第13話 聖木の館攻略戦。解錠の技と囚われし者。
解放の為に散っていく隊員たちを見送りつつ、
「よし、俺たちも手前から解放していくとしよう」
テオドールとメルメメルアを交互に見て告げるラディウス。
「承知いたしました」
「了解なのです!」
テオドールとメルメメルアがそう返事をし、ラディウスと共に一番近くの『療養部屋』と記された小部屋へと駆け寄る。
そして、ラディウスが部屋の入口の鉄扉に取り付けられた鉄格子付きの小窓から中を覗いてみるも、そこには誰もいなかった。
「この部屋はもぬけの殻だな。しかし、鉄の扉に鍵……か。なるほど、さっきテオドールさんが言っていた通り、たしかにこれは単なる監獄だな」
ラディウスが、やれやれと首を横に振ってそう口にすると、横に立つメルメメルアが、
「まったくなのです。名称を誤魔化す必要があるのかというレベルなのです。まあ……誰もいないですし、次に行くのです」
という同意の言葉を返しつつ、隣の小部屋へと移動。
ラディウスと同様に、小窓から覗いてみると、そこには軍服を着た女性の姿があった。
「この部屋は人がいるのです!」
「マリス・ディテクターの反応なし……。よし、救出するぞ」
「サクッと壊すのです!」
ラディウスの言葉を聞いたメルメメルアは、扉を破壊する為の魔法を放つべく、ガジェットを構える。
だが、そんなメルメメルアをテオドールは手で静止すると、
「――壊してしまっても良いですが、全て壊して回るのでは魔力がもったいないですし、ここは普通に解錠するといたしましょう。何、この程度の鍵であればすぐに開きます。私にお任せを」
と、告げた。
普通に解錠って妙な言い回しだな……なんて事をラディウスが思っている間に、テオドールは懐からキーピックを取り出し、それを錠前に差し込んだ。
そして、カチャカチャと動かし始め……たと思った直後、カチャンという音が響き、あっさりと鍵が開いた。その間、10秒足らずである。
「は、早すぎるですっ!?」
「これが、隠密宰相と言われる程の人間の技か……。こういう所は、セシリアとは全然違うな……」
驚くメルメメルアに続くようにして、ラディウスが顎に手を当てながら、感嘆の声を漏らし、そして納得の表情を見せる。
「セシリアさんは、どこかに忍び込むタイプの諜報員ではなく、何かに変装して情報の収集や操作をしたり、待ち伏せして強襲するタイプの諜報員……いえ、隠密ですからね。出撃前にもチラッとお話しましたが、どちらかと言うとそちらよりは、騎士のような『守り手』に向いていると思います」
そう告げられたラディウスは、「なるほど……」と短く返しつつ、思考を巡らせ始める。
――俺としても、セシリアは剣の聖女だし、聖騎士のような立ち位置の方が良い気がするんだよな……諜報員という立ち位置は、まあ……なにかと危険だし。
無論、セシリアの戦闘力であれば、例え任務に失敗したとしても力づくでどうにか出来るだろうから、セシリアの父親のように殺されてしまう可能性は低いかもしれないが……だが、それでも……あまり諜報員のままにしておきたくないという思いが、俺の中にあるんだよなぁ……
どうにかして、セシリアの心を諜報員からそっちの方面にもっていけないものだろうか……
しかし……仮にそっち方面にもっていけたとしても、諜報員を辞めるとなると、王国の諜報部とやらに話を付ける必要があるか……
ただ……そうなると少々厄介ではあるな……。王国の諜報部なんてものに直接関わった事などないから、どういう部署でどういう人間がいるのかすら良く知らないし。
とはいえ……だ。本人次第ではあるが、もしもセシリアが諜報員を辞めるというのなら、俺はそれを全力で手伝おうとは思う。良く知らない部署とはいえ、やり方は色々あるし……な。
と、そんな風に――
今回、話の長さの割にあまり進んでいない気がします……
ま、まあ、そんな所でまた次回!
次の更新も平時の間隔通りとなりまして、6月23日(木)の予定です!




