第4話 聖木の館深奥。セキュリティとカードキー。
「セキュリティガジェットに頼りすぎじゃないか? ここ……。というか、そもそも番兵の類がまったくいない?」
重度隔離棟の中を進みながらラディウスがそんな風に呟く。
それもそのはずで、誰かがセキュリティガジェット以外の仕掛け――ワイヤーやスイッチ床といった魔法に頼らない仕掛け――を設置している可能性を考え、念の為に探ってみたものの、それらしい物は一切なかった。しかも、兵士の影すらない。
「まあ……ここは定期的に監視に来るくらいで、基本的には無人という話なのでな。おそらく今日は誰も来ていないのだろう」
「それなら仕掛けの類が一切設置されていないのも頷けるが……それでいいのか? いやまあ、ここから脱走出来るような者はいないだろうが……」
エレンフィーネの発言に対し、ラディウスは少し呆れ気味にそんな事を言いつつ周囲を見回す。
「とりあえず、セキュリティガジェット以外の脅威はないと考えて良いと思います。ですが、ドアは全てロックされているようですね……」
「さすがにそこは徹底されているようですね」
ラディウスはテオドールにそう返すと、エレンフィーネの方を向き、
「それなりに使われている部屋があるようだが……目的の部屋はどれだ?」
という問いの言葉を続けた。
「すまない、さすがにそこまでは分からぬ……。というより、そういった情報は与えられていない」
「そうか……。まあ……監視するだけならそんな詳細情報はいらないし、そうなるか。……どの道、救出可能な者は全て救出するつもりではあるし、中に誰かいるっぽい部屋のドアを片っ端から開きながら進めばいいか」
ラディウスはそう呟くように言うと、後ろに続いているゼグナム解放戦線の者たちの方へと向き直り、
「さっきと同じように、手前から順に囚われている者を解放して進む。順番に外へ連れて行って欲しい」
と、告げた。
「承知しました! ――ドアは破壊する形ですか?」
「いや、いちいち壊していくのは面倒だ。見た感じカードキータイプのようだから、普通に開ける」
ゼグナム解放戦線のひとりにそう問われたラディウスは、カードキータイプなら簡単に開けられるし、壊す必要はないな……と判断し、そんな風に返事をした。
するとそこでエレンフィーネが、
「ラディ殿、ここのカードキーガジェットなぞ、どうやって手に入れたのだ? ごく一部の管理者以外、持っていないはずなのだが……」
という、もっともな疑問を口にする。
「ああ、手に入れてはいないぞ」
「うん? どういう事だ?」
ラディウスの返答の意味が分からず、首を傾げるエレンフィーネ。
「これを使うのは、物凄く久しぶりだな……。――術式チェッカー!」
ラディウスが魔法の名前を口にし、その魔法を発動させる。
そう、それは妖姫の囚われていた牢を開くために、カードリーダーの術式を解析するのに使ったラディウス製のオリジナル魔法である。
最近は、色々な術式の解析にも使っている事もあり、声に出さなくても構わないように――名前が微妙な為――改良済みなのだが、今回はエレンフィーネたちにもわかるよう、敢えて声に出した形だ。
「じ、術式チェッカー?」
「あー……まあ、なんだ? 即興だったから適当につけた名前でな……。そこはあまり気にしないでくれ」
困惑するエレンフィーネに頬を掻きながら、少し恥ずかしげな表情でそう答えるラディウス。
そういう意味の困惑ではないのだが……と思うエレンフィーネをよそに、ラディウスは、
「……名前はあれだが、魔法の性能――術式の解析に関しては完璧だから安心してくれ。っと、解析出来たぞ」
と告げて、その場でストレージから以前使ったカードリーダーを欺瞞するカード型のガジェットを取り出した。
「そのカードみたいな物はいったい……?」
「これは、カードリーダーを欺瞞する魔法を組み込んだカード型のガジェットだ。ま、簡単に言えばオールマイティな偽造カードキーだな」
「お、オールマイティの偽造カードキー!? そ、そんな代物が……!?」
ラディウスの説明を聞いたエレンフィーネが、驚きの声を上げる。
そして、ラディウスの横に立つテオドールや、後方のゼグナム解放戦線の者たちも、声こそ出さないものの、その表情は驚きに満ちていた。
それを見ながらエレンフィーネは思う。
――最早、予想の遥か上などという生易しいものではないな……。普通の魔工士とは次元が違いすぎる……
メル殿がべた惚れかつ、手放しに褒め称えるのが良く分かるというものだ。
と。
今までも『術式チェッカー』による『解析』は何度も使っていましたが、わざわざその名前を口にはしていなかったので、『術式チェッカー』という名前の登場は、かなり久しぶりとなりました。
そして、偽造カードキーの方も久しぶりの登場ですね……
こっちは、本当に長い間使っていませんでしたし……
といった所でまた次回!
なのですが……少々予定が詰まっており、申し訳ありませんが次の更新は再び平時より1日多く間隔が空きまして、8月6日(土)を予定しております。




