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第1話 情報収集。古の籠手亭にて。

「ここがルーナの家――宿酒場『古き籠手亭』だ」

「ふむふむなのです。随分と繁盛しているですね。人が多いのです」

 カルティナに案内されたメルメメルアが、古き籠手亭の中を見回しながら、そんな感想を口にする。

 

「うむ。ここの料理はなかなか絶品だからな。少々、量が多めなのが難だが……」

 そうカルティナが口にした所で、

「いらっしゃいませー! ようこそ『古き籠手亭』へ! ……って、カルティナさんに……あれ? メルさん?」

 という声と共に、宿酒場で働いている時のルーナと同じ格好をしたアメリアが姿を現す。

 

「うん? アメリアはメルと知り合いなのか?」

「あ、えっと……ま、前に冒険者の仕事で出会ったんだよ」

 カルティナに問われたアメリアが、しまった! と言わんばかりの表情を一瞬した後、そんな風に誤魔化す。

 

 アメリアやメルメメルアが、平行世界間を移動出来るなどとは夢にも思わないカルティナは、そのアメリアの言葉に納得し、

「なるほど……そうであったか。まあ、私と違って遠くから来たアメリアならば、どこかで出会っていてもおかしくはないな」

 と、言った。

 

「そ、そうそう。まあ、ここで再会するとは思わなかったから、ちょっと驚いたけどね。――あ、そ、そうだメルさん、『あの時、一緒に会った』テオドールさんたちが、ちょうど今、この宿に滞在しているけど、会っていく?」

 メルメメルアがここにやって来たのは、テオドールに用があるからではないか……と、そう考えたアメリアは、少々無理矢理な感じで話の流れをそちらへと持っていく。

 

「そ、そうなのです? でしたら、ちょっと会ってみたいのです。様々な情報に精通しているテオドールさんなら、『あの時』のように今得たいと思っている情報について、なにか知っていそうな気もするですし」

 急に振られたメルメメルアがそんな風に返事をする。

 

 慌てて返事をしたせいで少々説明口調なっていたものの、カルティナはそれほど気にならなかったのか、そのような人物がいるのか……としか思わなかったらしく、

「どのような人物なのか興味があるが、私も同席して良いものなのだろうか?」

 という問いかけをメルメメルアに投げかけるだけだった。

 

 メルメメルアにとっては、元々カルティナが同席している状態で話を聞こうと思っていた事もあり、その問いはむしろ渡りに船というものであった。

 ゆえにメルメメルアは、

「秘密裏に会う必要があるわけでもないので、特に問題ないのです」

 と、そんな風にカルティナに対して答えると、アメリアの方へと向き直り、そして告げる。

「アメリアさん、そういうわけなのです。お手数をおかけするですが、取り次いで欲しいのです」

 

 メルメメルアにそう告げられたアメリアは、「了解だよ」と返すと、奥にいるルティカに少しこの場を離れる事を告げてから、奥――宿の方へと向かった。


「……ここに立っていたら邪魔じゃないですかね?」

「ふむ、たしかにそうだな。少し壁際に寄っておくとしようか」

 メルメメルアに問われたカルティナがそう返し、通行の邪魔にならないよう壁際に寄ると、メルメメルアもそれに続く形で壁際に寄りながら、

「ここから見ているだけでも、おいしそうなのです。ちょっと食べてみたい気がするのです」

 と、そんな事を周囲を眺めつつ口にした。


「まあ、後で注文すれば良いんではないか?」

「どれも大して高くないからな」

「そうなのです?」

「それはそうだ。ここは高級な店じゃなくて、宿酒場だからな」

 カルティナがメルメメルアにそう返した所で、

「――ま、だからこそ、私たち冒険者でも雇って貰えたんだけどね」

 なんて事を言いながら、アメリアが戻ってくる。


「あ、アメリアさん、どうだったですか?」

「うん、問題なかったよ。少ししたら来るから、2階席――宿泊客専用エリアで待ってて」

 そんな風に言って、カルティナとメルメメルアを2階席へと案内するアメリア。

 

「思ったよりも品数が多いのです」

 アメリアから受け取ったメニューを見ながら、そんな感想を口にするメルメメルア。


「ああ、たしかに宿酒場とは思えぬ程、種類があるな。ふむ……それにしても、2階席は始めて来たな。まあ……宿の方を利用した事などないから、当然といえば当然なのだが」

 カルティナがメルメメルアに対してそう答えつつ周囲を見回すと、初老の男性が近づいてくるのが見えた。言うまでもなくテオドールである。


「お待たせしました。メルメメルアさん、お久しぶりでございますね」

 そう告げてきたテオドールの姿にカルティナは思う。

 

 ――ふむ……。一見すると執事か隠居した商人のようだが……どことなく、諜報員のような……そんな独特な雰囲気を漂わせているな……

 

 と。

久しぶりの『古の籠手亭』です。

まあもっとも、ディックもマリエルも今回は出てこないですが……


といった所でまた次回! 

次の話(更新)ですが、ほぼほぼ出来ている事もあり、早く出せそうな感じです。

なので、平時より間隔が1日早くなりまして、8月26日(金)の更新を予定しています!

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