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第3話 エレンフィーネの話。ふたつの部屋。

若干長めです。

「……奥へ行く前に、まずは見えている左右の扉を確認するべきだろうな。右の扉からは人のいる気配を感じる……。ここは先に左を見ておくとするか」

 エレンフィーネは誰にともなくそんな事を口にすると、まずは左の通路を進み、その先の扉へと歩み寄る。

 

 ――やはり中から気配は感じない……。誰もいないの間違いないと思うが……

 

 エレンフィーネはそう思いながらも、自身の気配察知能力以上に、気配を遮断する能力を持っている者が潜んでいる可能性もゼロではないと考え、静かに……少しだけ扉を開けて中を覗く。

 だが、やはり最初に感じ取った通り、その部屋には誰もいなかった。

 気配を遮断して誰かが潜んでいる様子もない。

 

 エレンフィーネは安堵しつつも警戒を怠らず、慎重に部屋の中へと入る。

 室内は照明ガジェットが動作していない事もあり薄暗く、通路の照明ガジェットの光でどうにか見えるという感じだった。


 ――さすがに照明ガジェットを動作させるのは危険だろうし、このまま調べるとしよう。


 そう判断したエレンフィーネは、照明ガジェットを動作させずに室内を見回してみる。

 すると、室内には赤黒い染みの付いた金属製のテーブルや、同じく赤黒い染みの付いた中央部分が折れ曲がるようになっている木製のテーブルなどがいくつか並んでいるのがわかった。

 

 そのまま奥へ歩いていってみると、今度はXの形をした金属板が壁と、床から突き出すように設置されている小さな丸い台座の上に、それぞれ取り付けられているのが目に入る。

 

 ――これは……拘束台……枷……か? 先程テーブルだと思った思った物はもしや……

 

 エレンフィーネはテーブルの下へと視線を向けてみる。

 すると、そこには鎖が無造作に垂れ下がっていた。

 

 ――やはり、このテーブルのようなものも拘束台であったか……

 しかし、なんの為にこのようなものが……?

 ここは療養所……の皮を被った『危険な思想、嗜好を持つ咎人を幽閉しておく為の施設』であると聞いているが……

 まさか、帝国法で禁止されている咎人への暴行、あるいは拷問の類が行われているとでもいうのか?

 いや……シルスレットよりも更に辺境の地域では、帝国法が半ば無いも同然で、今でも拷問の類が行われているという噂を聞いた事がある……。ここもそう……なのか? 

 だが、辺境ならいざ知らず、仮にも帝国の中枢の軍である魔導機甲師団が駐留する施設でそのような行為が行われているとは考えがたいが……

 

 エレンフィーネはあれこれと可能性について思考を巡しつつ、室内を探ってみるが、思考に結論をもたらすような物を見つける事は終ぞ出来なかった。

 

 ――仕方がない。もう一つの部屋の方へ行ってみるとしよう。

 あちらからは気配が感じられたゆえ、少々危険だが……

 

 危険であると思いつつも、その部屋にいかなければ何も分かりそうにない為、その場を後にして十字路を挟んで反対側にある扉へと移動するエレンフィーネ。

 そして……扉に歩み寄った所で、案の定というか、明確な気配を感じ取った。

 

 ――2人……いや、3人か?

 ……先程よりも慎重に覗く必要がありそうだな……

 それと、念の為に……

 

 エレンフィーネは不測の事態に備え、身に着けている身体強化魔法のガジェットを即時発動可能な状態――スタンバイ状態で維持しておく事にした。

 常駐よりも魔力の消耗が小さくて済む為、こういった状況の場合にはスタンバイ状態にしておくよう、軍では教育と訓練が繰り返し行われており、エレンフィーネはその刷り込まれた動きを忠実に実行した、というわけである。

 

 ガジェットが正常にスタンバイ状態になった事を確認し終えると、エレンフィーネは先程の部屋よりも慎重に扉を開け――ようとしたが、開かなかった。

 

 ――む……? 鍵がかかっている……? 

 まあ、誰かが中にいるのだから、内側から鍵をかけていたとしても、別におかしな事ではないか……

 

 腕力を限界まで強化すれば壊せるような気もするが、さすがにそんな事は出来ないので、とりあえず扉に耳を当ててみる。

 

「……を……すれ……」

「た……し……」

 

 わずかに誰かの話し声が聞こえてくるものの、扉が厚いせいであまり音が漏れて来ず、良く聞き取れない。

 聴力を高める魔法を使えば聴こえるのではないかと思い、魔法を発動したその瞬間、

「ぎっ、やぁぁあぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁっ!!」

 という、若い女性と思われる苦悶の悲鳴が響いてきた。

 

「――っ!?!?」

ここに来て始めて『スタンバイ状態』の登場です。

今まで出てきていないのは、単にラディウスのガジェットの魔力量が段違いすぎて、スタンバイ状態にせずとも枯渇しないからだったりします……

まあ、ラディウスのガジェットが規格外すぎて、設定自体はあったものの、出し所がなかったとも言いますが……


といった所でまた次回!

次は平時通りの更新間隔となりまして……7月11日(月)の更新を予定しています!

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