。
「ラディの詠唱なしで撃てる改造魔法があるからどうにかなっているが、それでもこの数は厳しいな……っ!」
と口にするカルティナに対し、メルメメルアが、
「詠唱ありの魔法で吹き飛ばすのです! 少しだけ時間を稼いで欲しいのです!」
と言い放ち、ラディウス製ガジェットに手を添えた。
ルティカとカルティナが無言で頷き、メルメメルアに迫るアサルトマーダーを迎撃し始める。
さすがにふたりいれば、メルメメルアに攻撃が届く事はない。
「――ここに下りたるは掩蔽なる陰闇の帳。潰滅の刈り手よ、深淵より繰り出し全てを露とせよ!」
無事に呪文の詠唱が完了し、メルメメルアが叫ぶ。
「ふたりとも下がるです!」
その声に、ルティカとカルティナが間近のアサルトマーダーを吹き飛ばしつつ、メルメメルアの後ろへと下がる。
それを確認したメルメメルアが、
「――シュラウデッド・ダミングスアスッ!」
と言い放ったその直後、飛びかかろうとしてきたアサルトマーダーとメルメメルアの間に紫黒色の壁が生み出され、バチンッという炸裂音と共にアサルトマーダーが消し飛ぶ。
しかし、ラディウスの組み込んだ詠唱が必要な魔法が、その程度で終わるわけはなく……
紫黒色の壁の向こう側から、次々に炸裂音が鳴り響き始める。
「な、何が起きているっすか……?」
ルティカがメルメメルアに恐る恐るといった感じでそう問いかけるも、ガジェットから流れ込んでくる情報によって、その魔法が『物理的な耐久力に優れた頑丈な相手にほど有効な破壊魔法』である事以外の知識を持たないメルメメルアは、
「え、えーっと……。私にも分からないのです……」
と、そう返すしかなかった。
そして、そんなやりとりをしている間にも炸裂音は止まらない。
……それからしばしの時が経過し、メルメメルアが果たしていつまで続くのか……と思いながら、少し冷や汗を垂らした所で、遂に炸裂音がしなくなった。
それと同時に、紫黒色の壁がまるで帳が上がるかのようにして消えていき、その向こうには何も存在していなかった。
そう……大量にいたはずのアサルトマーダーは、一体残らず消し飛んでしまっていたのだ。
「……そ、外でカルティナさんが使った魔法と同じくらい……いや、下手したらそれ以上に無茶苦茶な魔法っすね……」
少し顔を引きつらせながら、そんな風に口にしてきたルティカに、
「ま、まあ……ラディの作り出したガジェット――魔法だからな……」
としか言えないカルティナと、それに無言で頷くメルメメルアだった。
まあなんというか、ラディウス製ガジェットの詠唱が必要な魔法は、発動すれば大体一撃必殺……いえ、一撃殲滅ですからね……
といった所でまた次回! 次の更新は、9月19日(月)を予定しています!
余談ですが……シュラウデッド・ダミングスアスは、『覆われし破滅の刈り跡』といった感じの意味です(覆われた闇が、内側の存在を内外から侵食しつつ圧潰します)




