第10話 聖木の館攻略戦。呪物と視るモノ。
「呪物って言うと……伯爵――ヴィンスレイドがマークスおじさんに渡したアレよね?」
「レインズさんの腕輪もそうだったのですです」
ルーナとカチュアがそんな風に言ってくる。
「そうだ、アレだ。ルーナ、解析してみるといい。アレと同じ魔力と術式が見えるはずだ」
「え、ええ」
セシリアはラディウスに解析を促され、死体の方に向かって解析を試みてみた。
「……なるほど、たしかに兵士の付けている認識票……だっけ? あれの所にガジェットが埋め込まれているわね……。で、『何らかの条件』を満たすと、このガジェットに組み込まれた魔法が自動的に発動して、所有者を殺す……と。――たしかにこれは、『呪物』の仕組みそのものだわ」
「兵士の死が呪物のせいなら、この下に行っても大丈夫って事?」
ルーナの言葉を聞いたセシリアが、顎に手を当てながら、そんな疑問の声を口にする。
「セシリアが写してきた範囲内には、特にトラップガジェットの類は仕掛けられていないみたいだから、大丈夫だとは思うが……こうまでして隠す何かがあるとすると……ちょっと何があるかわからないから、単独で探るのは危険すぎるな」
セシリアに対してそうラディウスが言うと、メルメメルアが首を縦に振り、それに同意する。
「私もそう思うです。この先に即死級のトラップが仕掛けられていないと言えない以上、近づくにはそれ相応の準備と人数が必要だと考えるです」
「もし即死してもガジェットの力で時間逆行するのではないでしょうか? です」
「そうね……。たしかに死ねば時間逆行が発動するかもしれないけど、あれの発動条件がいまいち良く分かっていないし、条件を封じられる可能性もゼロじゃないわ。それに……そもそも死なないで封印とか変異とかさせられたらマズイ事になるわよ。……リンクが切断されたルティカという前例があるし」
カチュアの問いかけに対してルーナがそう返すと、カチュアが、
「なるほどですです。たしかにルティカさんは魔人化の措置によって、リンクが切断されたとザイオンさんが言っていましたです」
なんて事を言った。
「ああ。リンクが切断されて、魔人やエリミネーターのような存在にされてしまった場合、元の姿に戻せるかどうか怪しい所だ……。ヴィンスレイドの一件の時は、中途半端だったからどうにかなったが……」
「……そうね。正直、完全にエリミネーターや魔人と呼ばれる『異形の姿』と化してしまったら、もうどうにもならない気がするわね」
ラディウスとルーナに続けてそう言われたセシリアは身震いし、それ以上踏み込むのはちょっと……否、かなり怖くなり、頬を掻きながら呟くように続きの言葉を紡ぐ。
「じゃ、じゃあ、ここは一旦スルーしようかな……」
「ああ、そうしておいてくれ。そこを調べるのは聖木の館の制圧が概ね完了してからでもいいくらいだ。まずは建物の地上部分を制圧して、地下へ続く階段付近で、地下から誰も来ないか見張っておくだけでいいぞ。あ、他に地下へ続く階段がないかも調べておけるなら、調べておいて欲しい所だな」
ラディウスにそう言われたセシリアは、
「了解! それじゃあそうするよ!」
と、勢いよく返事をして再び世界を移動し、元の場所へと戻ってきた。
そして、本来の目的地である2階を目指して階段を登……ろうとして、背筋にゾクッとしたものを感じ、階段の下――地下の暗闇を一瞥。
――何かがこちらを視ている? でも、マリス・ディテクターの反応はないよね……
という事は、悪意や敵意をもっているわけじゃない。警戒されているわけでもない。
……なら、こちらを視ているのは……好奇心?
まあ……なんにせよ、何かをしてくる感じではないし、今は放っておくのが良さそうだね……
セシリアはそう考え、何かに視られていた事を記憶しつつも害はないものと判断し、反転。
階段を登って、その場から立ち去っていった――
色々あって、予定より10時間近く遅くなりましたが、どうにか予定日に更新する事が出来ました……
若干、遅れる可能性がなくもない状況ではありますが、次回も平時の間隔どおりに更新出来ると思います。
その為、次の更新は6月14日(火)を予定しています!
※追記
話名 ( サブタイトル ) に、『 聖木の館攻略戦。 』の部分が抜けていたので追加しました。




