第11話 聖木の館攻略戦。アタッチメントリビルド。
「――前方の鉄扉の先が、治療棟および療養棟となります。無論、どちらも名前だけであり、実状はここに連れてきた者を監禁しておくための場所――牢獄ですが」
テオドールの告げてきたその言葉を聞き、
「了解です。……といっても、あんな頑丈そうな鉄扉が入口という時点でなぁ……」
「もう少し隠す努力をして欲しいものなのです。まあ、巡検使による調査の類が入らない事が分かっているからこそ……なのだとは思うですが」
と、やれやれだと言わんばかりの表情で、そんな事を言うラディウスとメルメメルア。
「あの鉄扉は二重になっており、その間には対魔法障壁が展開されております。要するに、対魔法障壁をサンドイッチする形で分厚い鉄板があるような、そんな感じですね」
「なるほど……物理的にも魔法的にも堅牢……というわけですね」
テオドールの説明に走りながら顎に手を当ててそう返すラディウス。
「だとすると、魔法で鉄扉を破壊してから魔法障壁を物理的に破壊、さらに再び魔法……という感じでいくのが良さそうな気がするです」
「……いや、面倒だから全部一気にぶち破る。メル、ちょっとクロスボウを貸してくれ」
そんな風に返されたメルメメルアは、良くわからないといった表情で、「え? あ、はいです」と言ってラディウスにクロスボウを手渡す。
「これをセットして……っと」
「えっと……『アタッチメントリビルド』……です?」
メルメメルアは、ラディウスがレゾナンスタワーでの戦いで、ドリルを発射するガジェットに『アタッチメントリビルド』で別のガジェットと組み合わせ、火炎を放射するガジェットへと変化させた時の事を思い出し、そう問いかける。
「ああ、その通りだ。元々は銃と組み合わせようと思って作った物なんだが、まあクロスボウでも問題なく組み合わせられるからな」
と言いながら、アタッチメントリビルドを実行。
それをメルメメルアへと再び手渡すと、自分はストレージから銃を取り出すラディウス。
「今からカウントするから、鉄扉に狙いをつけておいて、0と同時にトリガーを引いてくれ」
「良くわからないですが、了解なのです」
ラディウスの言葉に頷きつつ、クロスボウを持ったまま走るメルメメルア。
ラディウスは自身の銃にもアタッチメントリビルドを行い、銃口を大幅に拡張。
そしてすぐにカウントを開始。
「5……4……3……2……1……」
カウントが減っていくのを聞きながら、メルメメルアはクロスボウの先を鉄扉へと向け、その状態で固定。
「ゼロ!」
というラディウスの掛け声と共に、トリガーを引いた。
と、その直後、クロスボウの弦の左右の端それぞれから、雷撃が一直線に鉄扉へと向かって放たれた。
良く見ると、その放たれた2つの雷撃の間で、うっすらとスパークしているのが見える。
それを確認すると同時に、ラディウスもまたトリガーを引く。
すると、拡張された銃口から歯車――否、丸鋸状の物が連続で発射され、それが雷撃と雷撃の間に入り込んだかと思った瞬間……消えた。
そして……次の瞬間、鉄扉から連続した爆発音が響き渡る。
「ふえぇっ!?」
何が起きたのか分からないメルメメルアの口から、そんな驚きの声が漏れると共に、一瞬で粉砕された鉄扉が対魔法障壁もろとも飛散し、床に鉄扉だったものの残骸が散らばっていく。
そしてついでに、「ぐああっ」だの「ぎゃあぁぁ」だのという断末魔の叫びが聞こえてきた。
何事かと思いメルメメルアが良く見てみると、床には粉々になった鉄扉の残骸のみならず、爆炎や爆発で飛び散った残骸をまともに食らった敵兵たちもまた転がっていた。
床に転がっているだけではなく、爆風に吹き飛ばされて壁に激突し、そのままずり落ちたと思しき態勢のまま動かなくなっている敵兵の姿も見える。
それらの敵兵は運が良くて気絶。大半の者は絶命しているであろう。
「な、なんなのです……? 今のは……」
唖然としつつ疑問の声を口にするメルメメルアに対し、ラディウスは、
「今のはサーキュラーボム・レールガン……もどきだ。敵兵まで巻き込むとは思わなかったが、まあ……結果的には倒す手間が省けたと言えなくもないな」
と、そんな風に告げた。
アタッチメントリビルド、何気にかなり久しぶりの登場な気がします……
といった所でまた次回!
前回、遅れる可能性もあると書きましたが、どうにかなりそうです。
というわけで、次の更新も平時の更新間隔となりまして、6月17日(金)の予定です!
その次も、多分大丈夫な気はします……。多分としか言えませんが……




