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第12話 聖木の館攻略戦。破壊する力、救う力。

今回は少し長めです。

「しかし……思ったよりも加速力が出たものだ。さすがは魔法を利用しているだけはある……と言うべきか」

「えっと……その前に、サーキュラーボム・レールガンとはなんなのです……?」

 もっともな疑問に対し、ラディウスが扉の方へと歩み寄りながら説明する。

「まず、サーキュラーボムってのはまあ……丸鋸状の魔法の塊――鋸の刃となる所に爆発魔法の術式を設置、その内側に指向性制御と加速制御の術式を設置した物――で覆った大口径の炸裂弾の事だ」

「ふむふむなのです。そうなると、私が撃ったのがレールガンです?」

「ああ、そういう事だ。メルが撃ち出したあれは、特殊な調整をした2条の電撃を一直線に放射する事で、その2つの電撃の内側に電磁力の磁場が発生させるという魔法だ。んで、そこに『物質』を乗せる事で、サーキュラーボム側の術式が連動で発動して、電撃の走っている方向へ一直線に超加速で飛ぶ……。とまあ、この仕組みがレールガン……もどきだ」


「……何を言っているのか良くわからないですが、古の時代に、物理的な塊を超高速で撃ち出す大型ガジェットを研究している国があったのは聞いた事があるです。災厄の際にそれで迎撃するとかなんとか……。もっとも、それが上手くいったのかどうかは、わからないですが」

「あー……なるほど……。おそらくそれも同じような原理の代物だと思うぞ。しかし、災厄とはそんなので迎撃出来る代物なのか……?」

 ラディウスがメルメメルアにそう返しつつ、災厄に対する疑問を抱いた所で、鉄扉の残骸を確認し終えたらしいテオドールが、

「多重の爆発魔法によって鉄扉を破壊し、高速で飛翔する物質――炸裂弾で対魔法障壁を破壊……その2つが生み出す衝撃で2つ目の鉄扉を吹き飛ばす……。なるほど、たしかに『全部一気にぶち破る』と言った通りですね」

 と、そんな風に呟くように言った。

 

 それを聞いていたメルメメルアが納得の表情で、

「物理と魔法を融合した攻撃……。たしかにそれならば、対物理と対魔法、その両方を纏めて破壊出来るのです」

 なんて事を言い、ラディウスの方を流石だと言わんばかりの目で見る。

 

「ま、ルーナが先刻使った魔法でも多分同じ事が出来ると思うけどな。っていうか、単純にぶち破るだけならあっちの方が楽だ。最近はあまり使っていないが、槍を得物としているルーナらしいというか……流石だと言うべき発想だな」

「む、むむぅ……」

 ルーナを褒めるラディウスにちょっと不満気な顔をして小さく唸るメルメメルア。

 しかし、ラディウスはそれに気づかない。


「ふむ……。要するに、古の時代に研究されていた大型ガジェットの仕組みと同等の魔法を、2つのガジェットを使って実現した……という事ですかな?」

「ええまあ、そんな所です」

 ラディウスはテオドールの問いかけにそう答えると、周囲を見回しつつ、

「――とりあえず、これで入口は突破出来たと思います。マリス・ディテクターに引っかかる存在もないので、近くに敵兵はいなさそうですね」

 と、そんな風に言葉を続ける。

 

「であれば、左右、そして正面の通路の先にある『療養部屋』から、囚われている者たちを速やかに解放していくといたしましょう。……感じられる気配からすると、まだ結構な数の者たちがいるようですし……」

「そうですね。……一応、『暴走』している人もいるかもしれないので、注意しつつ急いで解放し、守りに適した場所へ集めるとしましょう。何か良さそうな場所ってありますか?」

「守りに適した場所……ですか。――それであれば、療養棟から治療棟へ繋がる連絡通路の手前に大部屋がありますので、そこが最良でしょう。部屋の入口に防衛線を敷けば、守るのが容易いですので」

 ラディウスの問いかけに対し、見取り図を開きながら説明するテオドール。

 

「なるほど……。たしかに良さそうな感じですね」

 ラディウスは地図を見ながらテオドールの提案に頷くと、そこで一度言葉を区切り、後ろに続くメルメメルアや隊員たちの方を向いてから、続きの言葉――指示を発する。

「俺たちはこのフロアの正面の通路を進む、皆には3人1組となって散開、左右の通路、そしてそこの階段を登って上のフロアを任せたい。迅速に囚われた人々を解放し、大部屋へと誘導してくれ。ただし、今言った通り『暴走』している人がいるかもしれないから、警戒を怠らぬようにな。それと……対処の難しい事態に遭遇したら、速やかに連絡して欲しい」

 

 そう告げられた隊員たちは、ラディウスに対して一斉に了承の言葉を口にすると、速やかに3人1組となって療養棟内へと散っていく。

 その動きは迅速かつ的確であり、ゼグナム解放戦線の少数精鋭部隊として訓練されているだけはあった。

 

 それを見ながらテオドールは、酷い扱いをされ、そして使い潰されていく人々を救う事が出来ず、見ている事しか出来なかった潜入調査の日々を思い出しつつ、ようやく解放する事が出来る日がやって来た……と、そんな風に思うのだった。

聖木の館攻略戦も、ようやくこの段階までやってきました……

節の話数が大分多くなってきているので、どこかで節を区切りたい所ではありますが……なかなかいい感じに区切れそうな所がないんですよね……


とまあ、それはそれとして……

次回の更新予告ですが……今回も平時の間隔通り更新出来そうですので、6月20日(月)を予定しています!

その次は何とも言えませんが……

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