表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

340/636

第2話 エレンフィーネの話。階段の先へ。

 幸いというべきか、保安棟内を見回っている兵士たちと遭遇する事なく、エレンフィーネは保安棟の構造を把握しつつ、件の階段までやってきた。


 ――やはり、地下へ通じる階段があるのはここだけのようだ。

 

 そんな風に思いつつ、地下への階段へ目を向けるエレンフィーネ。

 するとその直後、やはりというべきか、『悪意の混じった警戒』とエレンフィーネが称したそんな視線が、彼女に対して向けられた。


「……っ」

 

 ――この視線は……一体なんなのだ……?

 

 その思考と同時に、ここへは近づかない方が良いという直感が働いた。

 というよりも、階段の方へ視線を向ければ向ける程、それより先へ進んではいけないという本能的な恐怖が増していく、そんな感じだった。

 

 ――だが……ここで引き下がるのは、何か嫌だ。

 

 何の後ろ盾もないエレンフィーネが士官候補生になれたのは、気配察知能力を買われたからだけではない。

 孤児院で、そして治安のあまり良くないシルスレットで、日々の暮らしによって培われた精神的にも肉体的にもタフであるという点、そして『引き下がらない』という負けん気。

 そういった物があったからこそ、なのだ。

 ゆえに……感じてくる悪意、恐怖に対し、引き下がるというのが、エレンフィーネは嫌だった。

 

 ――ここは『帝国魔導機甲師団』が駐留する建物……

 あのシルスレットのスラム街のような事は――路地裏から『悪意の混じった警戒』の視線を向けてくる者たちのように、問答無用で襲いかかってくる事は――さすがにない……はずだ。

 

 エレンフィーネはそう考え、「よし」と短く呟いて意を決すると、地下へ向かって足を踏み出した。

 

 階段を降りる度にエレンフィーネに向けられる視線が強まり、感じる恐怖が増していく。

 更に、全身が凍てつく程の冷気が襲いかかってくる。

 

「くっ……」

 エレンフィーネは即座に反転して階段を上り、自室へ駆け込みたい衝動に駆られつつも、前へと進む。

 

 すると……階段が終わり、曲がりくねった通路に入った所で、急に視線も恐怖も感じなくなり、全身を襲っていた冷気もなくなった。

 

「……? これは……一体……」

 あまりの変化に、そんな言葉が自然と口をついて出るエレンフィーネ。

 周囲を改めて見回すと、幾つもの細いパイプが天井や壁に張り巡らされていた。

 

 ――これは……たしか、ガジェットに蓄えられている魔力を別の場所――他のガジェットなどに供給する事が出来るという、魔力伝導パイプ……だったか?

 

 エレンフィーネはガジェットに関する座学で、教官がそんな説明していたのを思い出し、そして更に思う。

 

 ――これだけの魔力を供給しなければならない物が、この先にあると……?

 

 と。

 

 何があるというのだろうか……と思いつつ、唐突に誰かと出くわさぬよう気配を探りながら、慎重に先へと進むエレンフィーネ。

 通路は曲がりくねった一本道の通路を数分歩いた所で、唐突に通路が3つに分かれていた。

 歩いてきた通路を合わせると、ちょうど十字になっている形だ。

 

 ――右と左の通路は、目で見える距離……おおよそ20フォーネ(20メートル)程度の所に扉があり、そこで行き止まり。

 そして、正面はその半分……約10フォーネ(10メートル)先斜めに曲がって更に奥へ続いている……か。


 エレンフィーネは各通路の先を確認しつつ分岐の中心に立ち、

「さて、どの通路を行くべきか……」

 と、小声で呟いた――

久しぶりに、この世界特有の『単位』が出てきたような気がします……

何気に、なかなか使う機会のない『単位』も結構あるんですよね……


といった所でまた次回!

そして、次の更新なのですが……もうしわけありません、次も平時より1日多く空きまして……7月8日(金)を予定しています。

ですが……その次からは、元の更新間隔に戻ります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ