第2話 情報収集。カルティナとテオドール。
「おひさしぶりなのです」
姿を現したテオドールに対してメルメメルアがそう答えると、テオドールはカルティナの方へと向き直り、
「そちらの方は初めてお会いいたしますね。――私はテオドールといいます。元は商人でしたが、今は隠居して各地を旅して回っております」
という自己紹介と共に、頭を軽く下げた。
「あ、はい。始めまして。えっと……私は冒険者兼すぐ近くの雑貨屋で店員をしているカルティナと言います。メル……メメルア殿とは少し前に共通の知り合い――ラディウスを通して知り合ったような形でして、この街に興味があるようでしたので、ラディウスの代わりに案内しています」
「なるほど、そうでございましたか。ちなみにラディウス殿に関しましては、私も存じ上げております」
カルティナの自己紹介を聞いたテオドールがそんな風に言うと、
「カルティナさん、言うタイミングを逃してしまっていたですが、テオドールさんはラディウスさんやセシリアさんたちとも面識があるのです」
と、付け加えるようにカルティナに対して告げるメルメメルア。
「む、そうであったのか。さすがというべきか、色々な所に知り合いがいるのだな」
カルティナはメルメメルアにそう返した後、再びテオドールの方を向き、そして問いかける。
「テオドールさんは、様々な情報に精通している……と、メル……メメルア殿やアメリア殿が言っておりましたが……」
「ええそうですね。元々は商人だった事もありまして、情報を仕入れるのは割と得意なのですよ。なにしろ、商人というのは常に最新かつ正確な情報をどれだけ得られるかが重要ですからね。『表裏問わず』情報収集を怠れば、大事な商機を逃す事となってしまいますし。――英雄殿や『剣の聖女殿』と繋がりを持つ事が出来たのも、そういった情報収集の賜物であると私は思っています」
そんな風に返事をして微笑んでみせるテオドールを見ながら、カルティナは思考を巡らせる。
――表裏問わずという所を強調してみせたという事は、どこかの組織……諜報員的な役割も担っている……いや、担っていた……という事か。
……そして、剣の聖女の部分も強調してみせた事を併せて考えるなら、その組織というのはセシリアと同じかそれに近しいものであると考えるべきであろうな。
まあ……。セシリアが諜報員だというのは最近知ったばかりだが……
と。
無論、向こうの世界の存在について知らないカルティナに対して、そのように思わせておく為のテオドールの話術であり、こちらの世界でのテオドールは諜報員でもなんでもないのだが。
「なるほど……たしかに、『それについては納得』というものです」
テオドールの話術によって『納得した』カルティナはそう言うと、メルメメルアの方を向き、
「メルが『今得たいと思っている情報について、何か知っていそう』と言った理由が良く分かったぞ。たしかにこの御仁であれば、すぐに色々とわかりそうだ」
なんて事を小声で言った。
……が、その声は普通にテオドールに聞こえており、テオドールは首を傾げてみせた後、
「今得たいと思っている情報……ですか? 何をお知りになりたいのでしょう?」
と、ふたりを交互に見ながら問いかける。
「あ、はいです。実はなのですが――」
メルメメルアはそう切り出すと、テオドールに対してラディウスの店での出来事……正確に言うなら、魔法の目とカルティナに説明した『映像』の内容について話し始めた――
今回の話は、自己紹介的な内容に大部分を割かれた事もあり、ほとんど進展していない感じに……
ま、まあ……なにはともあれまた次回!
次の更新は平時通りの間隔となりまして……8月29日(月)を予定しています!




